企業の公表情報を理解する上で会計は重要な知識です。スタディングで学んだ内容を活かしていければと思います。
会計とは:ある経済主体が行う経済活動を、貨幣額を用いて認識・測定し、その結果を報告書にまとめて利害関係者に伝達するためのシステム。
会計における「利害関係者」の分類
- 企業外部の利害関係者(株主、債権者、投資家)
- 企業内部の利害関係者(経営者、各階層の管理者)
会計の重要な役割:会計は、主として、企業の外部の利害関係者に対し、企業の経済活動の成果や現在の状況など、利害関係者の意思決定に有用な情報を提供する役割が期待されている。
会計の種類
- 企業会計(⇔非営利会計):営利目的で経済活動を行う個人や団体、会社が行う会計
- 財務会計(⇔財務会計):企業会計の内、株主、債権者、投資家などの企業外部の利害関係者に対して、会計情報を提供することを目的とする会計。
- 制度会計(⇔制度会計):財務会計の内、法の規制を受ける会計。法に準拠し、実務で実際に採用されている会計。※法の規制を受けることで社会的信用が担保され、企業外部の利害関係者にとっては、会計による情報を安心して受け入れることができる。また、制度会計には、①会社法会計、②金融商品取引法会計、③税法会計が存在する。
財務会計の目的
- 会計責任説:会社(経営者)は委託者(株主・債権者)から委託された財産を受託者として誠実に管理・運用する責任及び結果を委託者に報告する責任がある。
- 意思決定有用説:投資家の経済意思決定に役立つ有用な情報を提供すること。
- 財務会計の機能:①利害調整機能(企業の利害関係者相互間の私的な利害を調整する機能⇒会計責任説)、②情報提供機能(投資家の経済的意思決定に役立つ有用な情報を提供する機能⇒意思決定有用説)
利益の特質
- ①分配可能性(貨幣的裏付けのある分配可能なもの⇒利害調整機能⇒会計責任説)と②業績指標性(企業の業績の指標⇒情報提供機能⇒意思決定運用説)⇒分配可能性を保ちながら適正な期間損益計算を行う必要がある。
- 成果たる収益-努力たる費用=純成果たる利益 ⇒「適正な期間損益計算」が必要。
- 回収余剰:投下資本の回収余剰が利益。資本(名目資本)は維持すべきもの。利益は分配可能はもの。
資本維持概念
- 名目資本維持(制度会計で採用):貨幣の名目額を維持
- 実質資本維持:貨幣の一般購買力を維持
- 実態資本維持:物財そのものを維持
制度会計:会社法と金融商品取引法。会計処理は同じ、形式面だけ異なる。
比較する項目 | 会社法 | 金融商品取引法 |
法の規制を受ける企業 | すべての会社 | 上場会社等 |
規制の対象となる取引 | 会社の設立、解散、運営、管理、資金調達、会社の計算など | 有価証券や金融商品に関する取引 |
規制の趣旨 | 株主保護、債権者保護、両社の利害調整 | 投資者保護 |
決算報告書の名称 | 計算書類 ・貸借対照表 ・損益計算書 ・株主資本等変動計算書 ・個別注記表 | 財務諸表 ・貸借対照表 ・損益計算書 ・株主資本等変動計算書 ・キャッシュ・フロー計算書 ・付属明細表 |
表示等の形式面のルール | 会社計算規則(計規) | 財務証憑等の用語、様式、及び作成方法に関する規則。(略称:財務諸表等規則、財規) |
決算報告書の提出等 | 株主へ提供、株主総会へ提出 | 有価証券報告書へ掲載、内閣総理大臣に提出 |
所管 | 法務省(法務省令) | 金融庁(内閣府令) |
対象 | 株主への情報提供、債権者への情報開示 | 広く投資家への情報開示 |
開示方法 | 株主:計算書類を提供、債権者:官報や新聞に掲載して開示(情報を公開する) | 有価証券報告書を作成し公開(会社のHP等、内閣総理大臣へ提出) 第一部:企業情報 1.企業の概況 2.事業の状況 3.整備の状況 4.提出会社の状況 5.経理の状況 :(1 連結財務諸表等、2 財務諸表等) 6.提出会社の株式事務の概要 7.提出会社の参考情報 |
開示期間 | 当期分 | 前期分と当期分 |
会計規則の趣旨 | ①会社と株主との関係:株主保護⇒報告義務(出資・経営の委任)、②株主と債権者の関係:債権者保護⇒分配規制。「分配可能額」を設け利害調整を図る。 | ①企業内容等の開示の制度を整備、②金融商品等の公正な価格形成を図るにより、投資者の保護を目的。※金融商品取引法会計は投資家を保護が目的⇒適正な会計処理に基づく正しい情報の開示が必要。 開示主義:証券の価値や安全性を投資家が評価するための適切な情報を開示。 |
関連規定 | 296条:定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に召集。 435条:株式会社は、各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれら付属明細書を作成しなければならない。 438条1項:取締役は、計算書類及び事業報告を定時株主総会に提出し、又は提供しなければならない。 432条2項:計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならない。 444条4項:剰余金の配当をする場合には、株式会社は、法務省令で定めることろにより当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に十分の一を乗じて得た額を資本準備金又は利益準備金として計上しなければならない。 | |
会計処理の委任 | 会社法第431条:株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。 会社計算規則第3条:用語の解及び規定の適用に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行をしん酌しなければならない。 | 財務諸表等規則第1条:この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。 |
一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行(基準)
- 企業会計審議会、企業会計基準委員会、日本公認会計士協会などの権威ある団体が作成し公表している。
- 企業会計原則、各種会計基準、各種適用指針、各種実務対応報告、各種実務指針など。
- 法律で縛るものでなく、社会的規範として定められている。
会社計算規則 | 個別計算書類 | 連結計算書類 |
計算書類の種類 | 貸借対照表 | 連結貸借対照表 |
損益計算書 | 連結損益計算書 | |
株主資本等変動計算書 | 連結株主資本等変動計算書 | |
個別注記表 | 連結注記表 |
企業会計原則
定義:企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準である。
- 役割期待:①会計処理の社会的規範(実践規範)、②財務諸表監査の基準、③関係諸法令の改廃のための指導的原理(指導規範)
- 基本的思考:利害関係者(特に投資家)の利益を保護。適正な期間損益の計算と報告を中心課題。
- 位置づけ:第一、一般原則、第二、損益計算書原則、第三、貸借対照表原則。一般原則は、企業会計原則の中で最上位に位置づけられる。
損益計算書原則
- 損益計算書の本質:企業の経営成績(経営成果とこれに対応する経営努力を対比させ経営の純成果を当期純利益として表示)を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載した報告書。
- 損益計算書原則:損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。→当期業績主義を活かした上で、包括主義による分配可能利益を算出。
損益計算書原則 | 考え方 |
当期業績主義 | 損益計算書に経常損益のみを記載し、企業の正常な収益力を表示。 |
包括主義 | 損益計算書に経常損益及び特別損益(臨時・異常・数年毎に発生)を記載し、企業の分配可能利益を表示。 |
- 損益計算書の作成原則:①総額表示、②区分表示、③対応表示:一般原則の明瞭性の原則の適用。
- 総額主義の原則の意義:費用及び収益を総額により記載することを原則とし、費用項目と収益項目とを直接に相殺することによってその差額だけを表示することを禁止する。
- 総額主義の原則の目的:総額で記載することで、企業の取引規模を明示し、経営成績をより明瞭に表示。
- 相殺禁止の具体例:①売上高と売上原価を相殺し売上総利益のみ表示、②受取利息と支払利息を相殺し差額のみ表示。
- 純額表示の容認:①売上高から値引・返信・割戻を直接控除→営業政策上の問題。②有価証券馬脚損益(売買代金と売却原価を相殺)→純額表示で情報として十分。
- 費用収益対応表示の意義:発生源泉による明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示することを要請。
- 費用収益対応の原則の目的:費用及び収益を適宜分類した上で対応表示することにより、経営成績をより明瞭に表示する。
費用と収益の対応表示における関係性 | 内容 | 補足 | 損益計算 |
因果関係による対応表示 | 個別的対応 | 売上高と売上原価 | 営業損益計算 |
期間的対応 | 売上高と販管費 | ||
取引の同質性による対応表示 | 営業外収益・営業外費用 | 主たる営業以外で経常性あり | 計上損益計算 |
特別利益・特別損失 | 臨時的、異常的 | 純損益計算 |
貸借対照表原則
- 本質:企業の財政状態を明らかにするため、貸借対照表日におけるすべての資産、負債及び資本を記載した報告書。→完全性の原則(架空資産、架空負債の計上禁止、簿外資産、簿外負債の存在を原則として禁止)
- 貸借対照表完全性の原則の意義:正規の簿記の原則に従って処理された場合に生じた簿外資産及び簿外負債は、貸借対照表の記載外におくことができる。→完全性の原則の例外
- 完全性の原則の例外(重要性の原則):簿外資産の具体例:①重要性の乏しい消耗品を購入時に全額費用処理、②資産取得に係る付随費用のうち重要性の乏しいものを費用処理。簿外負債の具体例:重要性の乏しい未払費用を計上せず、支出時に費用処理、重要性の乏しい引当金を計上せず、支出時に費用処理。
- 総額主義:総額で記載することで企業の財政規模を明示し、財政状態をより明瞭に表示することを目的。
- 相殺禁止の具体例:①貸付金と借入金の相殺禁止、②当座預金と当座借越の相殺禁止。
- 純額表示の容認:①売掛金から貸倒引当金を直接控除→要注記。②有形固定資産から減価償却累計額を直接控除→要注記
- 区分表示の原則の目的:区分表示することで、企業の財政状態をより明瞭に表示する。
- 区分表示の必要性:資産:流動資産、固定資産、繰延資産。負債:流動負債、固定負債→区分表示することで財務流動性の分析ができる。※繰延資産は、換金価値がなく財産性のない資産であるため、財産性のある流動資産及び固定資産とは区別して表示。
- 配列方法:①流動性配列法(原則):資産及び負債の項目を流動性の高い順序で配列→企業の財流動性(短期支払能力)を明瞭に表示できる。②固定配列法:資産及び負債を流動性の低い順序で配列。※繰延資産、純資産は不変。
連携利益観
- 定義:損益計算書で計算された利益の額と貸借対照表で計算された資本の変動額とが一致する関係にあることを前提とした利益観。→会計情報の信頼性を高め、企業評価に役立つ。
- クリーン・サープラス関係:ある期間における資本の増減(資本取引によるものを除く)が、当該機関の利益と等しくなる関係。
- 損益計算重視の時代から企業会計の変革へ(企業価値測定)
- 収益費用アプローチ:収益および費用を中心とした利益観。損益計算書を重視。
- 資産負債アプローチ:資産及び負債を中心とした利益観。貸借対照表を重視。
収益費用アプローチ | 資産負債アプローチ | |
利益観 | 利益は企業の業績を示す測定値 | 利益は企業の富の増加を示す測定値 |
会計の目的 | 企業活動の効率性を明らかにすること | 企業価値を明らかにすること |
会計の主要課題 | 収益・費用の計算 | 資産・負債の計算 |
中心概念 | 収益、費用 | 資産、負債 |
利益計算式 | 期間利益(純利益)=期間収益-期間費用 | 期間利益(包括利益)=期末純資産-期首純資産 |
主要財務諸表 | 損益計算書 | 貸借対照表 |
- 純利益と包括利益:資本の変動が純利益。純資産の変動が包括損益。
- 包括利益:純資産の変動額。資産負債アプローチでは利益の計算を重視していない。利益には業績指標としての役割を期待しておらず、単に純資産のすべての変動を考慮した結果。
概念フレームワークの役割
概念フレームワークの役割 | 内容 |
会計基準の概念的な基礎を提供 | 企業会計(特に財務会計)の基礎にある前提や概念を明確にする。 |
将来の基準開発に指針を与える | 会計基準を開発するにあたっての指針となり、会計基準が満たすべき条件などを提供する役割を果たす。 |
国際的なコミュニケーションに役立つ | 国際的な議論の場において、コミュニケーション・ツールとして役立つ |
コンバージェンス(会計基準の国際的な統一化)→IFRS(International Financial Reporting Standards)
- 概念フレームワークが主として想定している利害関係者→投資家
- 財務報告の目的:投資家による企業成果の予測(投資の成果)と企業価値の評価(投資のポジション)に役立つような、企業の財務状況の開示にある。すなわち、財務報告の目的は「企業の投資ポジション(BS)とその成果(PL)を測定して開示すること」
- 財務状況の開示:事実の開示に限定。経営者は自企業の評価を示してはならない。また、企業価値の評価は、投資家が自己責任で行うもの。
- 企業は「投資の束」。個々の投資ごとに、利益の計算すなわち投下資本の回収余剰計算を行っている。
財務報告の役割(機能) | 概念フレームワーク以前 (伝統理論) | 概念フレームワーク |
財務報告の目的 | 会計責任説 | 投資のポジションとその成果を測定して開示すること |
意思決定有用性説 | ||
財務報告の役割 | 利害調整機能 | 情報提供機能 |
情報提供機能 |
概念フレームワーク:利害調整機能を、財務報告の役割ではなく、財務報告の副次的利用であると捉えている。
会計情報の質的特性:会計情報が満たすべき必要条件を指している(投資家にとって有用な情報)
会計情報の質的特性 | 内容 | 補足 |
意思決定有用性 | 会計情報に求められる最も基本的な特性 | 不確実な成果を予測するのに有用 |
意思決定との関連性 | 情報価値があることが期待 | 意思決定有用性を支える特性(2つ) |
信頼性 | 中立性 | |
検証可能性 | ||
表現の忠実性(同じ事実には同じ会計処理) | ||
内的整合性 | 従来の基礎概念などと矛盾しない。 | 一般的制約となる特性(2つ) |
比較可能性 | ①時系列比較、②企業間比較 同様の実質なら同一の会計処理、異なる実質なら異なる会計処理 |
財務諸表の構成要素
- 純資産の定義:資産と負債の差額。もっぱら株主資本だけを増減。
- 包括利益の定義:特定期間における純資産の変動額のうち、報告主体の所有者である株主との直接的な取引によさない部分(⇒資本取引は除く)。
- 株主資本の定義:純資産のうち報告主体の所有者である株主(連結財務諸表の場合には親会社株主)に帰属する部分。株主資本:資本金、資本剰余金、利益剰余金
- 純利益の定義:特定期間の期末までに生じた純資産の変動額(報告主体の所有者である株主との直接的な取引による部分を除く)のうち、その期間中にリスクから解放された投資の成果であって、報告主体の所有者に帰属する部分。
- 純利益の重視:日本では包括利益よりも純利益を重視。純利益の情報は長期に渡り投資家に広く利用されており、その有用性は投資家から支持されている。純利益を生み出すのは、純資産のうちの株主資本である。従って、株主資本と純利益の関係が重視される。
- 収益の定義:収益とは、純利益を増加される項目であり、特定期間の期末までに生じた資産の増加や負債の減少に見合う額のうち、投資のリスクから解放された部分。
- 費用の定義:費用とは、純利益を減少される項目であり、特定期間の期末までに生じた資産の減少や負債の増加に見合う額のうち、投資のリスクから解放された部分。
- 投資のリスクからの解放:投資にあたって期待された成果が事実として確定すること。
- 投資のリスク:投資の成果の不確実性。
- 資産の定義:過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう。
- 損益計算書の構成要素:収益、費用、純利益
- 「認識」の意義:構成要素を財務諸表の本体に計上する。
- 「認識」に関する制約条件:①認識の契機(少なくとも契約の一方の履行。双方未履行は駄目)、②蓋然性(一定程度の発生の可能性)が求められる。⇒発生可能性が極めて乏しいと誤解を招く情報、逆に確定した事実のみに依拠すると会計情報は有用でない。
- 構成要素の測定値:投資の状況に応じて多様な測定値が求められる。
- 「測定」の意義:財務諸表に計上される諸項目に貨幣額を割り当てること。
測定値の使用例 | 内容 | 例 |
資産の測定値 | 取得原価 | 有形固定資産 |
市場価格 | 売買目的有価証券 | |
割引価値 | CF見積法 | |
入金予定額 | 売掛金 | |
被投資企業の純資産額に基づく額 | 持分法の適用 | |
負債の測定値 | 支払予定額 | 買掛金 |
現金受入額 | 前受金 | |
割引価値 | 社債の償却原価法 | |
市場価格 | デリバティブ |
金融投資と事業投資 | 金融投資 | 事業投資 |
意義 | 時価の変動によって利益を得ることを目的とした投資 | 事業の遂行を通じてキャッシュフローを得ることを目的とした投資 |
代表例 | 売買目的有価証券 | 事業投資、子会社株式 |
性質 | 売却することについて、事業遂行上の制約がない投資(随時売却可能) | 使用目的や支配目的の投資は、投資を売却することについて、事業遂行上の制約がある。 |
資産評価 | 時価評価:時価が企業価値の評価にとって有用な情報を表す。 | 原価評価:時価は企業価値の評価にとって有用な情報を表さない。 |
収益の認識 | 時価の変動 | 事業のリスクに拘束されない独立の資産を獲得 |
一般原則の構成: (規範的性格) | 定義 | 要請 | 補足 |
1.真実性の原則 | 企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。 | 他の諸原則を遵守することで真実な財務諸表(一般原則2~7を遵守)を作成することを要請。 | (位置づけ)企業会計の最高規範とされ、企業会計原則の頂点に位置する。 (真実の意味):相対的真実。企業会計原則に準拠すること、すなわち「適正性」を意味する。①財務諸表の本質(記録された事実、会計上の慣習と個人的判断との総合的表現)、②会計目的観(会計目的に応じて異なる意味) |
2.正規の簿記の原則 | 企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って正確な会計帳簿を作成しなければならない。 | 正確な会計処理、正確な会計帳簿を作成し、誘導法で財務諸表を作成。 | 正確な会計帳簿の要件。①網羅性(網羅的にすべて記録)、②検証可能性(検証可能な客観的証拠)、③秩序性(秩序正しく会計帳簿に記録)。※複式簿記の限りでない。 |
3.資本取引・損益取引区分別の原則(剰余金区分の原則) | 資本取引と損益取引を明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。 | ①資本取引と損益取引の区別、②資本剰余金と利益剰余金の混同禁止 | ・利益の金額は損益取引から生じた資本の増加分だけに限定。 ・資本取引(維持拘束性:資本金・資本剰余金)による資本の増加分を利益(分配可能性:利益剰余金)に混入させると適正な期間損益計算が阻害。 ・利害調整の観点:維持すべき資本が侵食される危険性。 ・情報提供の観点:資本を源泉によって区別することで投資家の意思決定に役立つ情報となる。 |
4.明瞭性の原則 | 企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。 | 財務諸表による会計事実の明瞭表示(理解しやすい表示、概観性を重視)と適正開示(詳細な情報:注記事項)を要請。 | ・情報の詳細性(重要な会計方針を注記)と概観性を上手く両立させた財務諸表の作成が要請。 ・重要な会計方針の注記、重要な後発事象の注記 |
5.継続性の原則 | 企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりに(正当な理由なく)これを変更してはならない。 | いったん採用した会計処理方法は、正当な理由により変更を行う場合を除き、毎期継続して適用することを要請。 | 前提:一つの会計事実について、二つ以上の会計処理方法の選択適用が認めらている場合(関連:経理自由の原則) 必要性:①財務諸表の期間比較性の確保(適用しないと同一会計事実について異なる利益額が算出⇒財務諸表の期間比較が困難)、②恣意的な利益操作の排除(会計方針を自由に変更できると経営者による恣意的な利益操作が可能) ・継続性の変更:正当な理由がある場合のみ。注記必要。 |
6.保守主義の原則 | 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全は会計処理をしなければならない。 | 予測される将来の危機に備えて慎重な判断に基づく会計処理を要請。 | 必要性:企業は、予測される将来の危機に備えるため、財務的な健全性を確保する必要がある。 適用場面:①会計処理方法の選択、②金額等の見積り 過度の保守主義:一般に公正妥当と認められる範囲内。過度な保守主義は真実な報告をゆがめ、真実性の原則に反する。 |
7.単一性の原則 | 信頼しうる会計記録に基づいて作成、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。 | 実質一元・形式多元:異なる形式は容認するが、内容は信頼しうる会計記録に基づいた単一のもの(単一の会計帳簿) | |
企業会計原則(注1)重要性の原則 (容認原則) | 重要性の高い項目については厳密な処理又は表示を要求(積極的重要性)し、重要性の乏しい項目については、簡便な処理又は表示を容認(消極的重要性)するという原則。 | ・注解では、消極的重要性のみ指示。 ・重要性の原則は、処理だけでなく、表示に関しても適用。 ・重要性の判断基準:①金額の重要性(量的重要性)、②科目の重要性(質的重要性⇒会計上の操作の危険性) | ・損益計算書原則、貸借対照表原則の両方に関係する基本原則。 ・「消極的重要性」の必要性:①実務上の要請(事務上の経済性)、②情報の有用性の要請 |
後発事象の開示要請(明瞭性の原則)
- 定義:貸借対照表日後に発生した事象で次期以降の財政状態及び経営成績に影響を及ぼすものという。⇒補足情報として有用。
- 開示の要請:財務諸表には損益計算書及び貸借対照表を作成する日までに発生した重要な後発事象を注記しなければならない(企業会計原則注解、注1-3)
- 後発事象の例:火災、出水等による重大な損害の発生、多額の増資又は減資及び多額の社債の発行又は繰上償還、会社の合併、重要な営業の譲渡又は譲受、重要な軽装事件の発生又は解決、主要な取引先の倒産
株式会社制度
- 所有と経営が分離している。
- 多数の出資者及び多額の出資を集めやすいような仕組みが整えられた会社形態。
- 出資者は、経営能力の有無が問われない。また、全員が有限責任である。
- 取締役会:取締役(経営者)による会議体。上場会社の場合は、取締役会の設置義務がある。
- 取締役会の決議事項:①会社の業務執行に関する各種の意思決定、②代表取締役の選定・解職、③取締役の職務の執行と監督等。
- 株主総会:株式会社における、最高の意思決定機関。主な決議事項は、①取締役の選任・解任、取締役の報酬、②決算の承認、剰余金の配当、③会社合併の承認、④会社の基本や株主の権利に直接係る事項を決議。
貸借対照表
科目 | 金額 | 科目 | 金額 |
流動資産 | 流動負債 | ||
現金及び預金 | 支払手形 | ||
受取手形 | 買掛金 | ||
売掛金 | 短期借入金 | ||
商品 | リース債務 | ||
前払費用 | 未払金 | ||
未収入金 | 未払費用 | ||
貸倒引当金 | ▲ XXX | 未払法人税等 | |
未払消費税等 | |||
固定資産 | 固定負債 | ||
有形固定資産 | 社債 | ||
建物 | 長期借入金 | ||
構築物 | 長期リース債務 | ||
機械装置 | 退職給付引当金 | ||
車両運搬具 | 資産除去債務 | ||
器具備品 | 株主資本 | ||
土地 | 資本金 | ||
リース資産 | 資本剰余金 | ||
建設仮勘定 | 資本準備金 | ||
減価償却累計額 | ▲XXX | その他資本剰余金 | |
無形固定資産 | 利益剰余金 | ||
ソフトウエア | 利益準備金 | ||
のれん | その他利益剰余金 | ||
投資その他の資産 | 〇〇積立金 | ||
投資有価証券 | 繰越利益剰余金 | ||
関係会社株式 | 自己株式 | ▲XXX | |
長期貸付金 | 評価・換算差額等 | ||
長期性預金 | その他有価証券評価差額金 | ± | |
長期前払費用 | 繰延ヘッジ損益 | ± | |
破産更生債権 | 株式引受権 | ||
繰延税金資産 | 新株予約権 | ||
貸倒引当金 | ▲XXX | ||
繰延資産 | |||
社債発行費 | |||
開発費 | |||
損益計算書
売上高 | 補足 | 例示 | ||
売上原価 | 内訳不要。PLとは別に明細書作成する場合あり。 | |||
売上総利益 | ||||
販売費及び一般管理費 | 内訳不要。PLとは別に明細書作成する場合あり。 | 売上原価以外で、主たる営業活動から経常的に生じる費用(反復的に生じる費用) | 広告宣伝費、給料、従業員賞与、役員報酬、法定福利費、退職給付費用、旅費交通費、通信費、水道光熱費、接待交際費、消耗品費、修繕費、荷造り費、支払運賃、支払家賃、支払地代、賃借料、保管料、見本品費、保管料、見本品費、貸倒引当金繰入額、租税公課、減価償却費、保険料、研究開発費 | |
営業利益 | ||||
営業外収益 | XXX(内訳必要) | XXX | 主たる営業活動以外の活動から経常的に生じる収益(資金貸借など、主として資金調達や資金運用などの財務活動等) | 受取利息、有価証券利息、有価証券売却益、為替差益、受取配当金、雑収入 |
営業外費用 | XXX(内訳必要) | XXX | 支払利息、社債利息、有価証券売却損、為替差損、手形売却損、雑損失 | |
経常利益 | ||||
特別利益 | XXX(内訳必要) | XXX | 臨時的に発生または突発的な原因で発生した項目(火災、事故、自然災害)。経常性ある損益項目でも突発的な原因で多額となった場合。 | 固定資産売却益、投資有価証券売却益、国庫補助金収入、保険差益 |
特別損失 | XXX(内訳必要) | XXX | 固定資産売却損、投資有価証券売却損、減損損失、固定資産圧縮損、火災損失 | |
税引前当期純利益 | XXX | |||
法人税、住民税及び事業税 | XXX | |||
法人税等調整額 | XXX | XXX | ||
当期純利益 | XXX | 最終値 |
注記表 :雛形や様式は特になし。見出しと記載内容が普通に読み取れればよい。
重要な会計方針に係る事項に関する注記概要
No. | 項目 | 内容 | 補足 |
1 | 継続企業の前提に関する注記 | ||
2 | 重要な会計方針に係る事項に関する注記 | ①有価証券の評価基準及び評価方法 ②棚卸資産の評価基準及び評価方法 ③固定資産の減価償却方法 ④繰延資産の処理方法 ⑤外貨建資産・負債の本邦通貨への換算基準 ⑥引当金の計上基準 ⑦費用・収益の計上基準 | ①有価証券、棚卸資産等 ②定額法、定率法等 ③貸倒引当金や退職給付引当金等の計上基準 ④繰延資産の処理方法(資産計上、費用処理か) ⑦収益の認識タイミング(出荷時、着荷時、検収時等) ⑦消費税の会計処理(税抜方式、税込方式)等 |
3 | 会計方針の変更に関する注記 | ||
4 | 表示方法の変更に関する注記 | ||
4-2 | 会計上の見積りに関する注記 | ||
5 | 会計上の見積の変更に関する注記 | ||
6 | 誤謬の訂正に関する注記 | ||
7 | 貸借対照表等に関する注記 | ||
8 | 損益計算書に関する注記 | ||
9 | 株主資本等変動計算書に関する注記 | ||
10 | 税効果会計に関する注記 | ||
11 | リースにより使用する固定資産に関する注記 | ||
12 | 金融商品に関する注記 | ||
13 | 賃貸不動産に関する注記 | ||
14 | 持分法損益等に関する注記 | ||
15 | 関連当事者との取引に関する注記 | ||
16 | 1株当たり情報に関する注記 | ||
17 | 重要な後発事象に関する注記 | ||
18 | 連結配当規制適用会社に関する注記 | ||
18-2 | 収益認識に関する注記 |
貸借対照表等に関する注記(扱うのは個別貸借対照表のみ)
項目 | 内容 |
資産が担保に供されている場合 | ①資産が担保に供されていること、②担保に供されている資産の内容及びその金額、③担保に係る債務の金額 |
資産に係る引当金を当該資産から直接控除した場合 | 控除した引当金の額を記載 |
資産に係る減価償却累計額を当該資産から直接控除した場合 | 控除した減価償却累計額を記載 |
資産に係る減損損失累計額を減価償却累計額に合算した場合 | 減価償却累計額に減損損失累計額が含まれている旨を記載 |
保証債務、手形遡及債務等がある場合 | 当該債務の内容及び金額を記載 |
関係会社に対する金銭債権又は金銭債務を独立科目で表示していない場合 | 当該債務の内容及び金額を記載 |
取締役、監査役及び執行役に対する金銭債務がある場合 | その総額を記載 |
取締役、監査役及び執行役に対する金銭債務がある場合 | その総額を記載 |
親会社株式を保有している場合 | 親会社株式の各表示区分別の金額を記載 |
損益計算書に関する注記(個別貸借対照表のみ)
No. | 項目 | 内容 |
1 | 関係会社との取引がある場合 | 関係会社との営業取引による取引高の総額、関係会社との営業取引以外の取引による取引の総額 |
流動・固定分類
- 財務分析において会社の債務弁済能力を把握する上で非常に重要な分類。
- 分類基準:①正常営業循環基準(企業が資金を主たる営業活動に投下し、それを資金として回収するまでの標準的な期間。ワインの醸造業の場合でも長期仕掛金も流動資産⇒企業間比較しやすくなる)、②一年基準(貸借対照表の翌日から起算して1年以内に回収・支払が行われるものを流動項目)⇒営業循環外にあり、回収や支払期限のあるものに適用⇒定期預金、貸付金、未収金、借入金、未払金、預り金。尚、上記①、②も提供されない項目として「有価証券」が該当(保有目的に応じて分類)。
- 流動資産:受取手形、売掛金、棚卸資産(原材料、仕掛品、製品、商品)、仕入れに係る前渡金等
- 流動負債:支払手形、買掛金、売上に係る前渡金等
- 長期分割返済の借入金の表示:1年以内に返済される分は「1年以内返済長期借入金」等の科目で流動負債に表示。残額は「長期借入金」として固定負債の区分に表示。本試験では、便宜上、「短期借入金」に含める場合あり。
関係会社:親会社、子会社、関連会社
- 子会社:当社が経営を支配している会社。当社が議決権の過半数を所有。
- 親会社:当社の経営者を支配している会社。「経営を支配する」とは、他の会社の財務及び事業の方針の決定を支配していること。
- 経営を支配しているケース:①議決権の50%超を所有(孫会社のケースも含む)。②議決権の40%以上+一定の要件、③親会社と密接な者等を合わせて議決権の50%超を所有+一定の要件。
- 一定の要件:①親会社の所有する議決権と親会社と密接な関係のある者等の所有する議決権と合わせて、議決権の50%超となる。②取締役会の構成員の過半数を親会社の役員や使用人が占めている。③親会社が重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約が存在する。④親会社が資金調達(負債)のうち50%超の融資を行っている。⑤親会社が財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在する。
- 会社の役員:取締役、監査役、執行役等。会社の使用人:会社と雇用関係にあるもの(管理職、管理職以外の従業員)
- 密接な関係のある者等:①自己と出資、人事、資金、技術、取引等において密接な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められるもの。②自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者。
- 関連会社:当社が財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる会社(子会社を除く)。
- 重要な影響を与えることができるケース:①議決権の20%~50%を所有。②議決権の15%~20%未満を所有+一定の要件。③密接な者等と合わせて議決権の20%以上を所有+一定の要件
- 一定の要件:①当社の役員や使用人が、代表取締役や取締役に就任している。②当社が重要な融資を行っている。③当社が重要な技術を提供している。④当社が重要な販売、仕入その他の事業上の取引がある。⑤当社が財務及び事業の方針の決定に対して重要な影響をあたえることができると推測される事実が存在する。
簿記論と財務諸表論の比較
比較する項目 | 簿記論 | 財務諸表論 |
科目 | 勘定科目:企業が会計帳簿で用いている科目(企業の規模や業種で異なって良い) | 表示科目:公的な会計規則に基づいた財務証憑への表示に用いられる科目 |
作成する財務諸表 | 略式の財務諸表 | 厳密な財務諸表 |
固有の論点 | 本支店会計、本社工場会計、帳簿組織等 | 分配可能額、注記 |
簿記一巡の手続きの概要
1.開始手続き:新しい会計期間の最初(期首)に行う手続き。
- 開始記入 :前期繰越額の記入(BS項目のみ)。①純大陸式:開始残高勘定、②準大陸式:残高勘定を用いない、③英米式:前期繰越額を仕訳なしで記入
- 期首再現振替 :前期末の経過勘定科目(未払費用、未収収益、前払費用、前受収益)を元の費用。収益の各勘定へ振り戻す。
- ※経過勘定科目は、前払費用以外はすべて流動項目。前払費用は、1年基準が適用され、1年超のものは、投資その他の資産として長期前払費用として計上。(企業会計原則注解、注16)
- 帳簿上の勘定科目は、未払利息、未払給料、未払家賃など種類毎に区別。一方、BSの表示科目は、未払費用として一括して記載。
- 経過勘定のT字:前払費用、未収収益の様な資産サイドのT字は左上に期首残。一方、未払費用や前受収益の負債サイドのT字は、右上が期首残。
※経過勘定項目とは、一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける場合または継続して役務の影響を行う場合かつ、これらに対価の享受が伴う場合に、生じる余地がある。
2.営業手続き :期中取引の処理。期中取引を仕訳帳に仕訳し、それを総勘定元帳へ転記するという手続き。
3.決算手続き:決算手続き
- 決算整理前試算表作成⇒①合計試算表 or ②残高試算表。②は合計額が貸借で一致すること確認できるが、①のように仕訳帳の合計と合計試算表の合計が一致する(二重転記や貸借転記燃漏れの確認可)かの確認できない。⇒残高試算表よりも、合計試算表の方が転記の正確性の検証能力が高い。試算表の勘定科目は種類別に記載する(借方:資産、費用、貸方:負債、純資産、収益)
- 決算整理
- 決算整理後試算表作成
- 決算振替:収益・費用の諸勘定を一つの勘定に集め、資産・負債・純資産の諸勘定を一つの勘定に集める手続き⇒勘定残高がゼロとなり、締め切りが行える状態。「損益振替」⇒「純損益振替(会社:繰越利益剰余金、個人企業:資本金)」⇒「残高振替(①純大陸式:閉鎖残高・決算残高勘定、②準大陸式:期末においてBS勘定は閉鎖されず、残高が次期の開始残高として持ち越される。損益勘定は資本勘定へ振り替えられ閉鎖される。、③英米式:次期繰越額を仕訳無しで記入)」。決算集合勘定は、損益勘定と残高勘定の二つ(諸口使わない)。
- 帳簿の締め切り:合計線(単線)、締切線(複線)
- 財務諸表の作成
大陸式と英米式
- 大陸式:仕訳→転記という手順をすべての局面において実施して総勘定元帳へ記入を行う。
- 英米式:総勘定元帳への記入は例外的に仕訳をしないことも一部に認める
商品売買の主な帳簿上の処理方法
- 単一の商品勘定による処理方法:分記法、総記法
- 商品勘定を分解した処理方法:三分法、売上原価対立法
- 簿記論はは4つすべてが出題、財務諸表論では三分法のみ
三分法
- 勘定:繰越商品、仕入、売上の勘定を使用。
- 決算整理仕訳:仕入勘定で売上原価を算定(仕入、繰、繰、仕入)。繰越商品は期末商品額となる。
- 損益計算書の様式:報告式と勘定式がある。また、売上原価の内訳を示す方法(期首、当期仕入、期末勘定)と内訳を示さない方法(売上原価勘定のみ)がある。
- 貸借対照表の様式:報告式と勘定式がある。また、資産、負債、純資産のそれぞれに内訳の区分を設ける場合(流動、非流動区分等)と設けない場合がある。報告式は簿記論でも財務諸表論でも使用しない。区分を設けるのは財務諸表論の場合のみ。
- 値引・返品・割戻:特に指示がない限り掛代金と相殺するのが通常。処理方法は①直接控除法、②間接控除法(売上割引、売上戻り、売上割戻)がある。②の場合、決算整理仕訳で、間接勘定を売上、仕入から直接控除する仕訳が必要。いずれの場合も損益計算著は直接表示。
- 決算整理等の処理を行うときの注意点:①期中取引の未処理事項がある場合は、決算整理仕訳の前に未処理事項の仕訳を行う。②決算整理仕訳は、未処理事項の仕訳が終わってから、処理後の数値に基づいて行う。
- 値引きと値下げ:値引きとは、売買後に商品代金を減額すること。値下げ、値上げは、売買前に売価を下げる、上げること。値引き会計処理が必要だが、値上げ、値下げは会計処理が特に必要ない。
- 設問での注意事項:①期末商品棚卸高が「適正額」であったは、期中の未処理事項や決算における処々の修正事項をすべて考慮した後の金額を示しているという意味。②売上戻りは、売価であるので、売上戻りの原価部分の金額を用いて、期末商品棚卸高の修正をする必要がある。③売上値引の未処理は、期末商品棚卸高に影響しない。
- 現金割引:期日前に早期決済した場合に、利息相当額を減額する。買掛金に係る現金割引を仕入割引(営業外収益、※仕入値引の様に仕入高から控除しない)、売掛金に係る現金割引を売上割引(営業外費用)。現金割引の際に現金、当座預金か不透明な場合、「現金預金」勘定で回答。「売上割引」は「収益認識に関する会計基準」の影響受ける。
- 他勘定振替:商品や製品が、販売以外(売上原価以外)の理由で、払い出される(数量的に減少する)こと。例、見本品、試供品、火災・天災による消失。損益計算書で売上原価以外の費用・損失へ振り替える表示方法(期首商品棚卸高+当期商品仕入高)の合計額からマイナスする)。
取引 | PL表示科目 | 他勘定振替高の内訳科目 | PL表示区分 (貸方:仕入) | PL表示科目 |
見本品として使用 | 他勘定振替高 | 見本品費振替高 | 販管費 | 見本品費 |
試供品として使用 | 試供品費振替高 | 試供品費 | ||
広告宣伝に使用 | 広告宣伝費振替高 | ※広告宣伝費 | ||
火災で焼失 | 火災損失振替高 | 特別損失 | 火災損失 |
※「見本品費」と「試供品費」は、「広告宣伝費」に含めることもできる。
三分法の場合、仕入勘定で最終的に売上原価を算出するので、仕入勘定から控除しておく必要あり。「当期仕入高」からの控除でなく、売上原価の計算からの控除。⇒帳簿上は仕入勘定から控除しますが、損益計算書では、「当期仕入高」から控除せず、他勘定振替高で控除する(仕入値引とは異なる)。
原価率・利益率
- 原価率+利益率=100%
- 売価×原価率=原価、売価×利益率=利益
- 利益加算率(売価は原価の〇%増し):利益加算率=利益/原価。原価を1とした場合の原価に上乗せする利益割合。売価=原価+原価×利益加算率。1+利益加算率(0.25)=売価の割合(1.25)。⇒原価率=1/1.25=0.8、利益率=0.2。※利益加算率を原価率・利益率に置き換えると割り切れない場合がある。この場合は、原価率・利益率を分数で表すことで計算に利用する。
- 原価率(値引・返品があるとき、原価率はいつ決定するか)⇒仕入戻し・割引後、売上戻り・値引き前の原価率を使用(販売時点の原価率)
- 以下図の通り、売上値引は、売上戻りと異なり、利益減少のみで、原価には影響しない。
売上戻り・売上値引後、売上高 | 売上戻り | |
利益:75 | 売上値引:15 | 利益:10 |
原価:810 ⇔ 売上戻り後、売上値引前の売上高と対応 | 原価:90 |
期末商品の評価
- 棚卸資産:商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期に消費される事務用消耗品等も含まれる。
- 取得原価:原則として購入代価(送り状価格、値引きあれば控除)又は製造原価に引取費用等の付随費用(引取費用等⇒仕入側が負担する、商品を引き取るまでにかかった費用)を加算して取得原価とし、評価方法の中から選択した方法を適用して売上原価等の払出原価と期末棚卸資産の価額を算定する。
- 商品は販売されるまでは資産:「費用収益対応の原則」
- 棚卸資産の評価方法:①個別法、②先入先出法、③後入先出法、④平均原価法(総平均法、移動平均法)、⑤売価還元法。会計基準で認められていないが、税法で認められている簡便法(最終仕入原価法)は、中小企業等を中心に採用されている。後入先出法は過去に認められていた評価方法として取り上げられる。
- 棚卸減耗:棚卸資産の保管中に生じた紛失、盗難、蒸発等、意図的でない事象を原因とする、あるいは原因が定かではない、数量の減少分。棚卸減耗は、帳簿棚卸数量(商品有高帳等の帳簿記録で期末の在庫数量を把握)と実施棚卸数量との差異。帳簿棚卸数量と実施棚卸数量の差異を示す表現に「数量差異」、「棚卸差異」などがある。
- 棚卸資産の貸借対照表価額(次期へ繰り越す価額):原価法(棚卸資産の評価基準の原則であり、取得価額を貸借対照表価額とする)が原則。販売目的の棚卸資産は原価法を適用。
- 商品評価損:収益性が低下(①品質低下、②陳腐化、③市場価格の下落)した場合は、棚卸資産の帳簿価額を正味売却価額(売価-見積販売直接経費等、製造業の場合は売価から「見積追加製造原価」も控除)まで切り下げる処理(簿価の切り下げ、評価替え)。⇒棚卸資産は販売することで利益を得るものなので、価値が上がったからと言って保有しているだけで利益がでる会計処理は認められない。
- 減耗損・評価損がある場合の決算整理仕訳
- 商品棚卸減耗損:××× / 繰越商品 xxx
- 商品評価損:××× / 繰越商品 xxx
- 仕入 xxx / 商品棚卸減耗損 xxx ⇒売上原価に算入する場合
- 仕入 xxx / 商品評価損 xxx ⇒売上原価に算入する場合
期末商品BOX
原価 | |||
PL「商品評価損」 | PL「棚卸減耗損」 | ※PL「期末商品棚卸高」 | |
正味売却価額 | 後T/B「繰越商品」、B/S「商品」 | ||
実地棚卸 | 帳簿棚卸 |
※:減耗損・評価損が生じるとPL「期末商品棚卸高」≠BS「商品」
損益計算書における表示
表示科目 | 原価性の有無 | 表示区分 |
商品棚卸減耗損 | 原価性あり ・発生額:経常的 ・発生頻度・原因:通常程度 | 売上原価の内訳項目(仕入勘定に振替) または 販管費(独立科目で計上) |
原価性なし | 営業外費用(独立科目で計上) または 特別損失(独立科目で計上) | |
商品評価損 | 原則 | 売上原価の内訳項目(「期末商品棚卸高を控除した「差引」額から「商品評価損」を別建で記入し、売上原価相当額に加える。 または 売上原価に自動的に含める(期末商品棚卸高に商品評価損を控除した金額を記入) |
例外(臨時的原因かつ多額) | 特別損失 |
注記
- 原価性:売上や製造に欠かせない必須のコスト(発生が避けられないコスト)という性質。
- 売上原価の内訳項目:損益計算書の表示区分の指示、帳簿上の処理とは別。
- 売上原価に算入:帳簿上で仕入勘定へ振り替える指示。損益計算書の表示とは別。
売価還元法
- 売価還元原価法(売価還元平均原価法):期末商品の実地棚卸により集計した売価合計額から、その商品の仕入原価の概算額を算出するための計算方法。仕入原価の総額と売価の総額により原価率を求める。
- 売価:期首商品の売価(前期末の棚卸による売価集計額)+当期仕入高の売価(仕入原価+当初に上乗せした利益額(原始値入額)+純値上額-純値下額
- 期中の払出記録を省略し、期末の実施棚卸による売価合計額に、原価率を乗じて求めた金額を期末棚卸資産の原価とする方法(原価を簡便的に算出する方法で実務で重宝されている)
- 売買還元法を採用すると実地棚卸を行ったタイミングでしか、売上原価を計算することができない。一方で、期中は受入の記録だけ必要で払出記録は必須ではない。
- 種類:①売買還元原価法:商品の仕入原価相当額を売価から算出する方法(連続意見書 第四、棚卸資産の評価に関する会計基準54項)。②売買還元低価法:収益性が低下した場合に下落した仕入原価相当額(正味売却価格相当額)を売価から算出する方法。
- 売買還元法は一般的には商品をグループ化して適用すべき。また、取扱品種の極めて大きい小売業等の業種における棚卸資産の評価に適用することが認められている。
- 原価の内訳:期首商品(原価)+当期仕入(原価)=受入原価合計、売上原価(⇒期末商品算出後に計算)+期末商品(原価、⇒原価率算出後に計算)=払出原価合計
- 商品売価BOX:期首商品(売価)+当期仕入売価(値上・値下考慮後)=受入売価合計。受入売価合計-当期売上高=期末商品(帳簿棚卸売価)。
- 棚卸減耗:(期末棚卸売価-実地棚卸売価)X原価率
- 商品評価損:実地棚卸分の「正味売却価額」が与えられる場合は、実態棚卸原価>正味売却価額の場合は、その差額分が「商品評価損」となる。
原価法原価率 | P/L 商品評価損 | P/L 棚卸減耗損 | |
低価法原価率 | 正味売却価額、後T/B 繰越商品、B/S 商品 | ||
実地棚卸(売価) | 帳簿棚卸(売価) |
- 売価還元低価法:商品の販売価額が相当程度下落している場合に正味売却価額を直接把握することが困難な場合に、正味売却価額の近似値(下落した原価の近似値)を売買還元法を用いて算出する方法。
- 適用条件:値下額等(値下額・値下取消額)が、売価合計額に適切に反映されていること⇒期末商品の実地棚卸に用いる売価は、値下額等を考慮した後の売価であること。
- 売価還低価法の原価率:分母の受入商品の売価総額に純値下額を除外。(連続意見書 第4、第一・三・2、棚卸資産の評価に関する会計基準13項
- 商品評価損:売価還元低下法の原価率を算出し、原価法原価率と低価法原価率を差額に実地棚卸(売価)乗じることで算出(上記図)
分記法:売上高を売上原価と販売利益とに分記する。
- 基本仕訳(商品仕入時):(借)商品 /(貸)買掛金
- 基本仕訳(商品販売時):(借)売掛金 / (貸)商品(売上原価)、商品販売益(差額)
- 仕入の都度、仕入原価が記入され、売上の都度、売上原価が記入される。
- 商品勘定:期末残高があれば期末商品
- 売上高:商品勘定の貸方合計の売上原価と商品販売益勘定の売上総利益の合計額。決算整理不要。
- 減耗・評価損の仕訳:(借)商品棚卸減耗損、商品評価損 / (貸)商品 ※総記法、売上原価対立法も同じ仕訳。
- 売上高の算出:商品販売益を利益率で除して計算するパターンが多い。
- 当期仕入高:売上高に原価率を乗じて売上原価を計算し、商品BOXの差額で計算するパターンが多い。
- 仕入値引、仕入割戻、仕入戻しの仕訳:(借)買掛金 /(貸)商品
- 売上値引、売上割戻の仕訳:(借)商品販売益 / (貸)売掛金
- 売上戻りの仕訳:(借)商品、商品販売益 / 売掛金
総記法
- 総記法で使用する勘定科目は、商品勘定と商品販売益勘定の二つ。期中取引は商品勘定のみ使用。
- 仕訳:商品の仕入時:商品勘定の借方で、仕入額(仕入原価)を記入する。商品の販売時:商品勘定の貸方へ、売上高(売価)を記入する。※商品勘定の期末残高は貸方残高になることが多い。商品勘定の残高が貸方にあれば総記法。
- 決算整理仕訳:(借)商品 / (貸)商品販売益 ※商品販売益の額=PL売上総利益の額
- 商品販売益:商品勘定の貸方に期末商品額を加えると、商品販売益が算出できる。理由:売上高から売上原価(期首商品+当期仕入高-期末商品)を控除した残額が算出される。
- 決算整理仕訳:上記の商品販売益の額を商品勘定から商品販売益勘定へ振り替える。
- 売上高:商品販売益÷利益率。当期仕入高:商品勘定の貸借差額
- 仕入値引・割戻・戻し:(借)買掛金 / (貸)商品
- 売上値引・割戻・戻り:(借)商品 / (貸) 売掛金
売上原価対立法:商品、売上、売上原価勘定を使用。
- 商品の仕入時:(借)商品 / (貸) 買掛金
- 商品の販売時:(借)売掛金 / (貸) 売上高、(借)売上原価 / (貸) 商品 ※売上の都度計上。商品の減少(払出)=売上原価勘定
- 決算整理は不要:①商品勘定:期末商品の額、②売上原価:売上原価の額、③売上高の額
- 原価率:売上高と売上原価から算出。
- 仕入値引、割戻、戻し:買掛金 XX / 商品 XX
- 売上値引、割戻、戻り:①売上 XX / 売掛金 XX、②商品 XX / 売上原価 XX
- 商品勘定の記入内容は分記法の商品勘定と同じ。
- 売上戻り:売上の取り消しと売上原価の取り消し。
仕入諸掛(付随費用):仕入に際してかかる付随費用。
- 外部仕入諸掛:商品を引き取るまでに要する諸費用、例、運賃、購入手数料、関税
- 内部仕入諸掛:商品を引き取った後、保管中に要する諸費用、例、保管費、検収費
- 処理方法:原則、仕入原価に算入。少額、重要性に乏しい場合は、費用処理可(販管費)
- 仕入原価=購入代価(送り状価格)+仕入諸掛
- 仕入諸掛の期中処理(①直接加算):繰越商品、期中仕入に含める。
- 仕入諸掛の期中処理(②間接加算):繰越仕入諸掛、仕入諸掛(費)で別建て⇒決算整理が必要。
- 間接加算の決算整理仕訳:
- ①購入対価の整理 (借)仕入 / (貸) 繰、 (借)繰 / (貸) 仕
- ②仕入諸掛の整理 (借)仕入諸掛/(貸)繰越仕入諸掛、(借)繰越仕入諸掛/(貸)仕入諸掛⇒翌期繰越額
- ③売上原価分の整理(借)仕入/(貸) 仕入諸掛 ⇒ 仕入諸掛勘定の残高はゼロ
- 仕入諸掛の案分計算:①総平均法(期首商品と当期仕入を合算して案分)、②先入先出法(当期仕入のいで按分)
- 試験問題で仕入諸掛の特段の指示がない限り、直接加算の処理を行う。
- 財務諸表上では仕入諸掛を直接加算した額がで表示します。損益計算書の売上原価の内訳項目や貸借対照表の商品は仕入諸掛込みの金額で表示(直接加算のみ)
- 財務諸表論での仕入諸掛:直接法でも間接法でも仕入諸掛は繰越商品に含まれる⇒決算整理仕訳では、諸掛を含めて、仕、繰、繰、仕を行う。間接法の場合は、仕入諸掛勘定(当期仕入)を仕入勘定に振り替える。
原価率を自分で計算する問題
- 必要な原価率は事前の原価率。売価設定時点のもの。
- 基本的には、売上原価BOXを作成し、売上原価と売上高との対応で原価率を算出する。①売上戻り後、値引前の売上高と売上戻り後の売上原価、②売上戻り前・値引前の売上高と売上戻り前の売上原価。
- 期末商品残高に売上戻り考慮済の場合(売上戻り・値引きは間接控除法):売上原価BOXで差額で算出された売上原価と売上戻り後、値引き前の売上高で原価率を計算(総売上高-売上戻り)。
- 期末商品残高に売上戻り考慮済の場合(売上戻り・値引きは直接控除法):売上原価BOXで差額で算出された売上原価と売上戻り後、値引き前の売上高で原価率を計算(純売上高+売上値引き)。
- 期末商品残高に売上戻り未処理の場合(売上戻り・値引きは直接控除法):①売上原価BOXで売上戻り考慮前の期末商品残高から差額で算出された売上原価と売上戻り前、値引き前の総売上高で原価率を計算。②原価率算定後に売上戻りの期末商品原価を計算し、差額で売上戻り考慮後の売上原価を再計算(=(総売上高-売上戻り)×原価率)。
棚卸資産の費用配分
- 棚卸資産の費用配分:受け入れた商品等の原価を、当期の費用(売上原価)と将来の費用(期末商品)に配分。
- 資産分類:①流動資産と固定資産、②有形資産と無形資産、③償却性資産と非償却性資産、④貨幣性資産と費用性資産、⑤貨幣性資産と非貨幣性資産、⑥金融資産と事業用資産
- 貨幣性資産:貨幣や将来貨幣で回収される資産。例、現金、預金、売掛金、貸付金
- 費用性資産:将来費用化される資産。例、償却性資産、棚卸資産等
- 費用配分:①単価計算(先入先出法、総平均法、移動平均法等)と②数量計算(継続記録法、棚卸計算法)
- 継続記録法(原則):商品の受入数量と払出数量(商品有高帳が必須)をともに継続記録する方法⇒期末の棚卸高は、帳簿と実地の両方で把握可能。
- 棚卸計算法:商品の受入数量のみを継続記録し、払出数量は継続記録を行わない方法。⇒期末の棚卸は、実地棚卸のみ可能。※差額計算する当期払出数量に棚卸減耗数量が混入する。
商品有高帳
- 商品の受入数量及び払出数量を継続記録するための補助簿であり、数量とともに単価も計算するのが通常。商品有高帳の期末残高が「期末商品帳簿棚卸高」となる。
- 払出単価の計算方法:先入先出法、後入先出法(その都度(通常)、月別、期別)、総平均法(月別、期別)、移動平均法。※先入先出法、移動平均法は、その都度でも月別でも期別でも、一会計期間を通しての計算結果は変わらない。
- 先入先出法:売上原価を直接計算するよりも、期末商品を先に計算し、これと受入合計との差額で売上原価を計算する方が、短時間で済む。
- 総平均法:払出数量の合計、期末棚卸数量を求めるのに大差ないので、どちらを先に計算しても良い。
- 移動平均法:受入と払出を地道に計算するしかない。
商品売買の表示:財務諸表論
区分 | 表示科目 | 重要ポイント | 補足 |
売上原価 | 期首商品棚卸高 | 仕入諸掛含める | |
当期商品仕入高 | 純仕入高、値引き・戻し・割戻りは直接控除、仕入諸掛含める。仕入割引は控除しない。他勘定振替高は控除しない。 | ||
他勘定振替高 | 仕入高から控除しない。「見本品費振替高」、「火災損失振替高」等、仕入諸掛を含める。控除する。 | 「合計」欄の下、「期末商品棚卸高」の上 | |
期末商品棚卸高 | 帳簿棚卸高(原価)を記載。仕入諸掛を含める | 減耗損や評価損を直接控除した金額を記載することも可 | |
商品棚卸減耗損 | 「差引」の下。プラス | 原価性あり | |
商品評価損 | 「差引」の下。プラス | 原価性あり、①正常かつ少額、②正常かつ多額、③臨時かつ少額 | |
販管費 | 見本品費 | ||
商品棚卸減耗損 | 原価性あり | ||
営業外収益 | 仕入割引 | ||
営業外費用 | 商品棚卸減耗損 | 原価性なし | |
特別損失 | 火災損失 | ||
商品棚卸減耗損 | 原価性なし | ||
商品評価損 | 臨時的かつ多額 | ||
流動資産 | 商品 | 実地棚卸高(評価額)を記載。原則、取得原価、例外、正味売却価額(原価>正味売却価額)。 | 取得原価には仕入諸掛を含める。 |
商品売買に係る注記:期末商品の評価に関する内容の注記⇒「重要な会計方針に係る事項」の一つ。
(記載文例)重要な会計方針に係る事項に関する注記
1 資産の評価基準及び評価方法
(1)棚卸資産の評価基準及び評価方法
商品・・・移動平均法による原価法(貸借対照表価額は収益性の低下による簿価切り下げの方法により算定)
- 評価基準:原価法。販売目的の棚卸資産の評価基準は、原価法しな認められていない。販売目的以外(トレーディング目的等)で保有する棚卸資産(貴金属等)は時価法が適用される。
- 評価方法:個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売買還元法等。
税金の種類
- 資産取得に係る税金:原則、資産の取得原価に算入。但し、重要性に乏しい場合は、費用処理(租税公課勘定)する場合もある。
- 資産取得時以外の税金:基本的に会計上の費用、但し、消費税は間接税であり、消費者に変わって国等へ納付する役割。①会社の利益に応じてかかる税金(法人税、住民税、事業税等)や②利益の大小とは無関係に会社が負担する税金(印紙税、固定資産税)
法人税・住民税
- 中間申告(予定申告)=法人税等の前払い。会計期間が1年の場合は期央から2か月以内に、①前年度法人税等の額の約半分か②上半期の仮決算を行ってそれによる税額を申告納付する。但し、前年度法人税額が一定額を下回る少額の場合や、前年度が赤字の場合は中間納付は不要。
- 確定申告(確定納付):決算日から2か月以内に当年度法人税等の額(確定年税額)を計算して申告する。確定申告による納付額(確定納付額)は確定年税額から中間納付額を控除した額。
- 仕訳(中間納付):(借)仮払法人税等/(貸)現金預金
- 仕訳(決算時):(借)法人税等/(貸)仮払法人税等、未払法人税等 ※「表示科目」は「法人税、住民税及び事業税」
- 仕訳(確定申告納付):(借)未払法人税等/(貸)現金預金
- 源泉徴収税額の取り扱い:受取利息や受取配当金の源泉徴収額は、法人税の前払(仮払法人税等)として処理し、決算時に中間納付と合わせて法人税等に振り替える。また、従業員に支給した給料に係る源泉徴収は「預り金」として処理し、納付処理する。
- 過年度申告の修正:①不足分:(借)法人税等追徴税額/(貸)未払法人税等、②多い分:(借)未収法人税等/(貸)法人税等還付税額
事業税
- 会社が個人が事業を営むことで地域の地方自治体から各種の行政サービスを受けることになるため、その事業の事務所又は事務所の所在する地域で課される税金。
- 種類:①所得割:会社の所得に比例して課される部分、②付加価値割及び資本割:資本金1億円超の会社の場合に売上高や資本金などの外形的な事業規模に応じて課税される部分であり、「外形標準課税」と呼ぶ。仕訳:(借)法人税等、租税公課(付加価値割・資本割)/(貸)仮払法人税等、未払法人税等
消費税
- 国内における消費活動(資産の売買やサービスの教授)に対して、一定の率で課される税金。消費税(国税)及び地方消費税の両方を合わせて消費税等
- 会計処理方法:①税抜方式、②税務込み方式。税理士試験では税抜方式が出ている。
- 期中処理:仮払消費税等又は仮受消費税等
- 決算整理:①仮受消費税等>仮払消費税等=未払消費税等(流動負債)、②仮受消費税等<仮払消費税等(流動資産)=未収消費税等
- 仕訳例:(借)売掛金 900/(貸)売上 900、仮受消費税等 90
- 仕訳例:(借)水道光熱費 100、仮払消費税等10 /現金預金 110
- 仕訳例:(借)備品 300、仮払消費税等 30 / 未払金 330
- 仕訳例:(借)未収金 440 /備品 300、備品売却益 100、 仮受消費税等 40
- 中間納付:法人税と同様、中間納付を行う場合は、仮払消費税等に計上。決算整理仕訳で仮受消費税等を相殺し、差額を未払消費税等又は未収消費税等に計上する。※確定年税額が与えられない場合。
- 消費税等の確定年税額:当年度分の消費税納付額
- 消費税等の確定納付額(申告納付額):確定年税額から中間納付額を控除した残額(税務上の未払消費税等)
- 会計上と税務上の相違:会計上で仮払消費税額(中間納付額を含まない)と仮受消費税等を相殺した差額を「相殺残高」という。確定年税額との差額がある場合は、①借方差額は、租税公課や雑損失、②貸方差額なら雑収入で処理。
- 仕訳例(借方差額):(借)仮受消費税等 124,000、租税公課 1,000 / 仮払消費税等 110,000、仮払消費税等(中間納付額) 6,000、未払消費税等(確定納付額) 9,000 ※確定年税額=15,000(6,000+9,000)
- 仕訳例(貸方差額):(借)仮受消費税等 126,000 / 仮払消費税等 110,000、仮払消費税等(中間納付額) 6,000、未払消費税等(確定納付額)9,000、雑収入 1,000
租税公課
- 租税公課:①税金関連:印紙税(収入印紙)、事業税(付加価値割、資本割)、固定資産税、②地域や所属する団体などが課す負担金:各種会費、各種組合費。
- 仕訳例(固定資産税):(借)租税公課/(貸)未払税金
項目 | 表示科目 | 表示区分 |
確定年税額(年間納税額)ー事業税の所得割含む | 法人税、住民税及び事業税 | 税引前当期純利益の次 |
法人税等の追徴税額 | 法人税等追徴税額 | 法人税、住民税及び事業税の次。マイナス不要 |
法人税等還付税額 | 法人税等還付税額 | 法人税、住民税及び事業税の次。プラス不要 |
事業税:付加価値割・資本割 収入印紙(使用分)、固定資産税、町内会費、商工会議費、消費税等の相殺残高と確定年税額との差額(借方差額) | 租税公課 | 販管費 |
収入印紙(未使用分) | 貯蔵品 | 流動資産 |
確定納付額(申告納付額)ー事業税の確定納付額(所得割、付加価値割、資本割含む) | 未払法人税等 or 未収法人税等 | 流動負債 or 流動資産 |
確定年税額が与えられない場合:仮受>仮払 | 未払消費税等 | 流動負債:未払法人税等の下 |
確定年税額が与えられない場合:仮受<仮払 | 未収消費税等 | 流動資産:未収法人税等の下 |
確定年税額が与えられた場合:確定納付額(申告納付額) | 未払消費税等 or 未収消費税等 | 流動負債 or 流動資産 |
諸税金の注記
重要な会計方針に係る事項に関する注記
5 その他計算書類の作成のための基本となる重要な事項
(1)消費税等の会計処理方法・・・税抜方式
現金の範囲
- 会計上の「現金」:①通貨(紙幣や硬貨)、②通貨代用証券(他人振出小切手、配当領収書(貸方:受取配当金)、期限到来済公社債利札(貸方:有価証券利息))
- 「現金」と紛らわしいもの:①収入印紙(購入時は租税公課、未使用分は貯蔵品に振替)、②郵便切手(購入時は通信費、未使用分は貯蔵品に振替)。
- 現金の照合:現金過不足が発生した際は、現金の帳簿残高を、①「現金過不足」勘定を一時的につかって修正して現金の実際有高に合わせる。②過不足原因が判明したら適切な勘定に振替、③不一致が判明しない場合は、決算整理仕訳で、雑損失(借方残高)または雑収入(貸方残高)で整理する。
- 小口現金:日常的な少額の支払いに備えるために保有しておく現金。小口現金の補給は、小切手の振り出しによる。
- 小口現金を支給:(借)小口現金/(貸)当座預金
- 小口担当者より支払報告:(借)交通費、通信費、消耗品費/(貸)小口現金
- 小口現金を支給:通常は、支払額と同額を支給
- 預金種類:当座預金、普通預金、定期預金、積立預金、通知預金、別段預金。表示科目は、「現金及び預金」だが、定期預金と積立預金は1年基準が適用され、長期のものは、投資その他の資産の区分で「長期性預金」勘定が使われる。
- 通常の小切手:①振出時は当座預金の減少、②受取時は現金の増加処理、③小切手を当座預金口座に取立依頼時は(借)当座預金/(貸)現金が使われる。
- 小切手の特殊ケース
特殊ケース | 会計処理 | |
未渡小切手 | 商品代金の未渡小切手 | (借)当座預金/(貸)買掛金 |
諸費用支払の未渡小切手 | (借)当座預金/(貸)未払金 | |
資産購入代金の未渡小切手 | (借)当座預金/(貸)未払金 | |
自己振出小切手の受取 | (借)当座預金/(貸)売掛金 | |
先日付小切手の受取 | (借)受取手形/(貸)売掛金 | 先日付小切手を振り出す場合は「支払手形」 |
不渡小切手 | (借)不渡小切手/(貸)当座預金 | BS表示は一年基準 |
当座借越(当座借越契約がある場合)
- 処理方法:①二勘定性:当座預金勘定と当座借越(負債)勘定の2勘定で処理する。②一勘定性:当座勘定(または当座預金勘定)の1勘定で処理する。原理的には「当座勘定」を用いるべきだが、本試験では「当座預金勘定」を用いている場合が多い。
- 当座借越は「短期借入金」(流動負債)に振替。
- BS表示上、ある銀行の当座借越は、他の銀行の当座預金と相殺してはならない(帳簿上で両者が相殺されていることがよくある)。
- 当座預金には通帳がないので、会社側の当座預金出納帳と銀行が発行する当座勘定照合表とを確認して不一致事項が無いかを確認する⇒当座預金の適正な残高を把握する為に会社は「銀行勘定調整表」を作成する。
- 銀行勘定調整表:①「企業残高・銀行残高区分調整法」、②「企業残高調整法(企業残高⇒銀行残高に調整)」、③「銀行残高調整法(銀行残高⇒企業残高に調整」
不一致原因 | 概要 | 企業側 | 銀行側 |
時間外預け入れ | 会社が時間外に預け入れ | 仕訳なし | 入金処理 |
未取立小切手 | 会社が取立依頼し預入処理したが、小切手が未取立。 | 仕訳なし | 入金処理 |
入金未通知 | 会社に未通知 | (借)当座預金/(貸)受取手形 or 売掛金 | 仕訳なし |
未取付小切手 | 会社が振出記帳した小切手を受取人が取り立てていない。 | 仕訳なし | 入金処理 |
未渡小切手 | 会社振出記帳した小切手見渡し | (借)当座預金/(貸)買掛金 or 未払金 | 仕訳なし |
出金未通知 | 会社未通知 | (借)支払手形 or 水道光熱費等 / (貸) 当座預金 | 仕訳なし |
非定型の不一致 | 会社の記帳誤り | 貸借反対、金額桁違い、数値見間違い等⇒問題毎に判断。 |
区分調整法のT字勘定形式
(会社) 当座預金 | (銀行) 当座預金 | ||
出納帳残高 | 出金未通知 | 照合表残高 | 未取付小切手 |
未渡小切手 | 時間外預け入れ | ||
入金未通知 | (調整後残高) | 未取立小切手 | (調整後残高) |
※調整後残高が一致することで、当座預金の適正な残高を算定(BS計上額)。銀行側の調整項目は、企業側で既に行った処理に合わせるように銀行側で調整する。
表示科目
項目 | 備考 | 表示区分 | 表示科目 |
通貨、通貨代用証券、当座預金、普通預金、通知預金、別段預金 | 流動資産 | 現金及び預金 | |
定期預金、積立預金 | 1年以内 | ||
1年超(残りの積立期間が1年内に満期到来するか) | 投資その他の資産 | 長期性預金 | |
未渡小切手 | 当座預金 | 流動資産 | 現金及び預金 |
自己振出小切手 | |||
先日付小切手 | 受取手形 | ||
収入印紙 | 未使用分 | 貯蔵品 | |
郵便切手 | |||
当座借越 | 流動負債 | 短期借入金 |
会計公準:会計という仕組みを成立させるうえで、最初に必要とされた当然の基礎的前提。
- 企業実態の公準(会計単位の公準):企業実態と出資者を別途のものと捉え、企業自体を会計単位とする前提。
- 継続企業の公準(会計期間の公準):企業は、永続に継続すると仮定し、企業の存続期間を人為的に一定の会計期間に区切って、期間計算を行う前提をいう。
- 貨幣的評価の公準(貨幣的測定の公準):会計行為(認識、測定、記録、報告)のすべてを貨幣額によって行う前提(貨幣額で測定できないものは会計の対象とはならない)
会計理論の3つの階層
- 基礎構造:会計公準:例、継続企業の公準
- 中間構造:会計原則:例、費用配分の原則
- 上部構造:会計手続:例、減価償却
会計主体論 | 資本主理論 | 企業主体理論 |
定義 | 企業は出資者の所有物であると考えて、出資者の立場から会計上の判断を行うべきであるという考え方。 | 企業は出資者とは別個の独立した存在であると考えて企業自体の立場から会計上の判断を行うべきであるとする考え方。 |
会計主体 | 出資者 | 企業自体 |
企業と出資者の関係 | 企業=出資者 | 企業≠出資者 |
資産・負債 | 出資者に帰属 | 企業自体に帰属 |
利益 | 出資者に帰属 | 企業自体に帰属 |
利害関係者の位置づけ | 出資者:内部者、債権者:外部者 | 出資者:外部者、債権者:外部者 |
適合する企業 | 個人企業 | 株式会社 |
GAAP:Generally Accepted Accounting Principles
- 日本では、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」。例、企業会計原則(一般原則、損益計算書原則、貸借対照表原則、企業会計原則注解)、各種の会計基準、各種の適用指針、各種の実務対応報告、各種の実務指針
- 定義:企業実務の中に慣習として発達したもののうち、一般に公正妥当と認められた会計慣習を、一定の権限ある機関が整理して設定したもの。⇒法律ではなく社会的な規範。
- 必要性:財務諸表がその情報提供機能を適切に果たし、投資家が利用する会計情報に信頼性を持たせるためには、財務諸表の作成と公表に際して準拠されるべき社会的な規範を設定し、経営者の行う会計処理に一定の規制を加える必要がある。
- 会社法会計(会社法第431条):株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。
- 会社法会計(会社法計算規則3条):用語の解釈及び規定の適用に関しては、一般に公正妥当と認められる企業会計の基礎その他の企業会計の慣行をしん酌しなければならない。
- 金融用品会計取引法会計(財務諸表等規則第1条):この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計に従うものとする。
貸借対照表観:BSの役割を通じ会計の目的をどうみるか。 | 静的貸借対照表(静態論) (財産計算重視) | 動的定借対照表(動態論) (損益計算重視) |
静態論の特徴 | 時代背景:企業の存続期間は短い解散を前提 意義:企業の債務弁済能力を重視、会計目的を財産計算に求める。 BS役割:一定時点の財産の状態 重視する項目:資産(換金価値)と負債(確定債務)の把握⇒債権者保護重視 | 時代背景:企業の存続期間は長い継続企業の前提が現実 意義:企業の収益力の算定表示を重視。会計の目的を損益計算に求める。 BS役割:資産(換金価値、計算犠牲的資産)、負債(確定債務、計算犠牲的負債)を示す表 重視する項目:収益と費用の把握を重視⇒投資家保護重視 |
BS作成方法 | 棚卸法:資産及び負債を実施棚卸により把握してBSを作成(純資産は差額)。 物理的に把握できる項目や法律上の債権・債務しか実地棚卸で把握できない。 | 誘導法:資産、負債及び純資産を複式簿記による継続的な帳簿記録に基づいて把握しBSを作成。 棚卸法では計上できない、繰延資産や引当金も計上可。 |
利益(期間損益)の計算方法 | 財産法:一定時点のストック 意義:期末純資産額から期首純資産額を差し引いて期間損益を算出(実地棚卸が必要)。 長所:純資産そのものの増減に着目するため財産的な裏付けのある利益が算出。 短所:収益及び費用を把握しないため利益の発生原因を明らかにできない(企業の業績把握ができない) | 損益法:一定期間のフロー 意義:期間収益(経営成果)から期間費用(経営努力)を差し引いて期間損益(経営の純成果)を算出(継続記録が必要) 長所:純資産の増加原因となる収益と純資産の減少原因となる費用によって損益計算を行うため、利益の発生原因を明らかにできる。 短所:資産及び負債の把握しないので利益の財産的な裏付けが必ずしも得られない。 |
未解消項目:主として損益と収支の期間的ずれにより生じる不一致項目。継続企業を前提として「期間計算」を行うことで生じる未解消項目は企業の解散時には存在しない。
売掛金と買掛金
- 売掛金:掛けによる売上によって生じる債権
- 買掛金:掛けによる仕入によって生じる債務
- 掛け取引の明細記録:相手先別に記録するための補助簿(補助元帳)が得意先元帳・仕入先元帳
- 得意先元帳:売掛金勘定の明細:得意先ごとに売掛金の増減を記録。掛売上の増減(貸倒含む)のみ記入。現金売上、手形売上は記入されない。
- 仕入先元帳:買掛金勘定の明細:仕入先ごとに買掛金の増減を記録。掛仕入の増減のみ記入。現金仕入や手形仕入は記入されない。
手形の分類
- 記載さらた将来の期日に、記載された金額を記載された支払人(または引受人)が記載された相手(受取人)に支払うことを定めて証券。当座預金口座を持つことで利用可能。
- 小切手との違い:小切手は即時換金証券なのに対して、手形は期日換金証券。
- 約束手形:振出人自身が支払う手形。
- 為替手形:振出人が名宛人に支払を依頼する手形
- 利用上の分類:商業手形:①営業手形(通常の営業取引)、②営業外手形(左記以外の売買代金の決算)、金融手形:金銭貸借における借用証書の代用。
約束手形
- 主な記載事項:名宛人(受取人)、額面(額面金額)、満期日
- 受取人は別の者にこの手形を譲渡することができる。譲渡を受けたものを「指図人」という。
- 受取人:取立依頼時は仕訳なし。期日入金で仕訳(借方:当座預金/ 貸方:受取手形)
為替手形
- 振出人が、別の者(振出人に対して債務を有する者)に受取人への支払い依頼をするための手形。
- 名宛人(引受人)、指図人(受取人)、振出人。引受人は引受を依頼されたら記名押印等をすることで正式に支配人となる。
- 為替手形は、支払期日に引受人が支払不能となった場合は代わって振出人が支払う責任を負う。
登場人物 | (借) | (貸) | 補足 |
振出人 | 買掛金 (受取人) | 売掛金 (引受人) | (借)は「仕入」の場合もあり。 |
名宛人(引受人) | 買掛金 (振出人) | 支払手形 (受取人) | |
受取人(指図人) | 受取手形 (引受人) | 売掛金 (振出人) | 取立依頼時は仕訳不要。(貸)は「売上」の場合もあり。 |
手形の裏書譲渡
- 受取手形の裏面に必要事項を記載することで他人に譲渡(裏書人⇒被裏書人)すること。
- 手形が不渡りとなった場合、支払人に変わって裏書人が手形代金を支払う義務(遡及義務)がある。⇒遡及義務の時価評価が必要。
手形の割引
- 支払期日前に金融機関等に買い取って貰うこと。支払期日までの日数分の利息は代金から差し引かれるのでこの利息を「割引料」とする。
不渡手形
- 取立依頼された手形が満期日に支払人の銀行口座の資金不足により決済されず、手形交換所から取立依頼した者へ手形が戻されること。
- 不渡りとなるケース:①保有手形の不渡り、②裏書手形の不渡り、③割引手形の不渡り
- 不渡手形は、裏書が手形を買い戻し(遡及義務履行)、支払人に償還請求する。
(借) | (貸) | 補足 | ||
手形裏書 | 手形裏書譲渡時 | 〇〇 | 受取手形 | |
保証債務費用 (営業外費用) | 保証債務 (流動負債) | 遡及義務を時価評価 | ||
裏書手形が決済時 | 保証債務 | 保証債務取崩益 (営業外収益) | ・保証債務費用と取崩し益はGross表示必要(相殺不可) ・営業外手形の裏書・割引の保証債務は一年基準 | |
割引手形 | 手形割引時 | 現金預金 | 受取手形 | |
手形売却損 | 営業外費用 | |||
保証債務費用 | 保証債務 | 手形売却損に含めること可 | ||
割引手形決済時 | 保証債務 | 保証債務取崩益 | ||
不渡手形 | 保有手形 | 不渡手形 | 受取手形 | |
裏書手形 | 不渡手形 | 現金預金 | ||
保証債務 | 保証債務取崩益 | |||
割引手形 | 不渡手形 | 現金預金 | ||
保証債務 | 保証債務取崩益 | |||
償還請求費用の支払 | 不渡手形 | 現金預金 | 当初の支払人に取り立てる。 |
営業外手形、金融手形、その他の金銭債権・債務
分j類 | 勘定科目 | 内容 | 一年基準 | 表示区分 | 表示科目 |
営業手形 | 受取手形 | 正常営業循環基準 | 流動資産 | 受取手形 | |
支払手形 | 流動負債 | 支払手形 | |||
営業外手形 | 営業外受取手形 | 通常の営業取引以外の取引により生じた手形債権 | 1年以内 | 流動資産 | 短期営業外受取手形 |
1年超 | 投資その他の資産 | 長期営業外受取手形 | |||
営業外支払手形 | 通常の営業取引以外の取引により生じた手形債務 | 1年以内 | 流動負債 | 短期営業外支払手形 | |
1年超 | 固定負債 | 長期営業外支払手形 | |||
金融手形 | 手形貸付金 | 約束手形を受け取って貸付 | 1年以内 | 流動資産 | 短期貸付金 |
1年超 | 投資その他の資産 | 長期貸付金 | |||
手形借入金 | 約束手形を振り出して借入 | 1年以内 | 流動負債 | 短期借入金 | |
1年超 | 固定負債 | 長期借入金 | |||
金銭債権 | 貸付金 | 1年以内 | 流動資産 | 短期貸付金 | |
1年超 | 投資その他の資産 | 長期貸付金 | |||
未収金 | 1年以内 | 流動資産 | 未収(入)金 | ||
1年超 | 投資その他の資産 | 長期未収(入)金 | |||
立替金 | そもそも一時的 | 流動資産 | 立替金 | ||
前渡金 | 正常営業循環基準 | 流動資産 | 前渡金 | ||
差入保証金 | 1年以内 | 流動資産 | 差入(営業)保証金 | ||
1年超 | 投資その他の資産 | 長期差入(営業)保証金 | |||
金銭債務 | 借入金 | 分割払い | 1年以内 | 流動負債 | 一年以内返済長期借入金 |
1年超 | 固定負債 | 長期借入金 | |||
未払金 | 1年以内 | 流動負債 | 未払金 | ||
1年超 | 固定負債 | 長期未払金 | |||
預り金 | そもそも一時的 | 流動負債 | 預り金 | ||
従業員預り金 | 1年以内 | 流動負債 | 従業員預り金 | ||
1年超 | 固定負債 | 長期従業員預り金 | |||
前受金 | 正常営業循環基準 (売上・仕入代金以外の場合は1年基準) | 流動負債 | 前受金 | ||
預り保証金 | 1年以内 | 流動負債 | 預り(営業)保証金 | ||
1年超 | 固定負債 | 長期預り(営業)保証金 | |||
経過勘定 | 前払利息等 | 表示区分:企業会計原則注解16 | 1年以内 | 流動資産 | 前払費用 |
1年超 | 投資その他の資産 | 長期前払費用 | |||
未収利息等 | - | 流動資産 | 未収収益 | ||
前受利息等 | - | 流動負債 | 前受収益 | ||
未払利息等 | - | 流動負債 | 未払費用 |
為替手形の特殊ケース
名称 | 当事者(2名) | 手形の実質的な内容 | (借) | (貸) |
自己宛為替手形 | 振出人=名宛人(引受人) 受取人 | 振出人が約束手形を振り出す。例、本支店間取引 | 〇〇 | 支払手形 |
自己指図為替手形 | 振出人=受取人(指図人) 名宛人 | 振出人が約束手形を受け取る。例、手形振出しできない得意先の売掛金回収を高める。 | 受取手形 | 〇〇 |
自己振出約束手形 | 受取 | 振出の取消 | 支払手形 | 〇〇 |
自己振出為替手形 | 受取 | 新たな受取 | 受取手形 | 〇〇 |
手形更改時 | 支払人 | 更改の事実を記録 | (旧)支払手形 (支払利息) | (新)支払手形 (現金預金 or 支払手形) |
受取人 | (新)受取手形 (現金預金 or 受取利息) | (旧)受取手形 | ||
荷為替手形 | 引受側 | 未着品 | 支払手形 | |
買掛金 | ||||
取組側 | 売主が遠隔地の得意先を名宛人(引受人)とし、売主の取引銀行を受取人として為替手形振出し、取引銀行に買い取って貰う。売主は船荷証券等を担保で銀行に預ける。 | 現金預金 | 売上 | |
手形売却損 | ||||
売掛金 |
貨物代表証券(陸上輸送の貨物引換所、海上輸送の船荷証券):運送中の商品の所有権(引き取る権利)を表す証券。運送業者は商品の送り主の依頼により必要に応じ「貨物代表証券」を発行する。裏書により他人に譲渡も可能であり商品の売主が担保として利用するのに便利。
未着品勘定:貨物代表証券を入手したときに使用する勘定科目(資産)。同勘定は運送中の商品の所有権の取得を表す。現品を引き取れば、消滅させて仕入勘定へ振り替える。
勘定連絡:売上関連
売上 | 売掛金 | 受取手形 | |||
値引・返品 | 現金売上 | 期首残高 | 現金回収 | 期首残高 | 取立入金 |
純売上高 | 当座売上 | 値引・返品 | 裏書 | ||
掛売上 | 掛売上 | 手形受取 | 掛回収 | 割引 | |
手形売上 | 貸倒れ | 手形売上 | 期末残高 | ||
前受金 | 期末残高 | ||||
前受金 | 貸倒引当金 | ||||
売上振替 | 期首残高 | 貸倒れ | 期首残高 | ||
期末残高 | 内金入金 | 期末残高 | 繰入額 |
勘定連絡:仕入関連
支払手形 | 買掛金 | 仕入 | |||
期日支払 | 期首残高 | 現金支払 | 期首残高 | 現金仕入 | 値引・返品 |
値引・返品 | 掛仕入 | 当座仕入 | 純仕入高 | ||
掛支払 | 手形支払 | 掛仕入 | |||
期末残高 | 手形仕入 | 手形裏書 | 手形仕入 | ||
期末残高 | 前渡金 | ||||
前渡金 | |||||
期首残高 | 仕入振替 | ||||
内金支払 | 期末残高 |
関係会社に係る表示と注記
関係会社に対する金銭債権債務 | 貸借対照表 | 原則、区分表示(例、関係会社買掛金、関係会社短期借入金) |
容認:注記方式(科目別注記方式) | ||
容認:注記方式(一括注記方式) | ||
関係会社との取引高 | 個別注記表 | 損益計算書に関する注記事項(区分表示は不要) |
<貸借対照表>
関係会社に対する金銭債権債務:注記方式(科目別注記方式)
関係会社に対する金銭債権は次の通りである。
受取手形 XX千円、売掛金 XX千円、短期貸付金XX戦線
関係会社に対する金銭債務は次の通りである。
支払手形 XX千円、買掛金 XX千円、短期借入金 XX千円、 長期借入金 XX千円
関係会社に対する金銭債権債務:注記方式(一括注記方式)
関係会社に対する金銭債権は次の通りである。
短期金銭債権 XX千円、 長期金銭債権 XX千円
関係会社に対する金銭債務は次の通りである。
短期金銭債務 XX千円、 長期金銭債務 XX千円
<個別注記表>
関係会社との取引高は次の通りである。
営業取引による取引高:売上高 XX千円、仕入高 XX千円
営業取引以外の取引による取引高:受取配当金 XX千円、支払利息 XX千円(纏めて記載も可)
※関係会社の取引高では純利益でなく総額表示:例、固定資産譲渡高 XX千円
個別注記表:債権債務に関するその他の貸借対照表の注記
項目 | 内容 | 例 |
資産が担保に供されている場合 | ①資産が担保に供されていること。 ②担保に供されている資産の内容及びその金額。 ③担保に係る債務の金額 | 担保に供している資産及び担保に係る債務 (1)担保に供している資産:定期預金 XX千円、建物 XX千円、土地 XX千円:計 XX千円 (2)担保に係る債務:短期借入金 XX千円、長期借入金 XX千円 |
保証債務(債務の保証人となった場合)、手形遡及債務等がある場合 | 当該債務の内容及び金額を記載。 | 保証債務及び手形遡及債務: ・他の会社の借入債務に対し、保証を行っております。 〇〇株式会社 XX千円、 △△株式会社 XX千円 計 XX千円 ・受取手形の割引高 XX千円 ・受取手形の裏書譲渡高 XX千円 |
関係会社に係る金銭債権債務を独立科目表示していない場合 | 説明済 | |
取締役、監査役及び執行役に対する金銭債権がある場合 | その総額を記載 | 取締役、監査役(執行役)に対する金銭債権及び金銭債務 取締役、監査役(執行役)に対する金銭債権及び金銭債務は次の通りである。 ・金銭債権 XX千円 ・金銭債務 XX千円 |
取締役、監査役及び執行役に対する金銭債務がある場合 | その総額を記載 |
貸倒処理
場合分け | (借) | (貸) | 償却済債権の回収 | (借) | (貸) |
前期以前貸倒れ | 現金預金 | 償却債権取立益 | |||
前期末決算:引当金設定なし | 貸倒損失 (販管費) | 売掛金 | 当期貸倒れ | 現金預金 | 貸倒損失 |
前期末決算:引当金設定あり(引当金足りる) | 貸倒引当金 | 売掛金 | 現金預金 | 貸倒引当金 | |
前期末決算:引当金設定あり (引当金足りない) | 貸倒引当金 | 売掛金 | 現金預金 | 貸倒引当金 | |
貸倒損失 (販管費) | 貸倒損失 | ||||
当期発生売掛金の貸倒 | 貸倒損失 (販管費) | 売掛金 | 現金預金 | 貸倒損失 |
貸倒引当金の設定
貸倒引当金の設定方法
- 差額補修法(通常):(借)貸倒引当金繰入額/(貸)貸倒引当金 or(借)貸倒引当金/(貸)貸倒引当金戻入額
- 洗替法: (借)貸倒引当金/(貸)貸倒引当金戻入額 and (借)貸倒引当金繰入額/(貸)貸倒引当金
- 債権の貸借対照表価額:
- 貸倒引当金の設定対象となる債権(金銭債権)の分類:①営業債権:売上債権(受取手形、売掛金)②営業外債権:営業外受取手形、貸付金等、③その他の債権:前渡金等
- 債権の貸借対照表価額:取得価額から貸倒見積高に基づいて算定された貸倒引当金を控除した金額(金融商品に関する会計基準第14項)
- 貸倒引当金のBS表示方法:①間接控除方式(原則、科目別控除方式、一括控除方式(出題多い))、②直接控除方式(科目別注記方式、一括注記方式)
直接控除した場合の注記例
1.貸借対照表に関する注記
科目別注記方式
資産から直接控除した貸倒引当金:受取手形 XX千円、売掛金 XX千円、長期貸付金 XX千円
一括注記方式
資産から直接控除した貸倒引当金:短期金銭債権 XX千円、長期金銭債権 XX千円
重要な会計方針に係る事項に関する注記(引当金の計上基準):一般債権と特定の債権に分けて記載。
(1)貸倒引当金
売上債権、貸付金等の債権の貸倒による損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については、個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。
区分(貸倒見積) | 内容 | 貸倒見積高の算定方法 | 補足 | |
一般債権 | 経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権 | 貸倒実績法:債権全体又は同種(例、各勘定別)・同類(例、営業債権・営業外債権、短期・長期等)の債権ごとに債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績(翌期以降における貸倒発生額(平均回収期間内)/あるきにおける債権期末残高)等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。 | ||
貸倒懸念債権 (一般債権に含める) | 経営破綻の状態には至っていないが債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権。科目振替は不要。 | ①財務内容評価法(貸倒懸念債権の当期末残高-担保の処分見込額、保証による回収見込額)×貸倒見積率)、 ②キャッシュ・フロー見積表(貸付金等利息あるのもに適用可):債権の元本及び利息について将来の元本の回収額及び利息の受取額を当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割り引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法。⇒実質的な目べき額を算出。2年目以降、前期末と当期末の貸倒見積高の差額分を受取利息(または貸倒引当金戻入額)で計上。 (借)貸倒引当金/(貸)受取利息 | 債務の弁済に重大な問題が生じている:①債務の弁済が1年以上停滞。②債務者に対して弁済条件の大幅な緩和を行っている(弁済期間の延長、弁済の一次棚上げ、元金又は利息の一部免除) | |
破産更生債権 (独立科目) | 経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権。当該債権を「破産更生債権等」の科目に振り替える必要あり。 | 破産更生債権等の当期末残高-担保の処分見込み額(土地、有価証券、定期預金証書、営業保証金)及び保証による回収見込み額 | ・経営破綻:法的、形式的な経営破綻の事実が発生している債務者。破産、清算、会社更生法、民事再生法、手形交換所の取引停止処分、銀行取引停止処分 ・実質的に経営破綻:深刻な経営難の状態にあり再建の見通しが無い状態(例、多額の債務超過) ・1年基準が適用(通常は1年超) |
割引計算
- 現価係数:現在価値を求めるための割引計算に用いる係数。
- 年金現価係数:現価係数を必要な年数分合計したもの。
引当金
- 意義:将来支出される費用の見積計上を行う際の貸方項目であり、将来の支出額について、金額を見積額(見込額)により計上する場合に用いられる項目。未払費用と類似しているが、未払費用は将来の支出額について、契約等で金額が確定している場合(確定債務)に用いられる貸方項目。
- 引当金の仕訳:〇〇引当金繰入額 ××、〇〇引当金 ××
種類 | 概要 | PL表示 | BS上の分類(評価性、負債性) |
製品保証引当金 | 一定期間無償で修理。将来の修繕費用。 | 販管費、営業外費用 | 負債の部 (1年基準) 通常は固定負債 ・特別修繕引当金 ・退職給付引当金 ・役員退職慰労引当金 |
工事補償損失引当金 | 建設業等で完成した工事に対する将来の修繕費用 | ||
修繕引当金 | 当期の修繕を翌期に繰延。 | ||
特別修繕引当金 | 数年ごとに定期的に行う大規模な修繕 | ||
賞与引当金 | 翌期の賞与 | ||
退職給付引当金 | 将来の退職金 | ||
役員賞与引当金 | 翌期の役員賞与 | ||
役員退職慰労引当金 | 将来の退職慰労金。差額補充法 | ||
債務保証損失引当金 | 債務者に代わって将来弁済 | 損失性 (特別損失) | |
損害補償損失引当金 | 将来の賠償金の支払い | ||
売上割戻引当金 | 翌期の売上割戻 | 収益性控除 | |
返品調整引当金 | 翌期の売上返品による売上利益減少 | ||
貸倒引当金 | 将来の貸し倒れ | 費用性 | 資産の部 |
<賞与引当金>
- 支給対象期間基準(支給対象期間が定められている場合)
分類 | 内容 | 勘定科目 |
見込額(見積額) | 支給額が確定していない場合 | 賞与引当金(見込額を按分) |
確定額 | 支給額が支給対象期間に対して計算され、支給額が確定している場合 | 未払費用(確定額を按分) |
支給額が支給対象期間以外の基準(臨時的な要因、決算賞与等)に基づいて計算され、支給額が確定している場合 | 未払金(確定額の全額) |
<役員賞与>
前提 | 状況 | 勘定科目 |
定款の支給基準に基づき支給額を決定する場合 | 決算時点で確定債務 | 未払役員賞与 |
決算時点で支給額を見込みで計算し最終決定は、決算後の定時株主総会で図る場合 | 決算時点で見積債務 | 役員賞与引当金 ※定例株主総会で確定後は、勘定科目を未払役員賞与に振替。 |
<債務保証損失引当金>
- 保証先の経営破綻時:(借)債務保証損失引当金繰入額 (貸)債務保証損失引当金
- 債務不履行となり弁済:(借)破産更生債権等 (貸) 現金預金
- (借)債務保証損失引当金 (貸) 貸倒引当金
<引当金の注記>:引当金の計上基準は会計方針に該当。
- 賞与引当金:従業員に対する賞与支給に備えるため、翌期の支給見込額のうち当期負担額を計上している。
- 役員賞与引当金:役員に対する賞与支給額に備えるため、翌期の支給見込額のうち当期負担額を計上している。
- 退職給与引当金:従業員の退職給付に備えるため、当期末における退職給付債務に基づき当期末において発生していると認められる額を計上している。
- 役員退職慰労引当金:役員の退職慰労金の支給に備えるため、内規に基づく期末要支給額を計上している。
債権の分類・表示
分類 | 勘定科目 | 債権区分 | 表示区分 | 表示科目 | (表示) 貸倒引当金繰入額 | (表示) 貸倒損失 | (表示) 貸倒引当金戻入 |
営業債権 | 受取手形 売掛金 | 一般債権 貸倒懸念債権 (区分不要) | 流動資産 | 受取手形 | 販管費 | 販管費の繰入から控除、 又は 営業外収益 | |
売掛金 | |||||||
破産更生債権等 | 流動資産 | 破産更生債権等 | 原則、特別損失 | 原則、特別利益 | |||
投資その他の資産 | |||||||
営業外債権 | 貸付金 手形貸付金 営業外受取手形 未収(入)金 | 一般債権 貸倒懸念債権 (区分不要) | 流動資産 | 短期貸付金 短期営業外受取手形 未収(入)金 | 営業外費用 | 営業外費用の繰入から控除、 又は 営業外収益 | |
投資その他の資産 | 長期貸付金 長期営業外受取手形 長期未収(入)金 | ||||||
破産更生債権等 | 流動資産 | 破産更生債権等 | 原則、特別損失 | 原則、特別利益 | |||
投資その他の資産 |
※償却債権取立益は、全て営業外収益で表示。
有価証券の取得
有価証券の範囲:株式、債券(社債、国債、地方債)、新株予約権、コマーシャルペーパー、投資信託の受益証券、貸付信託の受益証券、その他
株式 | 社債 | |
概要 | 株式会社に対する細分化した出資 | 細分化した、会社の借入。取得者側から貸付。 |
特徴 | 期限はない。償還されない。 | 期限あり。償還される。 |
取得者 | 株主 | 社債権者 |
取得者の主な利益 | 配当金の受取(受取配当金)。株主総会での議決権。 | 利息の受取(有価証券利息)。満期に払い戻しを受ける。 |
有価証券の取得原価
- 購入による取得:購入対価+付随費用
- 払い込みによる取得:払込金額+付随費用
- 株式分割による取得:ゼロ(保有株数が増加するのみ)
※有価証券の取得に要する付随費用(手数料等)は有価証券の取得原価に算入する。
債券の利息
- 試験では利札の額は月割計算が一般的。
- 端数利息:売却日の直前の利払日の翌日から売買日までの日数に対応した利息。利払日以外の日に社債を購入する場合、端数利息を購入側が売却側へ立替払いをする。取得者側の有価証券利息の合計額は、当期の保有期間に対応する金額になる。
- 有価証券の売却:①支払手数料勘定を計上する、②売却損益に加減する方法がある。
分類 | 各取引 | (借) | (貸) |
購入側 | 取得時 | 有価証券 98 | 現金預金 100 |
有価証券利息 2 | |||
利息満期日 | 現金預金 6 | 有価証券利息 6 | |
決算時 | 未収有価証券利息 3 | 有価証券利息 3 | |
売却側 | 売却時 | 現金預金 100 | 有価証券 110 |
有価証券売却損 12 | 有価証券利息 2 |
有価証券の貸借対象表価額:保有目的により異なる。
名称 | 該当 | 勘定科目 | 補足 | 1年基準 | 表示科目 | 表示区分 | BS価額 |
売買目的有価証券 | 株式、債券 | 有価証券 | トレーディング部署が存在、または、売買を品パイに繰り返している | ー | 有価証券 | 流動資産 | 時価(時価法) |
満期保有目的の債券 | 債券 | 投資有価証券 | 取得当初から満期保有意図(変更不可) | あり | 投資有価証券、有価証券 | 投資その他の資産、流動資産 | 取得原価、償却現価 |
子会社株式・関連会社株式 | 株式 | 関係会社株式 | 定義に合致 | ー | 関連会社株式 | 投資その他の資産 | 取得原価 |
その他有価証券 | 株式、債券 | 投資有価証券 | 長期投資目的、業務提携目的、持合株式 | 債券のみ | 投資有価証券、有価証券(債券のみ) | 投資その他の資産、流動資産 | 時価(取得原価:市場価格ない株式) |
名称 | 売却損益 | 評価損益 | 補足 | ||
売買目的有価証券 | 勘定科目、表示科目:有価証券売却損・益(営業外損益) | 勘定科目:有価証券評価損益、表示科目:有価証券評価益、有価証券評価損 | 評価損益:切放法、洗替法の選択可。洗替は期首洗替仕訳必要。 | ||
勘定科目:有価証券運用損益、表示科目:有価証券運用損益。(受取配当金を含める場合もあり) | |||||
満期保有目的の債券 | 取得差額が金利調整 | 償却原価法 | 勘定科目、表示科目:投資有価証券売却益、投資有価証券売却損 | 特別損益 | |
取得差額が金利調整でない | 取得原価 | ||||
差額なし | |||||
子会社株式・関連会社株式 | 勘定科目、表示科目:関係会社株式売却損・益(特別損益) | 原価法。決算整理仕訳なし。 | |||
その他有価証券 | 株式、債券(1年超) | 勘定科目、表示科目:投資有価証券売却損・益(営業外損益、特別損益)。 | 原則、全部純資産直入法(下回る場合は▲表示)、例外、部分時価純資産直入法(下回る部分は当期損失、営業外費用)。評価差額は純資産の部、税効果適用。 | 時価法、洗替方式。 ・償却原価法適用の債券は、償却原価と時価との差額が評価差額(洗替)。 ・市場価格な株式⇒取得現価 | |
債券(1年以内) | 勘定科目、表示科目:有価証券売却損・益 |
償却原価法
- 仕訳:有価証券利息勘定で投資有価証券勘定を増減させる。
- 期間配分方法:①利息法(利息日ごと)、②定額法(決算整理)
利息法
利払日 | 期首簿価 | 実効利息 | 約定利息 | 償却額 | 期末簿価 |
1年末 | 916 | 37 | 10 | 27 | 943 |
2年末 | 943 | 38 | 10 | 28 | 971 |
3年末 | 971 | 39 | 10 | 29 | 1,000 |
- 実効利息:期首帳簿価格×実効利子率=クーポン+償却
- 償却額:実効利息-クーポン
- 仕訳:(借)現金 10、投資有価証券 27 / (貸)有価証券利息 37
- 最終年度の償却額は、端数処理の関係上、差額で算出。
- 利払いが年2回の場合⇒クーポン利率、実効金利率を半年分として計算。
有価証券の減損処理
- 定義:有価証券の時価等が著しく下落した場合に、一定の条件の下に時価評価が強制され、評価損を強制的に計上する処理。同評価損は当期の損失(特別損失)に計上。
- 対象:満期保有目的の債券(投資有価証券評価損)、子会社株式、関連会社株式(関係会社株式評価損)、その他有価証券(投資有価証券評価損)。売買目的有価証券は対象外。同損失は切り放し法。
分類 | 条件 | 補足 |
市場価格ある有価証券(株式・債券) | 時価が著しく下落(取得原価に比べ50%程度以上下落)したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理。 | 回復する見込みがない、回復する見込みが不明は、減損処理する。 時価評価 |
市場価格ない有価証券(株式、出資金) | 市場価格のない株式等については、発行会社の財政状態(1株当たりの純資産額)の悪化により実質価格(1株当たりの純資産額×所有株式数)が著しく低下(実質価額が取得原価に比べ50%程度以上低下)したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない(実価法) | 回復見込みが原則不問。 実価法で評価 |
損益会計総論
- 一定期間の企業の経営成績(または収益力)及び分配可能性を報告することを主たる目的。
- 目指すもの:利益の特質について、業績指標性と分配可能性の両立を図る。
- 現金主義会計:収益及び費用を現金収支の事実に基づいて認識する考え方。
- 長所:客観性と確実性あり。また、貨幣性資産の裏付けある利益が算出⇒分配可能性◎
- 短所:現金収支と損益発生の間に期間的ずれが生じる場合は、努力(費用)と成果(収益)が期間的に適切に対応しない。⇒業績指標性×
- 発生主義会計:収益及び費用を経済価値の増減(費消)事実の発生に基づいて認識する考え方。
- 経済価値:有形のものは「財貨」、無形のものは「用役」を意味する。「財貨又は用役」、「財貨又は役務」、「財貨又はサービス」は同義。
- 長所:努力(費用)と成果(収益)が適切に対応する。業績指標性◎
- 短所:客観性と確実性に欠ける。貨幣性資産の裏付けのない利益が算出。分配可能性×
- 費用認識:現金主義と発生主義の2つがあるが、企業会計原則では、費用の認識基準として原則的には発生主義を採用している。現金主義は例外。
- 収益認識基準:現金主義、発生主義、実現主義の3つあり。企業会計原則では、原則、実現主義を採用。
- 実現主義:実現主義とは、収益を、経済価値の実現という事実に基づいて認識する考え方をいう。「実現」とは、財貨又は用役が貨幣性資産に形を換えること。実現主義は業績指標性(最重要目標は販売で経営成果を適切に表す)と分配可能性(企業外部の相手方との取引に基づくので客観性と悪実性を備えている)とをバランスよく両立。
- 実現の要件:①財貨又は用役を相手方に引き渡すこと。②対価として貨幣性資産を受領すること。
収益の認識基準としての現金主義、発生主義、実現主義
- 現金主義:現金収入の事実に基づいて認識
- 発生主義:経済価値の増加事実に基づいて認識
- 実現主義:経済価値の実現という事実に基づいて認識
「費用収益対応の原則」の必要性
- 意義:期間収益と期間費用は因果関係によって対応づけるべきであるとする原則(業績指標性の観点)。経済活動の成果である収益と成果を得るための努力が費用であり、成果と努力を期間的に対応させることで、適正な期間損益計算を行う。
- 実現収益と発生費用との間には、計上時期に期間的ずれが生じる場合あるので、費用収益対応の原則で解決。
- 期間費用:発生費用のうちその期の収益に適切に対応させられたものだけ。
- 費用と収益の対応:収益の認識は条件が厳しく、収益の認識を実現の時期からずらすことはできないので、費用の認識を収益の認識時期に合わせる。
- 費用と収益の対応形態:①個別的対応:財貨を媒介をする収益と費用の直接的な対応(売上高と売上原価)。②期間的対応:会計期間を媒介とする収益と費用の間接的な対応(売上高と販管費)
- 収支額基準:収益は収入額、費用は支出額に基づいてそれぞれの額を決定する。「収支額」には、過去、現在、将来の額を含んでいる。
企業会計原則における損益計算の体系
- 損益法による利益計算をベースとし、発生主義、実現主義及び費用収益対応の原則を中心とした計算体系を形作る。
- 企業会計原則 第二、損益計算書原則の「損益計算書の本質」
- 損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用(⇒費用収益対応の原則)とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。
- すべての費用及び収益は、その支出及び収入(⇒収支額基準)に基づいて計上し、その発生した期間(⇒発生主義)に正しく割り当てられるように処理しなければならない。但し、未実現利益(⇒実現主義)は、原則として、当期の損益計算書に計上してはならない。
- 企業会計原則は、収益を実現主義により認識し、費用を発生主義により認識し、その後、費用収益対応の原則により期間費用を把握することで、期間利益を計算するという損益会計の体系となっている。
固定資産:①有形固定資産、②無形固定資産、③投資その他の資産
有形固定資産
- 固定資産のうち、営業活動のために使用するもので、具体的な形態を有するもの。
- 構築物:土地に定着している設備や工作物をいう。例えば、門、塀、橋、貯水池などが該当。鉄道の線路や枕木、道路のアスファルト舗装なども構築物に含まれる。
- 有形固定資産:①償却性資産:建物、構築物、機械装置、車両運搬具、工具器具備品、②非償却性資産:土地、建設仮勘定
取得形態 | 取得価額 | 補足 | |
購入 | 購入代金(値引・割戻控除)+付随費用 | ・複数資産の購入は、時価等の割合で配分 ・重要性ない場合、付随費用を費用処理可。 | |
自家建設 | 適正な原価計算基準に基づいて算定した製造原価 | 材料費、労務費、経費。借入資本利子で稼働前の期間に属するものは取得原価に算入可。 | |
交換 | 同種資産 | 提供した有形固定資産の適正な簿価 | 交換による損益は生じない。→投資の継続 |
異種資産 | 提供した異種資産の時価 | 交換損益生じる(売却)。但し、時価が判明しない場合は簿価→投資の清算(投資を清算、改めて時価で投資) | |
現物出資 | 取得した有形固定資産の公正な評価額 | 資本金組み入れ額は、原則、払込額全額。但し、1/2を資本剰余金に組み換え可。 | |
贈与 | 取得した有形固定資産の公正な評価額 | 受贈益を計上。 |
自家建設に要する借入資本の利子 | 論拠 |
原価算入説(容認) | 費用収益対応の原則:当該固定資産が収益の獲得に貢献していないので、費用のみ先に計上することは好ましくない。→減価償却で費用化すべき。 |
原価不算入説(原則) | ①利子は経済的便益を有していない(自己資金か借入資金かで取得原価が異なるべきでない)。 ②資金的結びつきが不明確。③利子の性質は財務費用→資産性の否定 |
内容 | 論拠 | 問題点 | |
支払対価説(不採用) | 取得原価はゼロとすべき。 | 取得に要した支払対価で測定されるべき。 | ・経済的便益を有するのが簿外資産とされるので、貸借対照表が適切な財政状態を表さない。 ・収益獲得に貢献しても減価償却による費用配分が行えず、適正な期間損益計算を行えない。 |
公平評価説(採用) | 取得原価は公正評価額とすべき。 | 資産の取得原価は経済的便益を表すものなので、公正な評価額とすべき。 | 貨幣資産の裏付けのない未実現利益が計上される。 |
減価償却
- 残存価額:会計理論上は、企業が適切に見積もるべきもの。税法によれば見積許さず、有形固定資産の残存価額は一律にゼロとすることになっている。
- 耐用年数:会計理論上は、企業が見積もるべきものですが、実務上は税法の法定耐用年数を用いることが多い。
- 減価償却の仕訳:①直接控除、②間接控除
分類 | 手法 | 特徴 | 計算方法 | 補足 |
期間配分 | 定額法 | ・減価償却費が毎期一定額 ・減価償却費の期間別負担が平均化 ・財務諸表の期間比較性が高い | 毎期均等額 | 会計上:(取得原価-残存価額)÷耐用年数 税法:取得原価×定額法償却率(残存価額ゼロ)。 |
定率法 | ・減価償却費が逓減する。 ・固定資産費用の期間別負担が平準化。 ・早期に多額の投下資金を回収 | 毎期期首未償却残高に一定率を乗じる | (取得原価-期首原価償却累計額)×定率法償却率。 会計上:残存価額がある場合の定率法 税法(200%定率法):残存価額がない場合の定率法(定額法の償却率を2倍)。耐用期間の途中から定額法い切り替わる。備忘1円残す(最終年度は差額計算) | |
級数法 | 毎期一定額ずつ減少 | (取得原価-残存価額)×期首の残存耐用年数/級数合計。月割計算は図を記載して計算。 | ||
生産高で配分 | 生産高比例法 | ・生産高(収益)とそのコスト(費用)が合理的に対応。 ・適用できる資産が限定 | ・総利用可能量が物理的に確定できる。 ・減価が利用に比例して発生する。 | (取得原価-残存価額)×当期利用量/総利用可能量。月割計算不要。 |
有形固定資産の売却・除却 | (借方) | (貸方) | |
売却 | 固定資産売却益、固定資産売却損(臨時的な取引、PL特別損益、損益項目の相殺不可) | 未収金 or 営業外受取手形 XX 減価償却累計額 ×× 減価償却費 ×× | 備品 ×× 固定資産売却益(表示科目) ×× |
除却 | 全額除却 | 減価償却累計額 XX 固定資産除却損 XX (特別損失) | 機械装置 XX |
保管 | 減価償却累計額 XX 減価償却費 xx 貯蔵品(処分価値) xx 固定資産除却損 xx | 機械装置 xx |
有形固定資産の買い換え:①旧資産を売却し、売却代金を受け取る。②新資産を購入し、その購入代金に旧資産の売却代金を充当し残高を支払う。
(借方) | (貸方) | ||
下取資産=時価 | 車両 120 | 車両 100 | 未払金:新車両(120)-下取価額(30) 売却損益:下取価額(30)-帳簿価額(25) |
減価償却累計額 60 | 未払金 90 | ||
減価償却費 15 | 固定資産売却益 5 | ||
下取資産>時価 | 車両 115 | 車両 100 | 新車両の値引=下取価額(35)-時価(30) 新車両の取得原価=120-値引(5) 未払金:新車両(120)-下取価額(35) 売却損益:時価(30)-帳簿価額(25) |
減価償却累計額 60 | 未払金 85 | ||
減価償却費 15 | 固定資産売却益 5 |
減価償却方法の変更と短縮
- 定率法→定額法:要償却額÷残存耐用年数
- 定額法→定率法:期首簿価×残存耐用年数に応じた減価償却率
- 耐用年数の変更(短縮):変更後の残存年数で償却
減価償却の理論
- 意義:費用配分の原則に基づいて、有形固定資産の取得原価をその耐用年数に渡って費用として配分すること。
- 目的:費用配分を行うことにより、適正な期間損益計算を行うことにある。
- 有形固定資産の価値の減少:費消量を直接的に把握できる場合は少なく、通常は、消費量を価値的に把握する。→価値の消費パターン(①毎期同程度の減価、②早期に多額の減価、③利用に比例し減価)に一定の過程を置いて行う。棚卸資産の価値の減少は、費消量を物量的に直接把握できる。
- 減価償却の効果:自己金融効果がある。資金を自ら企業内部に留保する効果。減価償却費は非資金費用であることから、貨幣性資産としての資金の流入を伴う収益のうち、減価償却費に相当する部分が資金として企業内部に留保される。
固定資産に係る支出:資本的支出・収益的支出
分類 | 概要 | 会計処理 | 補足 |
資本的支出 | 価値や性能を高める、耐用年数の延長をもたらす支出。 | 固定資産の取得原価に算入される支出(取得原価) | 改修・改良工事が資本的支出となる場合は、工事の引渡しを受けた時点 |
収益的支出 | 性能を維持する支出。価値や性能が低下したときに行う原状回復の支出。 | 支出時の費用となる支出(修繕費) |
耐用年数の延長を伴う工事の支出額
- 資本的支出と収益的支出に按分
- 資本的支出の額=工事の支出額×延長年数/工事後の残存耐用年数
- 収益的支出の額=工事の支出額×従来の残存耐用年数/工事後の残存耐用年数
資本的支出分の減価償却
- 本体とは別個のもの(避難階段の設置):新規取得と同様に減価償却を行う
- 本体と一体化したもの(建物の耐震工事):①本体と同一の減価償却方法→但し、新規取得と同様に減価償却を行う。②本体と同一の減価償却方法→本体の残存耐用年数で減価償却を行う。※本体の耐用年数延長ありの場合、本体の工事後の残存耐用年数を用いる。
圧縮記帳
- 国庫補助金や保険金等を受け入れて固定資産を取得した場合に、一定条件の下に、その固定資産の取得原価を減額(圧縮)する処理。圧縮記帳は税法上の制度であり、特定の利益に対して課税の繰り延べを図る取り扱い。
分類 | 借方 | 貸方 |
直接控除方式 | 現金預金 | 国庫補助金収入(特別利益) |
機械装置圧縮損(特別損失) | 機械装置 | |
積立金方式 |
無形固定資産:固定資産のうち、営業活動のために利用するもので、具体的な形態を持たないもの。取得原価には付随費用を加算する。無形固定資産は費用性資産であり、費用配分は減価償却により行う。
分類 | 例 | 補足 |
償却性資産 | 特許権、商標権、鉱業権、のれん、ソフトウエア | 残存価額はゼロ。原則、定額法。鉱業権は生産高比例法。のれんは20年以内で償却。 直接控除法のみ(販管費) |
非償却性資産 | 借地権、電話加入権 |
- 減価償却方法:年数の経過によって価値減少の度合いが変わるわけではない。鉱業権を除き、適切な期間損益計算の見地から定額法で償却すべき。
投資その他の資産
- 定義:固定資産のうち、投資目的等、営業目的以外の目的で、長期間使用または保有する資産。有形固定資産・無形固定資産に該当しない長期性の資産。
- 固定資産のうち、利殖(長期性預金、長期貸付金、投資有価証券、投資不動産)、他企業の支配(子会社株式、関連会社株式)、取引関係の維持(投資有価証券、業務提携目的など)、その他資産(長期前払費用、破産更生債権等)などを目的として、長期間保有する資産であり、有形固定資産や無形固定資産に該当しない長期性の資産が含まれる。
- 具体例、投資有価証券、関係会社株式、長期貸付金(返済日までが1年超)、長期性預金(満期日までは1年超)、投資不動産、長期前払費用、破産更生債権等(回収見込みが1年超)
- 投資不動産(投資土地、投資建物):投資目的で保有する不動産。主たる営業目的以外の目的。減価償却費は営業外費用。
減価償却累計額のBS表示方法 | 補足 | |
間接控除方式 | 科目別控除方式(原則) | 資産勘定から△ |
一括控除方式 | ||
直接控除方式 | 科目別控除方式 | 科目別注記方式、一括注記方 式 <貸借対照表に関する注記> 有形固定資産の減価償却累計額:建物〇〇千円、備品〇〇千円 |
一括注記方式 |
減価償却のPL表示 | 表示区分 | 表示科目 |
有形固定資産の減価償却費 | 販管費 | 減価償却費 |
無形固定資産の減価償却費 | 〇〇権償却 | |
投資不動産の減価償却費 | 営業外費用 | 投資不動産減価償却費 |
固定資産に係るPL表示 | 表示区分 | 表示科目 |
固定資産の売却益 | 特別利益 | 固定資産売却益 |
固定資産の売却損 | 特別損失 | 固定資産売却損 |
固定資産の除却損 | 特別損失 | 固定資産除却損 |
国庫補助金収入 | 特別利益 | 国庫補助金収入 |
固定資産の圧縮損 | 特別損失 | 固定資産圧縮損 |
固定資産に関する個別注記表の注記事項
- 重要な会計方針に係る事項に関する注記:①固定資産の減価償却の方法
固定資産の減価償却の方法
(1)有形固定資産:建物・・・定額法、備品・・・定率法
- 貸借対照表に係る注記:①固定資産を担保に供している場合(イ:資産が担保に供されていること、ロ:担保に供されている資産の内容及びその金額、ハ:担保に係る債務の金額)。②減価償却累計額を直接控除した場合:固定資産の種類ごとに直接控除した減価償却累計額の金額を記載。
資産会計:①資産取得時の取得原価と決算時の貸借対照表価額(取得原価、時価、割引現価)を決定。②資産を費消した部分(PL)と残存部分(BS)とに分ける。
資産概念
- 静態論(換金価値)と動態論(未解消項目)
- 企業資本の運用形態:資産は企業資本の運用形態、負債と純資産は企業資本の調達源泉
- 企業資本の循環過程:投下過程(原材料、仕掛品、製品、固定資産)、回収過程(売掛金、受取手形)
- 用役潜在力(将来、企業にキャッシュフローをもたらす能力)、キャッシュの獲得に貢献する経済的便益を持つもの。
分類の観点 | 基準 | 分類 | 分類の利用 |
財務流動性の観点→債務弁済能力を把握 | 正常営業循環基準、1年基準(例、未払金・前払費用) 但し、繰延資産は別扱い) | 流動資産、固定資産、繰延資産 | 貸借対象表の表示 |
損益計算の観点 | 費用になるか否か 企業資本の循環過程 | 貨幣性資産(回収過程→回収可能額評価)、費用性資産(投下過程→取得原価) | 評価方法(評価額の決定) |
資産の評価
- 資産の取得時、消費時、決算時に資産を評価する。
- 評価方法:取得原価(過去)、時価(現在)、割引現在価値(将来)の三つ。企業会計原則は、原則として取得原価。
- 取得原価主義:資産を取得原価に基づいて評価する考え方
- 時価主義:資産を時価に基づいて評価する考え方
- 割引現価主義:資産を割引現在価値に基づいて評価する考え方
論拠 | 問題点 | 長所 | |
時価主義 | 貸借対照表には期末時点の企業の経済実態を反映させるべきである。 | ・客観性と確実性に欠ける。資産の評価額が主観的になりやすい。 ・実現主義に反する。評価益という未実現利益が計上される。 | ・操業損益と保有損益が区別できる。→収益と費用の同一価額水準での対応が可能(販売時点の価格)。 ・投資家に有用な情報を提供できる。 |
割引現在価値主義 | 資産の本質を用役潜在力、経済的便益とすれば、資産の本質と資産評価とが将来のキャッシュフローに関連づけられる。 | ・客観性と確実性に欠ける。将来キャッシュフローの予測や割引率の決定に主観的判断が介入しやすい。 | |
取得原価主義 | 実際に支払われた現金及び現金同等額の金額 | ・操業損益と保有損益が混在する。 ・経済的実体が反映されない。 ・取得原価主義と実現主義は表裏一体。ともに未実現利益を排除。 | ・分配可能性:投下資本の回収余剰としての分配可能利益の算定に資する。未実現利益の計上を排除し、貨幣的裏付のある分配可能利益の算定に資する。 ・客観性と確実性:取得原価は外部との取引によるもの。 |
費用配分の原則:
- 費用性資産の取得原価を当期の費用と次期以降の費用とに配分すること。
- 費用化を費用配分の原則で説明する必要があるのは費用性資産の支出額のみ。現在の支出額や将来の支出額の費用化は費用配分として考える事もできる。
費用配分:目的は、適正な期間損益計算のため。
- 費用性資産の取得原価を費用事実の発生に基づいて費消部分を当期の費用、未消費分を次期以降の費用として配分することで、適正な期間損益計算を達成する。
- 費用性資産は、支出時点と費用化時点に期間的なずれが生じることから費用配分の原則による調整が必要。
繰延資産
- 定義:既に代価の支払い完了し、又は支払義務が確定し、これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来に渡って発現するものと期待される費用を、その効果が及ぶ数機関に合理的に配分するため、経過的に貸借対照表上資産として計上したものをいう。→経過的に貸借対照表の資産の部に記載することができる。
- 企業会計原則注解15:将来の期間に影響する特定の費用について:「将来の期間に影響する特定の費用」とは、既に代価の支払いが完了し、又は、支払義務が確定し、これに対する役務の提供を受けたにもかかわらず、その効果が将来にわたって発現するものと期待される費用をいう。これらの費用は、その効果が及ぶ数期間に合理的に配分するため、経過的に貸借対照表価額上、繰延資産として計上することができる。
- 繰延の根拠:効果の発現という事実及び収益との対応関係を重視して、適正な期間損益計算を行うことにある。
- 繰延資産の資産性:将来の収益に貢献する要因となるものであるため、資産性が認められる。但し、既に役務の提供を受けたものなので、換金価値はなく財産性を有していない。
- 繰延資産の資産計上の問題点:①財務健全性の観点(換金価値のない擬制資産)、②効果の発言の不確実性(将来の効果の発現を予測することは大きな不確実性を伴う)
- 減損処理:支出の効果が期待されないことが明らかとなった場合は、その時点で未償却残高を一時に償却する。
- 重要な会計方針に係る事項に関する注記(その他、計算書類の作成のための基本となる重要な事項)→費用処理か資産計上かを必ず記載。資産計上の場合は、償却方法も記載。
繰延資産の処理方法
- 株式交付費は、株式交付のときから3年に渡り定額法により償却している。
- 開発費は、支出時に全額費用処理している。
- 社債発行費は、社債償還期間(4年間)にわたり定額法により償却している。
項目 | 原則 | 容認 | 償却方法 | 償却年限 |
創立費 | 支出時に営業外費用に計上 開業費は販管費も可 | ・繰延資産に計上 ・決算時:(借)〇〇償却費 / (貸)〇〇費 ・直接控除法のみ | 定額法 | 5年 |
開業費 | ||||
株式交付費 | 3年 | |||
社債発行費等(社債発行費) | 原則:利息法 容認:定額法 | 償還期限内 | ||
社債発行費等(新株予約権発行費) | 定額法 | 3年 | ||
開発費(市場開拓費等、経常的でない) | 支出時に販管費又は売上原価 | 5年 |
棚卸資産
- 棚卸資産は、費用性資産であり、費用配分の原則が適用される。
- 費用性資産:企業資本の投下過程にあり、販売され又は費消されて費用化される資産。棚卸資産は、費消量が物量的に把握できる点に特徴がある→費消量と単価を掛け算する。
- 取得原価の決定:①購入品=購入対価(送り状価額-値引・割戻)+付随費用、②生産品=適正な原価計算基準に従った製造原価
- 付随費用を取得原価に含める理由:収益費用対応の原則。収益との対応を図ることで適正な期間損益計算を行うことができる。
- 費用配分:①数量(継続記録法、棚卸計算法)×単価(個別法、先入先出法、後入先出法(採用不可)、平均原価法)
- 期末評価:①原価法、②低価法(会計基準では採用不可
- 定義:棚卸資産とは、主として、企業がその営業目的(販売目的、製造目的)を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産。①通常の販売目的で保有する棚卸資産、②トレーディング目的で保有する棚卸資産(売買目的有価証券と同様の会計処理)
- 通常の販売目的で保有する棚卸資産:取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額とする。この場合において、取得原価と当該正味売却価額との差額は当期の費用として処理。
- 正味売却価額:売価(購買市場と売却市場とが区別される場合における売却市場の時価)から見積追加製造原価及び見積販売直接経費を控除したもの。
- 簿価切り下げの目的:収益性が低下した場合における簿価切下げの目的は、取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないようにすること。
- 収益性の低下:投下資本の額よりも、回収可能価額が小さくなっている。すなわち、棚卸資産から得られる将来CFの減少。取得原価(投下資本)>正味売価価額(回収可能価額)という状態。
- 「回収可能性を反映させる」:収益性の低下部分を評価損として計上することで、切下げ後の帳簿価額が回収可能価額を示すことになる。(固定資産の減損と考え方類似)。
- 収益性の低下による帳簿価額の切り下げは時価評価ではないのか:収益性の低下による簿価の切下げは、取得原価基準の下で行われる原価配分の手続きであり、時価評価ではない。ここでいう取得原価基準とは、取得原価のうち回収可能な原価だけを繰り越そうとする考え方。この考え方によれば、収益性の低下による簿価の切下げは、取得原価のうち収益性の低下により失われた経済的便益を回収不能な原価であるとして、それを当期の費用に配分する手続き。
- 帳簿価額を正味売却価額と比較する理由:棚卸資産の場合には、通常、販売によってのみ資金の回収を図る点に特徴がある。このような投資の回収形態の特徴を踏まえると、評価時点における資金回収額を示す棚卸資産の正味売却価額が、その帳簿価額を下回っているときには、収益性が低下していると考えることになる。(参考)有形固定資産は、使用(使用価値)又は売却(正味売却価額)。
- 収益性低下の簿価切下げ額の表示:売上原価とするが、棚卸資産の整合に関連し不可避的に発生すると認められるときには、製造原価として処理する。また、臨時の事象に起因し、かつ、多額であるときには、特別損失に計上する。
- 収益性の低下による簿価切下げ額を売上原価とする理由:販売活動を行う上で不可避的に発生したものであるため、売上高に対応する売上原価として扱うことが適当と考えられる。
範囲 | 内容 |
商品、製品 | 通常の営業過程において販売するために保有する財貨又は用役 |
仕掛品、半製品 | 販売を目的として現に製造中の財貨又は用役 |
原材料 | 販売目的の財貨又は用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨 |
事務用消耗品 | 販売活動及び一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨 |
払出数量の計算方法
方法 | 内容 | 長所 | 短所 |
継続記録法(原則) | 棚卸資産の種類ごとに、受入、払出のつど数量を継続的に記録し、当該帳簿記録から当期払出数量を計算する方法。単価の高いもの。 | 払出数量:正確な費消量を計算可。 期末棚卸数量:在庫数量を常時把握可、在庫管理に有効、実態棚卸併用で棚卸減耗数量を把握可 | 払出数量:事務的に手数を要する。 |
棚卸計算法(容認) | 払出数量を払出の都度は把握せず、期末に実地棚卸を行って実際棚卸数量を確定し、これに基づいて当期払出数量を一括計算する方法。単価の安いもの。 | 払出数量:事務的に簡便。実地棚卸数量に基づき差額で計算。 期末在庫数量:在庫数量を確実に把握できる。 | 払出数量:費消量に棚卸減耗が混入するので正確な払出数量が把握できない。 期末在庫数量:在庫数量を必要に応じて把握するのは容易でない。 |
払出単価の計算方法(評価方法)
方法 | 内容 | 長所・短所 |
個別法 | 取得原価の異なる棚卸資産を区別して記録し、その個々の実際原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法。個別法は、個別性が強い棚卸資産の評価に適した方法(例、貴金属、宝石、不動産等、大量仕入品には適さない) | 長所:棚卸資産の実際の流れとその原価の流れが完全一致短所:払出品の恣意的な選択による利益操作が可能。 |
先入先出法 | 最も古く取得されたものから順次払出しが行われ、期末棚卸資産は最も新しく取得されたものからなるとみなして期末棚卸資産の価額を算定する方法。 | 長所:期末棚卸資産が期末の時価に近い価額になる。期末の経済実態を反映。 短所:価格変動時には売上高と売上原価が同一価格水準で対応せず、期間損益の中に保有損益が混入する。 |
後入先出法 | 後に受け入れたものから先に払い出されると仮定して払出単価を決定する。「棚卸資産の評価に関する会計基準」、2008年の改正により廃止。 | 長所:価格変動時には、売上高と売上原価とが同一価格水準で対応し、利益額から保有損益を排除できる。 短所:価格変動時には、期末棚卸資産の価額が、期末の時価と大幅に乖離する。 |
平均原価法(総平均法) | 取得した棚卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法。 価格の変動を中和化する効果あり。 | 長所:事務的に簡便。 短所:期間末まで単価が判明しない。 |
平均原価法(移動平均法) | 長所:単価が随時判明。 短所:事務的な手数を要する。 | |
売価還元法 | 値入率等の類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、原価率を乗じて求めた金額を期末棚卸資産の価額とする方法。売価還元法は、取得品種の極めて多い小売業等の業種における棚卸資産の評価に適用される。 |
棚卸資産の評価基準
方法 | 内容・補足 | |
原価法 | 期末棚卸資産の貸借対照表価額を取得原価に基づいて算定する方法。低下法と類似した処理が容認。 | |
時価法 | 販売目的の棚卸資産には相応しくない。時価の変動により利益を得る目的で保有せず、販売により投下資金を回収するのが目的。 | |
低価法 | 期末棚卸資産の貸借対照表価額を原価と時価のいずれか低い方で評価。①保守主義の観点、②回収可能価額を示すことが有用な情報適用(期末時点の換金価値、債務弁済能力)であったが、「棚卸資産の評価に関する会計基準」後は認められず。 | 低下法:適正な期間損益計算を歪める。 ・本来、当期の実現収益に棚卸資産の原価を対応されることが必要だが、時価評価(評価損)により一期間の損益が他の期間に帰属すべき損益により歪められる。 |
負債会計
- 静態論における負債:確定債務
- 動態論における負債:未解消項目または確定債務のほか計算犠牲的負債を含む。
- 法的負債説:負債とは法的負債(確定債務と条件付債務)
- 消極財産説:負債は積極財産たる資産から控除されるべき財産である。
- 他人資本説:負債は株主以外の第三者(債権者)から調達された資本。
<負債の分類>
分類の観点 | 分類 | 特徴 | 評価額 | 静態論/動態論 |
財務流動性の観点から | 流動負債 固定負債 | ・債務弁性能力を把握可。 ・正常営業循環基準(買掛金、支払手形、前受金)、1年基準 | NA / NA | |
法定債務性の観点から | 法的債務:確定債務 例、支払手形、買掛金、借入金、前受金、未払金、社債 | ・確定債務:①履行の期日、②相手方、③金額のすべてが既に確定している債務 | 債務額、現金受入額(前受金) | 負債/負債 |
法的債務:条件付債務 例、退職給付引当金、製品保証引当金 | ・条件付債務:3つの要件の内、1つ以上が未確定。 | 賞与引当金、退職給付引当金 | ×/負債 | |
非債務:計算犠牲的負債(会計的負債)例、修繕引当金 | 債務性のない負債(任意) | 修繕引当金 | ×/負債 |
引当金
- 意義:将来の特定の費用または損失の見積額のうち、当期の負担に属する金額を見越計上したときの貸方項目をいう。
- 設定目的:当期の収益に対応する将来の費用を当期に負担させることで、適正な期間損益計算を行うことにある。
- 引当金の計上要件(注18):将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
- 引当金計上の4要件:①将来の特定の費用または損失、②その発生が当期以前の事象に起因(当期の収益獲得に貢献又は当期の取引や契約が原因で、将来に費用・損失が生じる)③発生の可能性が高い(ほぼ確実に発生する)、④その金額を合理的に見積もることができる。
引当金の計上根拠 | 分類 | 補足 |
費用性引当金の計上根拠 | 費用収益対応の原則 | 当期の収益獲得に貢献した費用は、左記原則により当期の費用として認識。 |
原因発生主義 | 「発生」の意味に、経済価値費消事実の発生みならず、経済価値費消の原因事実の発生も含める考え方。 | |
損失性引当金の計上根拠 | 保守主義 | 企業財政の健全化のために保守主義を根拠として設定。 |
偶発債務:現実の債務ではないが、将来負担する可能性もある債務をいう。具体例、①手形の裏書・割引をした場合に、将来手形の支払人に代わって弁済する可能性。②他人の債務の保証人となった場合に、将来債務者に代わって弁済する可能性。③係争事件に関連し、将来損害賠償義務を負う可能性。
- 注記が必要:企業にとって将来の財政状態や経営成績に重大な影響を及ぼす恐れがあるため。
偶発債務と引当金の比較 | 負債性引当金 | 偶発債務 | |
共通点 | 発生の対象 | 将来の費用・損失 | |
原因事象 | 当期以前の事象 | ||
相違点 | 発生の可能性 | 高い | 低い |
見積可能性 | 可能 | 不能 | |
開示 | 貸借対照表の負債の部 | 注記 |
普通社債:
- 発行会社:債務「社債」、利息の支払「社債利息」
- 社債権者:債券「有価証券又は投資有価証券」、利息の受取「有価証券利息」
勘定科目 | 分類基準 | BS・PL区分 | BS・PL科目 | BS価額 |
社債 | 一年基準 | 流動負債 | 一年以内償還社債 | 額面額、償却原価 |
固定負債 | 社債 | |||
未払社債利息 | - | 流動負債 | 未払費用 | |
社債利息 | 営業外費用 | 社債利息 (社債利用期間に対応する額) | 利払日と決算日がずれている場合。未払費用も可。 | |
社債償還益 | 特別利益 | 社債償還益 | ||
社債償還損 | 特別損失 | 社債償還損 |
社債の貸借対照表価額
- 支払手形、買掛金、借入金、社債その他の債務は、債務額をもって貸借対照表価額とする。
- 但し、社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。社債発行時は、取得差額が金利調整と判断可能。取得側では転売もケースもあるので、取得差額が金利調整課の確認が必要。
- 償却原価法:社債利息勘定と社債勘定で仕訳を計上。
- 取得差額の期間配分方法:①利息法(原則):利払日毎に行う。、②定額用(容認):決算整理として行う。
- 利息法:実効利息=期首帳簿価額×実効利子率、償却額=実効利息-クーポン
償却原価法 | (借) | (貸) |
仕訳例 | 社債利息 38 | 現金預金 10 |
社債 28 |
社債の償還
分類 | 種類 | 内容 |
定時償還 | 満期償還 | 満期日(償還期日)に社債全額を一括して償還する方法 |
抽せん償還 | 一定期間ごとに一定額ずつ分割で償還する方法 | |
臨時償還 | 買入償還(買入償還) | 自社の社債を市場価額で買い入れて消却する方法 |
繰上償還 | 満期日(償還期日)を繰り上げて償還する方法 |
買入償還(定額法) | (借方) | (貸方) |
当期分の償却 | 社債利息 | 社債 |
買入償還 | 社債(適正な簿価) | 現金預金 |
社債償還損(特別損失、営業外費用) | 社債償還益(特別利益、営業外収益) | |
端数利息(直前の利払日の翌日から買入日までの利息) | 社債利息 | 現金預金 |
買入償還(利息法) | (借方) | (貸方) |
当期の償却 | 社債利息 :実効利息 | 現金預金 :約定利息 社債 :差額 |
買入償還 | 社債 | 現金預金 |
社債償還益 |
抽せん償還
- 利用金額比例法:各年度の社債の利用金額に比例した償却額を計上する方法(=級数法)
一連の仕訳 | (借方) | (貸方) |
発行時 | 現金預金 | 社債 |
定期償還 | 社債利息 | 社債 |
社債 :額面と同額 | 現金預金 |
資本の分類
貸借対照表の自己資本 | 分類 | 会計上の分類 (源泉別) | 会社法上の分類 (分配可否別) |
資本金 | 資本金 | 払込資本 | 分配不可 |
資本剰余金 | 資本準備金 | ||
その他資本剰余金 | 分配可 | ||
利益剰余金 | 利益準備金 | 留保利益 | 分配不可 |
その他利益剰余金 | 分配可 |
会計上の分類 (情報開示、投資家から強い要請) | 源泉別(払込資本と留保利益の区分を重視) | 内訳項目 |
自己資本 | 払込資本 | 資本金 |
利益剰余金 | ||
留保利益 | 利益剰余金 |
会社法上の分類 (債権者保護の観点) | 分配可否別分類 (維持すべき部分、分配可能な部分) | 内訳項目 |
自己資本 | 分配不可 | 資本金 |
準備金 | ||
分配可 | 剰余金 |
純資産の部
株主資本 | 資本金 | 内訳 | 補足 | |
資本剰余金 | 資本準備金 | 株主から払い込まれた出資額のうち、会社法の定めにより積み立て強制 | ||
その他資本剰余金 | 株主から払い込まれた出資額のうち、資本金となっていない部分 | |||
利益剰余金 | 利益準備金 | 株主から払い込まれた利益のうち、会社法の定めにより積み立て強制 | ||
その他利益剰余金 | 〇〇積立金 | |||
繰越利益剰余金 | △もあり 会社が獲得した利益のうち、まだ外部へ流出していない部分 | |||
自己株式 | 常に△ | |||
各項目 評価・換算差額等 | その他有価証券評価差額金 | △もあり 資産・負債の時価評価により評価差額を損益計算書に計上せず、それが実現するまで純資産の部に計上 | ||
繰延ヘッジ損益 | △もあり | |||
土地評価差額金 | ||||
株式引受権 | ||||
新株予約権 |
株式の発行
- 原則、払込額の全額を「資本金」とする。
- 容認、払込金額の2分の1を超えない額を資本金としないことができる(例、資本準備金)。資本金が多い事による税金増加等のデメリット回避。
株主資本の計数の変動
- 定義:株主総会の決議等により、株主資本内部の項目間の振替をする。但し、払込資本と留保利益の垣根を超えるような振替は原則として認められない。
減少/増加 | 資本金 | 資本準備金 | その他資本剰余金 | 利益準備金 | 任意積立金 | 繰越利益剰余金 |
資本金 | NA | 〇 | 〇 | × | × | × |
資本準備金 | 〇 | NA | 〇 | × | × | × |
その他資本剰余金 | 〇 | 〇 | NA | × | × | × |
利益準備金 | 〇 | × | × | NA | × | 〇 |
任意積立金 | × | × | × | × | NA | 〇 |
繰越利益剰余金 | 〇 | × | × | 〇 | 〇 | NA |
- 任意積立金:株主総会の決議により、会社の意思で任意に積み立てる利益の留保分。積立は、繰越利益剰余金から行う。また、取崩しは繰越利益剰余金に戻る。
任意積立金の例 | 内容 |
新築積立金 | 将来の建物の建設に備えるための留保利益の積立額 |
別途積立金 | 特定の使途をもたない留保利益の積立額 |
欠損填補積立金 | 将来の欠損に備えるための留保利益の積立額 |
配当平均積立金 | 将来の配当原資を確保するための留保利益の積立額 |
剰余金の配当
- 会社の純資産のうち「剰余金」部分から株主へ支給する金銭等をいう。
- 剰余金の配当は、会社法の規定に従って行われる。株主総会の決議を経れば、事業年度中に随時行うことができる。
- 中間配当:取締役会の決議で行う事のできる配当。取締役会を設置している会社は、定款に定めておけば1事業年度の途中において1回に限り、取締役会の決議により剰余金の配当をすることができる。配当に必要は決議は、配当基準日から3ヵ月後までに行う。
- 配当原資は、その他資本剰余金、その他利益剰余金のみ。〇〇積立金は取り崩せば配当可。
種類 | 借方 | 貸方 |
繰越利益剰余金からの配当 | 繰越利益剰余金 | 未払配当金 |
未払配当金 | 現金預金 | |
繰越利益剰余金 | 利益準備金 | |
その他資本剰余金からの配当 | その他資本剰余金 | 未払配当金 |
未払配当金 | 現金預金 | |
その他利益剰余金 | 資本準備金 |
配当財源の制約
- 会社法は、債権者保護の観点から剰余金の一部を準備金として残すことを要求。
- 準備金積立額の計算:準備金の合計額が資本金の4分の1に達すまでは(資本金×1/4 – 準備金合計額)、配当の都度、配当額の10分の1を準備金として積み立てることを要求。準備金は資本金の4分の1を超えない範囲で積み立てる。
- 繰越利益剰余金とその他資本剰余金から同時に配当した場合の準備金の積立額:準備金の積立額に各々の配当額の割合を乗じて、利益準備金、資本準備金の額を計算する。
損失処理
- 繰越利益剰余金のマイナス残高(借方残高)を他の純資産項目により補填すること。但し、損失は必ずしも一度に全額を処理する必要はない。将来の利益で補填することも可能。
自己株式の取得理由
- 株価対策(自社株の流通量を減らすことで、株価上昇を期待)
- 利益還元策(自己株式は配当の対象から除外される)
- 企業再編の対価として利用(発行済株式数を増やしたくない)
- 敵対的買収の防衛策(株の買い占め対応)
自己株式において制限される主な権利
- 株主総会の議決権なし
- 配当請求権なし
- 残余財産の分配なし
- 新株式の割り当てを受けられない
(借方) | (貸方) | 補足 | |
自己株式取得時の会計処理 | 自己株式 | 現金預金 | 取得原価を株主資本の末尾にマイナスを付して控除 |
自己株式の取得に関する付随費用 | 支払手数料 | 現金預金 | 営業外費用 |
自己株式の処分 | 現金預金 | 自己株式 その他資本剰余金 | 新株発行と経済的実体は同じ。 処分差益は、「その他資本剰余金」の増加 |
自己株式の処分 | 現金預金 その他資本剰余金 | 自己株式 | 処分差損は「その他資本剰余金」の減少 |
自己株式の処分に要した付随費用 | 株式交付費 | 現金預金 | 原則:営業外費用 容認:繰延資産(3年以内に償却) |
株式交付費償却 | 株式交付費 | ||
自己株式の消却 | その他資本剰余金 | 自己株式 | 消却分の帳簿価額 |
支払手数料 | 現金預金 | 付随費用は営業外費用 | |
その他資本剰余金の負の残高 | 繰越利益剰余金 | その他資本剰余金 | 「その他資本剰余金」の負の残高を翌期へ繰越てはならない。→期末に補填。 |
自己株式処分と新株発行の併用(処分差益) | 現金預金 | 自己株式 その他資本剰余金 | 処分差益は「その他資本剰余金」の増加 |
現金預金 | 資本金 | 募集株式の払込金額総額は株数の割合で按分 | |
自己株式処分と新株発行の併用(処分差損) | 現金預金 自己株式処分差損 | 自己株式 | 処分差損分だけ資本金が減少(新株発行の対価から控除) |
現金預金 | 自己株式処分差損 資本金 | ||
自己株式処分と新株発行の併用(処分差損>新株発行対価) | 現金預金 自己株式処分差損 | 自己株式 | 新株発行対価を超える部分は「その他資本剰余金」として処理 |
現金預金 その他資本剰余金 | 自己株式処分差損 |
新株予約権の処理 | (借方) | (貸方) | 補足 |
新株予約権発行時 | 現金預金 | 新株予約権 | |
新株予約権の発行に係る諸費用 | 新株予約券発行費 | 現金預金 | 原則、営業外費用 容認、繰延資産(3年以内に償却) |
権利行使時 (新規発行) | 新株予約権 | 資本金 | 新株予約権の発行時と行使時の払込金合計額 |
現金預金 | 資本準備金 | ||
権利行使時 (自己株式処分) | 新株予約権 | 自己株式 | |
現金預金 | その他資本剰余金 | ||
新株予約権の失効時 | 新株予約権 | 新株予約権戻入益 | 特別利益 |
新株予約権付社債の処理 | (借方) | (貸方) | 補足 | |
転換社債側(代用払込・一括法) | 発行時 | 現金預金 | 社債 | 社債計上額と社債額面が異なる場合、原則、償却原価法を適用。(借)社債利息(貸)社債 |
権利行使時 | 社債 | 資本金 資本準備金 | ||
転換社債側(代用払込・区分法) | 発行時 | 現金預金 | 社債 新株予約権 | 社債計上額と社債額面が異なる場合、原則、償却原価法を適用。(借)社債利息(貸)社債 |
権利行使時 | 新株予約権 社債 | 資本金 資本準備金 | ||
その他の新株予約権付社債(金銭払込・区分法) | 発行時 | 現金預金 | 社債 新株予約権 | 社債計上額と社債額面が異なる場合、原則、償却原価法を適用。(借)社債利息(貸)社債 |
権利行使時 | 新株予約権 現金預金 | 資本金 資本準備金 | ||
その他の新株予約権付社債(代用払込・区分法) | 発行時 | 現金預金 | 社債 新株予約権 | 社債計上額と社債額面が異なる場合、原則、償却原価法を適用。(借)社債利息(貸)社債 |
権利行使時 | 新株予約券 社債 | 資本金 資本準備金 |
純資産会計基準
- 貸借対照表:資産の部、負債の部及び純資産の部に区分し、純資産の部は、株主資本(株主に帰属するものである資本)と株主資本以外(評価・換算差額等、株式引受権、新株予約権→株主に帰属していない)の各項目に区分する。
- 株主資本:資本金、資本剰余金、利益剰余金に区分。株主資本の区分は、払込資本(維持拘束性を特質)と留保利益(分配可能性を特質)の区分(発生源泉別)がベースとなっている。
- 純資産の部:資産、負債に該当しないもの。資産性・負債性:概念フレームワークに示された資産・負債の定義を満たし、かつ、財務報告の目的に適合すること。
- 株主資本を払込資本と留保利益に分類する理由:資本の発生源泉別の分類することが情報開示の面で従来か強い要請あったから。
- 純利益と株主資本の関係:日本では包括利益よりも純利益を重視。純利益の情報は長期にわたって投資家に広く利用されており、その有用性は投資家から支持されている。純利益を生み出すのは、純資産のうち株主資本であるので、株主資本と純利益の関係が重視される。
- 株主資本と株主資本以外の各項目とを区分する理由:財務報告における情報開始の中で、特に重要なのは、投資の成果を表す利益の情報であり、報告主体の所有者に帰属する当期純利益と、これを生み出す投資の正味ストックとしての株主資本は重視される。このため、純資産を株主資本と株主資本以外の各項目とに区分する。
- 株主資本と当期純利益の連携(クリーン・サープラス関係):純資産を株主資本と株主資本以外の各項目に区分することで、損益計算書における当期純利益の額と貸借対照表における株主資本の資本取引を除く当期変動額は一致する(クリーン・サープラス関係が維持できる)。
- 評価・換算差額等を純資産の部に記載する理由:資産性及び負債性をもたないので純資産の部に記載される。
- 評価・換算差額等を株主資本と区別する理由:払込資本でなく、かつ、未だ当期純利益に含められていない(株主に帰属するものではない)ことから、株主資本とは区別する。
- 新株予約権を純資産の部に記載する理由:返済義務のある負債でなく、負債の部に表示することは適当ではないため。
- 新株予約権を株主資本と区別する理由:報告主体の所有者である株主とは異なる新株予約権者との直接的な取引によるものであり、株主に帰属するものではないため、株主資本とは区別する。
- 資本剰余金と利益剰余金の混同禁止:資本剰余金の利益剰余金への振替は原則として認められない。理由:払込資本と払込資本を利用して得られた成果を区分することが困難になる(発生源泉分類を重視)例外:①利益剰余金が負の残高のときにその他資本剰余金で補填(繰越利益剰余金がマイナス残高の場合、まずは利益準備金、任意積立金等の他の留保利益で補填する。しかし、他の留保利益が既にゼロの場合、その他資本剰余金で補填)。②その他資本剰余金が負の残高のときに利益剰余金で補填。
- 利益剰余金が負の残高の場合のその他利益剰余金での補填:実質的には払込資本への食い込みを意味し、同食い込みを事実として認識する意味でも、その他剰余金での補填が認められ、混同にあたらない。
自己株式
- 自己株式の考え方(資産説):株式は失効しておらず、他の有価証券と同様に換金性ある会社財産とみて、自己株式を資産として扱う考え。
- 自己株式の考え方(資本控除説):株主との間の資本取引であり、会社所有者に対する会社財産の払い戻しの性格を有するものとみて、自己株式を資本の控除として扱う考え方(新株発行と正反対の取引)
- 自己株式の取得:取得原価をもって純資産の部の株主資本から控除する。
- 自己株式の保有:純資産の部の株主資本の末尾に自己株式として一括して控除する形式で表示。→処分又は消却までの、暫定的な状態であるので、自己株式を株主資本の特定の項目から直接控除するような処理は行うべきでなく、株主資本全体からの間接控除の形式で表示。
- 自己株式の処分の考え方:①新株発行と経済的実態が同じ(→払込資本の増加)、②株主との間の資本取引(→損益取引でない)。
- 自己株処分差益、自己株式処分差損が資本剰余金とされる理由:自己株式の処分が新株の発行と同様の経済的実態を有する点を考慮すると、その処分差額も株主からの払込資本(処分差益)、払込資本の払い戻し(処分差損)と同様の経済的実態を有するためである。
- その他資本剰余金の負の残高を表示してよいか:資本剰余金は株主からの払込資本のうち、資本金に含まれないものを表すため、本来負の残高の資本剰余金という概念は想定されない。したがって負の残高を表示すべきでない。
- 自己株式の消却:消却手続きが完了したときに、消却の対象となった自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から減額する。
- 自己株式の付随費用の会計処理:付随費用を財務費用と考え、損益取引とする。会社の意思決定に左右される為、会社の業績に反映させるべきである(→株主との間の資本取引とは考えていない。但し、国際会計基準は、付随費用を自己株式本体の取引と一体と考え、資本取引として扱っている。
株主資本等変動計算書(Statement of Stockholder’s equity : S/S)
- 貸借対照表の純資産の部の各項目の一会計期間における変動額及びその変動事由を報告する計算書(ストックではなくフローの報告書)。
- 純資産のうち、主として株主に帰属する部分である株主資本の各項目の変動事由を報告する為に作成するもの(→重要なのは株主資本の変動)
- 株主資本の各項目:変動事由ごとに表示
- 株主資本以外の各項目:原則:純額で表示(変動事由ごとに表示してもよい)
資本金 | 資本準備金 | その他資本剰余金 | 利益準備金 | 繰越利益剰余金 | 自己株式 | 差額金 | 新株予約権 | 純資産 | |
当期首残高 | 500 | 100 | 200 | 100 | 100 | △200 | 120 | 100 | 1,020 |
当期変動額 | |||||||||
新株の発行 | 50 | 50 | 100 | ||||||
新株の発行 (新株予約権の行使) | 120 | 120 | |||||||
準備金へ振替 | △100 | 100 | 0 | ||||||
剰余金の配当 | 10 | △110 | 100 | ||||||
剰余金の配当 | 10 | △110 | △100 | ||||||
任意積立金の積み立て | |||||||||
当期純利益 | 200 | 200 | |||||||
自己株式の取得 | △100 | △100 | |||||||
自己株式の処分 | △10 | 100 | 90 | ||||||
株主資本以外の項目の当期変動額(純額) | △20 | △20 | |||||||
当期変動額合計 | 70 | 160 | △120 | 10 | 90 | 0 | △20 | △20 | 170 |
当期末残高 | 550 | 260 | 80 | 110 | 190 | 100 | 100 | 80 | 1,470 |
※概ね貸借対照表の純資産の部の順序に合わせて表示。また、純資産項目は、仕訳の貸方に生じれば増加、借方に生じれば減少(金額に△を付す)となり、仕訳をイメージしながら作成するのが無難。
株主資本会計基準
- 記載すべき項目の範囲:株主資本会計基準は、記載すべき項目の範囲を純資産の部のすべての項目としたものの、財務諸表利用者にとって特に重要な情報は、投資の成果を表す利益の情報であり、当該情報の主要な利用者であり受益者である株主に対して、当期純利益とこれを生み出す株主資本との関係を示すことが重要。株主資本と株主資本以外の項目とで、情報の有用性が異なるため、表示方法に差異を設けるという方法を採用しています(株主資本と純利益の連携を重視)。純資産の部すべての項目を記載する考え方は、国際的な会計基準で採用されている考え方であり、我が国では、国際的調和(コンバージェンス)等の観点から、この考え方を採用。
ストック・オプション
- 企業がその従業員等(従業員や取締役など)に、労働等の提供に対する追加的な報酬として付与する「新株予約権」をいう。(会社にとっては支出の生じない給与の支給に相当)
- 付与理由:従業員等の勤労意欲アップ、労働に対するモチベションアップ。
- 権利確定条件:付与当初は、まだ権利が確定してない。何らかの条件を従業員等がクリアしたときに、初めて権利が確定。権利が確定する為の条件を「権利確定条件(勤務条件・業績条件)」という。
- 付与日:ストップ・オプションが付与された日(割当日)
- 権利確定日:権利の確定した日(権利確定条件を達成した日)
- 対象勤務期間:労働等の提供期間(付与日から権利確定日までの期間)
- 失効:権利行使されないことが確定。
各項目 | (借方) | (貸方) |
付与日 | 仕訳なし | |
付与日から権利確定日までの間 | 株式報酬費用(販管費) | 新株予約権(純資産) |
権利確定日後の権利行使 (新株発行) | 現金預金(行使価格×株) 新株予約権(評価単価×個) | 資本金 資本準備金 |
権利確定日後の権利行使 (自己株式処分) | 現金預金 新株予約権 | 自己株式 その他資本剰余金 |
ストック・オプションの条件変更による公正な評価単価の上昇 | ①付与日の評価単価:従来通りの計算 ②評価単価の増加分:変更日以降の残存期間に配分(評価単価増加分×その期の帰属期間/権利確定日迄の残存期間) | |
ストック・オプションの条件変更による公正な評価単価の下落 | 下落分を無視して従来通りの計算のみ続行 (ストック・オプションの価値高まったのに、株式報酬費用を減額させるパラドクス回避) | |
権利確定後の失効 | 新株予約権(評価単価×個) (純資産) | 新株予約権戻入益 (特別利益) |
- 株式報酬費用:対象勤務期間(付与日から権利確定日までの期間)における各期の費用配分額は、ストック・オプションの各年度末における公正な評価額をまず求め、これを期間配分(月割)することで計算。
- ストック・オプションの公正な評価額:ストック・オプションの公正な評価単価(付与日現在で評価)×ストック・オプション数(権利確定日までの失効見込数を控除)
- 各期の株式報酬費用計上額=ストック・オプションの公正な評価額×対象勤務期間のうち付与日~当期末の期間/対象勤務期間 – 前期までの費用配分額(差額補充法的な計算)
付与日 | 決算日 | 決算日 | 権利確定日 | |
付与人数 | 5名 | 5名 | 5名 | 5名 |
失効見込 | △1名 | △1名 | △1名 | |
実際退職 | 0名 | |||
対象人数 | 4名 | 4名 | 4名 | 5名 |
公正は評価額 | 4個×4名×@6=96 | 4個×4名×@6=96 | 4個×5名×@6=120 | |
株式報酬費用 | 96×9/24=36 | 96×(9+12)/24 – 36 = 48 | 120-(36+48) =36 |
ストック・オプションの会計処理
- 費用認識しない理由:ストック・オプションは無償で付与されており、対価性がない。また、財貨の費消事実がなく、費用が発生していない。
- 費用認識する理由:ストック・オプションを対価として、企業に追加的にサービスが提供され、企業に帰属することとなったサービスを費用したことに費用認識の根拠あり。財貨を費消した場合に費用認識が必要である以上、サービスを費用した場合にも費用を認識するのが整合的。企業が従業員等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を、ストック・オプションの権利の行使又は失効が確定するまでの間、貸借対照表の純資産の部に新株予約権として計上。
- 権利不行使による失効を利益に計上する理由:株式を時価未満で引き渡す義務を免れることになり、会社は無償で提供されたサービスを消費したと考える。新株予約権を付与したことに伴う純資産の増加が、株主との直接的な取引によらないことになった場合には、それを利益に計上した上で、株主資本に算入する。
分配可能額(会社法上の制度)
- 剰余金の配当や自己株式の有償取得などを「剰余金の配当等」としてまとめ、債権者保護の観点から、会社財産に対して統一的な財源規制を行い、「分配可能額」という規定を設けている。
- 分配可能額は、配当予定時点での剰余金の額を、前期末時点の剰余金(その他資本剰余金、その他利益剰余金)からスタートして、配当予定日までの剰余金の変動を考慮して計算します。そこに、会社法特有の制限事項を調整して、最終的な分配可能額を算出。
- ①前期末の剰余金の額(例:その他資本剰余金+別途積立金+繰越利益剰余金)
- ②剰余金の変動を考慮→分配時の額
- ③控除額(例:分配時の自己株式帳簿残高、自己株式処分対価、その他有価証券評価差額、のれん等調整額に係る控除額)
剰余金の変動要因(変更前) | 係数の変動(変動後) |
資本金 | その他資本剰余金 |
資本準備金 | その他資本剰余金 |
その他資本剰余金 | 資本金 |
その他資本剰余金 | 資本準備金 |
利益準備金 | 繰越利益剰余金 |
繰越利益剰余金 | 資本金 |
繰越利益剰余金 | 利益準備金 |
分配時までの剰余金の配当 | |
自己株式(処分・消却) |
※「資本金⇔資本準備金」は、剰余金に影響しない。「任意積立金⇔繰越利益剰余金」は、剰余金総額に影響しない。
会社法と会社計算規則の規定により控除する主な項目
- 分配時における自己株式の帳簿残高 : 過去に払い戻した財産の価格に相当し、既に分配可能額から分配したもの。
- 期首から分配時までの自己株式処分の対価:処分差益により分配可能額を増やそうとする意図を阻止。
- 前期末の「その他有価証券評価差額金」のマイナス残高:
- 前期末の「土地再評価差額金(今日では適用されていない)」のマイナス残高:
- 「のれん等調整額」に係る控除額(4つのケース):「のれん」と「繰延資産」から構成。「繰延資産」は、換金価値のない資産なので分配可能な財残とは考えない。また、のれんは、「超過収益力」であり、回収可能性がないとは言い切れないので、政策的にその半分だけが控除の対象。
分配可能額 = 分配時の剰余金残高-上記1~4の控除額
「のれん等調整額」の計算式
- のれん等調整額 = (前期末BS)のれん×1/2 +(前期末BS) 繰延資産
- のれん等調整額<資本金+準備金(資本準備金+利益準備金)→剰余金から控除する額はゼロ
- のれん等調整額>資本金+準備金→剰余金に食い込んだ分を剰余金から控除する
分配時の剰余金 | |||||||
Case | 資本金+準備金 | その他資本剰余金 | その他利益剰余金 | ||||
Caes1 | の×1/2+繰延資産 | 分配可能額 (控除額ゼロ) | |||||
Case2 | の×1/2+繰延資産 | 分配可能額(繰資を優先的控除) | |||||
Case3 | の×1/2 < 資+準+そ | 繰延資産 | 分配可能額 | ||||
Case4 | の×1/2 > 資+準+そ | の×1/2 分配可能額 | 繰延資産 |
※ Case4 :会社法は、その他資本剰余金が払込資本であるにも関わらず、その払込資本に対する受入財産が、会社法の観点から資産性に疑義のある「のれん」となる場合がありうることを危惧。その為、「のれん×1/2]に相当する部分を分配時のその他資本剰余金から控除。
1株当たり情報
- 注記事項として①1株当たり純資産(期末の純資産額(株主資本+評価・換算差額。新株予約権除く)/(期末の発行済株式数-期末の自己株式数)と②1株あたり当期純利益(当期純利益/(期中平均発行済株式数-期中平均自己株式数))を注記。「1株当たり当期純利益に関する会計基準」とその「適用指針」定めあり。
- 普通株式のみを前提に計算。
- 期末発行株式の計算上のポイント:①自己株式の取得と処分:発行済株式数に影響なし。②自己株式の消却:発行済株式数と自己株式数の両方が減少→分母に影響なし。
- 株式数の増減:①新株発行、自己株式取得:増加分の日割・月割計算、②自己株式の処分:減少分の日割・月割計算、③自己株式の消却:減少分の日割・月割計算
リース取引
- 「特定の物件の所有者たる貸手が、当該物件の借手に対し、リース期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、リース料を貸手に支払う取引」
- リース取引の経済的実態:①割賦売買の想定、②借入と購入を想定
- 借手がリース取引を行うメリット:①法定耐用年数よりも短い期間でリースを取り組むことで、技術革新の激しい設備の陳腐化に対応できる。②金融機関からの借入枠を温存できる。③一時に多額の購入資金が不要。④購入に要する煩雑な事務手続きや設備に損害保険などを付す手間が不要。
分類 | 種類 | (借方) | (貸方) | 減価償却 |
ファイナンスリース取引: (売買処理) | 所有権移転ファイナンス・リース取引 | リース資産 | リース債務 | 残存価額:自己所有の固定資産と同様 耐用年数:経済的耐用年数 償却方法:自己所有の固定資産と同様の方法 |
リース債務 支払利息 ・原則:利息法 ・容認:定額法 | 現金預金 | |||
所有権移転外ファイナンス・リース取引 | 同上 | 同上 | 残存価額:ゼロ 耐用年数:リース期間 償却方法:自己所有の固定資産と同様の方法でなくても良い。 | |
オペレーティング・リース取引: (賃貸借処理) | オペレーティング・リース取引 | 支払リース料 (販管費) | 現金預金 |
- ファイナンス・リース取引の要件:①解約不要(借手が、リース期間中の中途において契約を解除することが契約上も実質的にもできないこと、②フルペイアウト:借手が、リース物件の使用からもたらされる経済的利益を実質的に享受する事ができる。借手が、リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担すること。⇒リース物件を資産計上するに相応しいと言える。
- ファイナンス・リース取引に該当するかの判定基準:①現在価値基準(原則):リース料総額の現在価値が、見積現金購入価額の概ね90%以上である。or ②経済的耐用年数基準(簡便法):リース期間が、経済的耐用年数の概ね75%以上である。⇒債務がリース物件の価値と略同等と言えるか判断。
- 所有権移転かどうかの判定方法:①リース契約に「所有権移転条項」あり。②行使確実な「割安購入選択権(著しく低い価額でリース物件を買い取る」あり、③リース物件が「特別仕様(借手のみ使用)」
- ファイナンス・リース取引を賃貸借処理することの問題点:経済的実態が、リース物件を売買した場合と同様なので、取引実態を財務諸表に的確に反映するものとはいえない。
- リース資産の資産性:リース物件からもたらされる経済的利益を享受する権利を有していることから、リース資産には資産性が認められる。
- リース債務の負債性:リース期間にわたってリース料を支払う義務があることからリース債務には負債性が認められる。
リース資産とリース債務の計上価額(決定方法)
分類 | 貸手の購入価額が明らかな場合 | 貸手の購入価額が明らかでない場合 |
所有権移転の場合 | 貸手の購入価額 | ①借手の見積現金購入価額、②リース料総額の割引現在価値(貸手の利率 or 借手の利率)の何れか低い額 |
所有権移転外の場合 | ①貸手の購入価額、②リース料総額の割引現在価値(貸手の利率 or 借手の利率)の何れか低い額 |
リース料総額の割引現在価値(割引率の選択)
- 貸手の計算利子率を知り得る場合:貸手の計算利子率
- 貸手の計算利子率を知り得ない場合:借手の追加借入利子率
維持管理費用(固定資産税、保険料、車検費用、自動車税等):リース物件をリースで使うにしても、通常の購入によって使うにしても、使用する側が負担すべきコストなので、毎期の費用として処理。
維持管理費用を含むケース | (借方) | (貸方) |
リース料支払時の処理の基本 | リース債務 | 現金預金 |
支払利息 | ||
維持管理費用 |
リース資産・リース債務 | 利息法で用いる利率 |
貸手の購入価額 | 貸手の購入価額と同額のリース債務が最後にゼロとなる利率 |
借手の見積現金購入価額 | 借手の見積現金購入価額と同額のリース債務が最後にゼロとなる利率 |
リース料総額の割引現在価値 (貸手の計算利子率) | 貸手の計算利子率 |
リース料総額の割引現在価値 (借手の追加借入利子率) | 借手の追加借入利子率 |
ファイナンス・リース取引の貸手の処理方法
所有権移転ファイナンス・リース | 第1法 | 第2法 | 第3法 |
内容 | リース取引開始日に売上高と売上原価を全額計上する方法 | リース料受領時にその都度売上高と売上原価を計上する方法 | 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法 |
リース取引開始日 | (借)リース債権 (貸)売上 (借)売上原価 (貸)買掛金 | (借)リース債権 (貸)買掛金 | (借)リース債権 (貸)買掛金 |
リース料受取時 | (借)現金預金 (貸)リース債権 | (借)現金預金 (貸)売上 (借)売上原価 (貸)リース債権 | (借)現金預金 (貸)リース債権 (貸)受取利息 |
※所有権移転外ファイナンス・リースの場合:リース債権勘定でなく、リース投資資産勘定を用いる。
ファイナンス・リース取引の表示(借手)
原則:区分ごとに一括して表示 | 容認:各科目に含めて表示 |
有形固定資産 リース資産 無形固定資産 リース資産 | 有形固定資産 機械装置(※リース資産を含む) 車両運搬具(※リース資産を含む) |
リース債務の表示
勘定科目 | 1年基準 | 表示区分 | 表示科目 |
リース債務 | 1年以内 | 流動負債 | リース債務 |
1年超 | 固定負債 | 長期リース債務 |
リース料前払の計算例
支払日 | 期首元本 | リース料 | 支払利息 | 返済元本 | 期末元本 |
01.04.01 | 305 | 105 | 0 | 105 | 195 |
02.04.01 | 195 | 105 | 10 | 95 | 100 |
03.04.01 | 100 | 105 | 5 | 100 | 0 |
日付 | (借方) | (貸方) |
01.04.01 | リース資産 300 | リース債務 300 |
01.04.01 | リース債務 105 | 現金預金 105 |
02.03.31 | 支払利息 10 | 未払利息 10 |
セール・アンド・リースバック
- 固定資産を形式的には売却しますが、当該固定資産をそのまま使用している実態があるので、投資の継続性が認められる。従って、売却損益は実現していないものと扱う(売却損益は、①長期前受収益、②長期前払費用として繰り延べる:経過勘定項目でもなく、便宜上使用)
- 経済的実態を重視して、売却せずに使用し続ける場合と損益が等しくなるようにするため、長期前受収益の取崩額を減価償却費と相殺する。
分類 | (借方) | (貸方) |
SLB時 (売却代金は貸手の購入価額でもあるので、SLBの借手は、貸手の購入価額が明らかとなる。 | 減価償却累計額 | 備品 |
現金預金 | 長期前受収益 | |
リース資産 | リース債務 | |
決算整理 | 減価償却費 (残存耐用年数で償却) | 減価償却累計額 |
長期前受収益 | 減価償却費 (減価償却期間と合わせる) |
リースバック後の減価償却計算
分類 | 残存価額 | 耐用年数 | 償却方法 |
所有権移転 | 当初取得時の残存価額 | 当初の耐用年数に基づく残存年数 | 当初取得時に採用した方法 |
所有権移転外 | ゼロ | リース期間 | 特に制約はなし。 |
研修開発費
定義:「研修」とは、新しい知識の発見のための調査及び探求。「開発」とは、新しい製品等は既存の著しい改良のため、研究の成果等を具体化すること。
- 研究開発費の会計処理:すべて発生時の費用(一般管理費又は製造費用)として処理。
- 研究開発費に含まれる項目:人件費、原材料費、研究設備等の減価償却費
- 特定の研究開発目的にのみ使用され、他の目的に使用できない機械装置や特許権等を取得した場合、それらの取得原価は、資産計上せず、取得時の研究開発費とする。
ソフトウエア
- ソフトウエア制作費:制作目的により、将来の収益との対応関係が異なること等から、ソフトウエアの制作目的別に会計処理の方法が定められている。
分類 | 会計処理 | 具体例 | 減価償却 | ||
研究開発目的のソフトウェア | 研究開発費として発生時に費用処理 | 販管費 | NA | ||
研究開発目的以外のソフトウェア | 販売目的のソフトウェア | 市場販売目的のソフトウェア | 製品化したものは「棚卸資産」 | 販売目的で不特定多数のユーザー向けに開発 | NA |
受注制作のソフトウェア | 請負工事の会計処理に準じて処理 | NA | |||
自社利用のソフトウェア | 将来の収益獲得または費用の削減が確実 | 無形固定資産 「ソフトウェア」 ・制作中:「ソフトウェア仮勘定」 | 設定作業の費用、付随的な修正作業の費用 | 償却方法:定額法等(月割り) 残存価額: ゼロ 耐用年数: 利用可能期間(5年以内) | |
将来の収益獲得または費用の削減が不明、不確実 | 費用処理(販管費)。修繕費、訓練費 | データコンバート費用、従業員操作のトレーニング(訓練)費用 | NA |
市場販売目的(制作プロセス)
フェーズ | 第1段階 | 第2段階 | 第3段階 | 製品完成 |
概要 | 制作着手 | 最初に製品化された製品マスターの完成 | 製品マスター完成 | |
活動 | ・研究開発活動 ・β版作成 | ・機能の改良・強化 ・機能維持 (バグ取り) | ・製品マスターの複写 ・箱詰め、包装等 | |
会計処理 | 研究開発費 (販管費) | ①機能の改良・強化:ソフトウエア(資産) ②機能維持(バグとり):修繕費等 ③機能の著しい改良:研究開発費 | 販売用の製品としてソフトウェアの製造原価(仕掛品、製品) | 棚卸資産 |
市場販売目的(決算時の処理):無形固定資産に計上した「ソフトウェア」の減価償却方法
- ①見込販売数量に基づく方法:ソフトウェアの当期首未償却残高×当期の実績販売数量/当期首の見込販売数量
- ②見込販売収益に基づく方法:ソフトウェアの当期首の未償却残高×当期の実績販売収益/当期首の見込販売収益
- 但し、①、②ともに残存有効期間に基づく均等配分額(期首の未償却残高/期首の残存有効期間)を下回ってはならない。残存価額ゼロ。最終年度は、期首未償却残高の全額が減価償却額
- 販売可能な有効期間:原則3年以内
- 市場販売目的のソフトウェアの消却額は「売上原価」
研究開発費・ソフトウェアの注記
- 一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額は、財務諸表に注記必要(会社計算規則の定めでなく、「研究開発費等に係る会計基準」による。
- 損益計算書に関する注記:一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額 ××千円
- ソフトウェアの減価償却に関する注記:無形固定資産に計上したソフトウェアの減価償却の方法は、重要な会計方針に係る事項に関する注記事項(固定資産の減価償却の方法)となる。
- (例)固定資産の減価償却の方法
- 1.市場販売のソフトウェア:見込販売数量に基づく償却額(見込有効期間3年)と残存有効期間(2年)に基づく均等配分額のいずれか大きい額
- 2.自社利用のソフトウェア:社内の利用可能期間(5年)に基づく定額法
研究開発費の処理方法
- 研究開発費の処理方法:①資産計上する処理、②費用処理の2つの処理方法がある。
- 研究開発費の発生時費用処理の論拠
- ①資産計上する処理の否定:研究開発費は、発生時には将来の収益を獲得できるか否か不明であり、また、研究開発計画が高まったとしても、依然としてその獲得が確実であるとはいえない。
- ②一定の要件を設けて資産計上する処理の否定:実務上客観的に判断可能な要件を規定することは困難であり、抽象的な要件のもとで資産計上を求めることとした場合、企業間の比較可能性が損なわれる恐れがある。
- 発生時費用処理の問題点:将来の収益に対応すべき費用や資産性を有する経済的資源が貸借対照表に計上されなくなってしまう。
市場販売目的のソフトウェアを無形固定資産に計上する理由
- 製品マスター自体が販売の対象物ではない。⇒棚卸資産ではない。
- 製品マスターは、機械装置等と同様にこれを利用(複写)して製品を作成する。⇒固定資産
- 製品マスターは、法的権利(著作権)を有している。⇒無形資産
- 製品マスターは、適正な原価計算により取得原価を明確化できる。
金融商品の評価の概要
- 「金融商品に関する会計基準」では、随時売却・決済することが可能な資産・負債については時価が判明するものはできる限り時価で評価する姿勢をとっている。
- 主な金融資産:現金預金、受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権、株式及び公社債等の有価証券、デリバティブ取引により生じる正味の債権
- 主な金融負債:支払手形、買掛金、借入金及び社債等の金銭債務、デリバティブ取引により生じる正味の債務
- ゴルフ会員権:①株式方式、②預託金方式。原則、取得価格のまま評価。但し、時価等が著しく下落した場合(取得原価の50%以上下落した場合)は減損処理を行う。
- 預託保証金方式の場合の減損:時価の下落が預託保証金部分に食い込んだ場合には、評価損ではなく、貸倒引当金の設定を行う。
項目 | (借方) | (貸方) | 補足 |
ゴルフ会員権の取得時 | ゴルフ会員権 (投資その他の資産) | 現金預金 | ・ゴルフ会員権は金融資産でが、会計上の有価証券には分類されない。 |
減損処理 (株式方式) | ゴルフ会員権評価損 | ゴルフ会員権 | 特別損失 |
減損処理 (預託金方式) | ゴルフ会員権評価損 | ゴルフ会員権 | |
貸倒引当金繰入額 | 貸倒引当金 |
配当金の受取り
配当財源 | (借方) | (貸方) | |
その他利益剰余金からの配当 | 売買目的有価証券 | 現金預金 | 受取配当金 |
その他有価証券 関係会社株式 | |||
その他資本剰余金からの配当 | 売買目的有価証券 | 現金預金 | 受取配当金 |
その他有価証券 関係会社株式 | 現金預金 | 投資有価証券 関係会社株式 |
有価証券の発生と消滅
約定日基準(原則) | 買手側 | 約定日に有価証券の発生を認識する。 |
売手側 | 約定日に有価証券の消滅を認識する。 | |
修正受渡日基準 | 買手側 | 受渡日までは約定日から時価の変動のみを認識し、受渡日に有価証券の発生を認識する。 |
売手側 | 受渡日までは売却損益を約定日に認識するのみとし、受渡日に有価証券の消滅を認識する。 |
有価証券の買手の処理
買手の処理 | 約定日基準 | 修正受渡日基準 | ||
項目 | (借方) | (貸方) | (借方) | (貸方) |
約定日 | 有価証券 120 | 未払金 120 | 仕訳なし | |
決算日 | 有価証券 10 | 有価証券評価損益 10 | 有価証券 10 | 有価証券評価損益 10 |
BS表示 | 有価証券 130 | 未払金 120 | 有価証券 10 | |
翌期首(洗替) | 有価証券評価損益 10 | 有価証券 10 | 有価証券評価損益 10 | 有価証券 10 |
受渡日 | 未払金 120 | 現金預金 120 | 有価証券 120 | 現金預金 120 |
※切放法:翌期首(洗替)の仕訳なし
約定基準日 | 修正受渡日基準 | |||
項目 | (借方) | (貸方) | (借方) | (貸方) |
約定日 | 未収金 120 | 有価証券 100 有価証券売却益 20 | 有価証券 20 | 有価証券売却益 20 |
決算日 | 仕訳なし | 仕訳なし | ||
BS表示 | 未収金 120 | 有価証券 120 | ||
受渡日 | 現金預金 120 | 未収金 120 | 現金預金 120 | 有価証券 120 |
保有目的区分の変更:基本的に、振替前の保有目的で振り替える価値が決まる。
変更前|変更後 | 売買目的 | 満期保有目的の債券 | その他 | 関連会社株式 子会社株式 |
売買目的 | - | 不可 | 時価 | 時価 |
満期保有目的の債券 | 償却原価 (取得原価) | - | 償却原価 (取得原価) | - |
その他 | 時価 | 不可 | - | 帳簿価額 |
関連会社株式 子会社株式 | 帳簿価額 | - | 帳簿価額 | 帳簿価額 |
- 保有目的区分の変更が認められる場合:①会社で資金運用方針の変更があり、これに伴って、保有目的区分を変更する場合(例、トレーディング部門の廃止)。②保有株式の追加取得・売却等により、持分比率が変更された場合。
- 満期保有目的の債券は、取得時から満期までの間、一貫して満期保有の意図が必要とされる。従って、保有途中に他の保有目的から満期保有目的へ変更することはできない。
- 債券から株式へ、株式から債券への変更はない。
- 時価で振り替えた時の帳簿価額との差額は、振替時の評価損益(振替前の保有目的区分の評価損益)とする。
- 変更時にはその他有価証券の評価差額も当期損益とする:保有目的区分を変更するときに時価で振り替える場合には、それまでの時価の変動分をそこでいったん清算することになる。従って、その他有価証券を売買目的へ振り替える場合も、それまでの時価の変動を評価損益として当期の損益とする必要がある。振替時に純資産直入する処理はない。
(借方) | (貸方) | |
売買目的→その他 | 投資有価証券 130 | 有価証券 100 有価証券評価損益 30 |
その他→売買目的 | 有価証券 130 | 投資有価証券 100 投資有価証券評価損益 30 |
満期保有目的→売買目的 | 有価証券 110 | 有価証券利息 10 投資有価証券 100 |
満期保有目的→その他 | 投資有価証券 110 | 有価証券利息 10 投資有価証券 100 |
売買目的→関連会社 | 関係会社株式 130 | 有価証券 100 有価証券評価損益 30 |
関連会社→売買目的 | 有価証券 100 | 関係会社株式 100 |
その他→関連会社 | 関係会社株式 100 | 投資有価証券 100 |
関連会社→その他 | 投資有価証券 100 | 関係会社株式 100 |
関連会社株式⇔子会社株式 | 関係会社株式 100 | 関係会社株式 100 |
新株予約権の取得
- 取得した新株予約権は、会計上の有価証券に該当。従って、金融商品会計基準の有価証券に関する定めに従って会計処理を行う。基本的には保有目的に応じて科目や評価額の決定を行う。新株予約権に固有の取引として、権利行使して株式を取得した時の会計処理に注意が必要。
- 新株予約券の権利行使:株式の取得原価は、行使価格の払込金額の他、新株予約権の保有目的に応じて決定する必要あり(①売買目的有価証券:行使時の時価で振り替える。②その他有価証券:行使時の帳簿価額で振り替える)
(借方) | (貸方) | 補足 | ||
新株予約権の取得時 | 売買目的 | 有価証券 | 現金預金 | 取得時の付随費用は取得原価に算入 |
その他有価証券 | 投資有価証券 | 現金預金 | ||
新株予約権の権利行使時 | 売買目的 | 有価証券 | 有価証券評価損益 | 時価評価して振替 |
有価証券 | 有価証券 現金預金 | |||
投資有価証券 | 投資有価証券 | 投資有価証券 現金預金 |
金融商品の発生の認識
- 金融資産の契約上の権利又は金融負債の契約上の義務を生じさせる契約を締結したときは、原則として、当該金融資産又は金融負債の発生を認識しなければならない。
- 契約締結時に金融商品の発生を認識する理由:契約時から当該金融資産又は金融負債の時価の変動リスクや契約の相手方の財政状態等に基づく信用リスクが契約当事者に生じる為、契約締結時においてその発生を認識する。
- 金融資産の消滅の認識:金融資産の契約上の権利を行使したとき、権利を喪失したとき又は権利に対する支配が他に移転したときは、当該金融資産の消滅を認識しなければならない。
- 金融資産の譲渡に係る支配の移転の考え方
- ①リスク・経済価値アプローチ:金融資産のリスクと経済価値のほとんどすべてが他に移転した場合に、当該金融資産の消滅を認識する方法。
- ②財務構成要素アプローチ:金融資産を構成する財務的要素(財務構成要素)に対する支配が他に移転した場合に当該移転した財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識する方法。
有価証券の評価
- 売買目的有価証券:時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(売買目的有価証券)は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理。
- 売買目的有価証券を時価評価する理由:時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券については、投資者にとっての有用な情報は、有価証券の期末時点での時価に求められる。
- 売買目的有価証券の評価差額を当期の損益とする理由:売却することについて事業遂行上等の制約がなく、時価の変動にあたる評価差額が企業にとっての財務活動の成果と考えられる。
- 満期保有目的の債券の評価:満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券は、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。
- 満期保有目的の債券を時価評価しない理由:時価が算定できるものであっても、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受取りを目的としており、満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がない。
- 子会社株式の評価:取得原価をもって貸借対照表価額とする。
- 子会社株式を時価評価しない理由:事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えていないという考え方に基づく。事業投資(例えば有形固定資産)は、事業の遂行を通じてキャッシュフローを得ることを目的とした投資であり、売却することについて事業遂行上の制約がある。
- その他有価証券の評価:時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗い替え方式に基づき、次のいずれかの方法により処理する。①評価差額の合計額を純資産の部に計上する。②時価が取得価額を上回る銘柄に係る評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得価額を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。
- その他有価証券の評価:その他有価証券は、多様な性格を有しており、一義的にその属性を定めることは難しい。そこで、金融資産の評価の基本に立てば、時価による自由な換金・決済等が可能な金融資産については、投資情報としても、企業の財務認識としても、時価評価すべきである。→投資者に対して的確な財務情報を提供できる(有用な投資情報)。金融資産に係る取引の実態を反映させる会計処理は、企業の側においても、取引内容の十分な把握とリスク管理の徹底及び財務活動の成果の的確な把握のために必要(企業の財務認識)。
- 評価差額を当期の損益としない理由:事業遂行上等の必要性から直ちに売買・換金を行うことには制約を伴う要素もあり、評価差額を直ちに当期の損益として処理することは適切でないと考えられる。(投資のリスクから解放されていない)
貸倒見積高の算定
- 債権者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権を区分する。
- ①一般債権:経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権。一般債権については、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。
- ②貸倒懸念債権:経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権。貸倒見積高は、債権の状況に応じて、①財務内容評価法(債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残高について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法)、②キャッシュフロー見積法(債権の元本の回収及び利息の受取り係るキャッシュ・フローを合理的に見積もることができる債権については、債権の元本及び利息について、元本の回収及び利息の受取りが見込まれるときから当期末までの期間にわたり当初の約定利子率で割引いた金額の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法)のいずれかで算定する。但し、同一の債権については、債務者の財務状態及び経営成績の状況等が変化しない限り、同一の方法を継続して適用する。
- 当初の約定利子率を用いる理由:債権を時価で評価し直すために行われるのではなく、あくまでの債権の取得価額のうち当初の見積キャッシュ・フローからの減損額を算定することを目的として行われるから。
- ③破産更生債権等:経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権。債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とする。
固定資産の減損
- 固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態。そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理。
- 減損処理の目的:固定資産の収益性が低下している場合に、事業用資産の過大は帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないようにする。
- 収益性の低下は、見込まれる将来CFが低落傾向:固定資産は、それを事業活動で使用することで、取得価額を超える将来のキャッシュ・フローを獲得できると期待。
- 減損処理の対象資産:固定資産を対象。他の基準に減損処理に関する定めがある資産、例、「金融商品に係る会計基準」の金融資産や「税効果会計に係る会計基準」における繰延税金資産については対象資産から除く。
- 事業用の固定資産を原価評価する理由:通常、市場平均を超える成果を期待して事業に使われているため、市場の平均的な期待で決まる時価が変動しても、企業にとっての投資の価値がそれに応じて変動するわけではない。
- 本来的な減損処理:本来、投資期間全体を通じた投資額の回収可能性を評価し、投資額の回収が見込めなくなった時点で、将来に損失を繰り延べないために帳簿価額を減額する会計処理と考えられる。(会計基準は現実的な処理を採用)
- 減損損失の認識:減損の兆候がある資産又は資産グループについての減損損失を認識するかどうかの判定は、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行い、資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識する。
- 帳簿価額を割引前将来キャッシュ・フローの総額と比較する理由:減損損失の測定は、将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存する。将来キャッシュ・フローが約定されている場合の金融資産と異なり、成果の不確実は事業用資産の減損は、測定が主観的にならざるを得ない。したがって、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識することが適用。
時価 | 使用価値 |
誰にとっても同じ価値 | 企業によって異なる価値 |
市場で評価された平均的な価値 | 使用する企業によってその使用のしかたによって、異なる価値 |
減損処理(固定資産) | 時価評価(金融資産) | |
共通点 | 取得原価とは異なる金額を貸借対照表価額とする手続き | |
相違点 | 取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額 | 資産価値の変動によって利益を測定する事や、決算日における資産価値を貸借対照表に表示することを目的とする手続き |
原価配分思考 | 価値評価思考 | |
損失のみ認識 | 評価損も評価益も認識 |
固定資産 (費用性資産) 取得価額(回収可能) 回収可能なものだけが「経済的便益」 | 費消⇒ | 費用:これを決定するのが原価配分(費用配分) | ||
未費消⇒ | 帳簿価額(回収可能):原価配分の結果として算定 | 減損 | 収益性低下(回収不能):経済的便益の喪失 | |
帳簿価額 (回収可能) |
金融資産:取得原価 | 売却等 | 評価損益 | |
帳簿価額 | 評価替:期末の価値を決定するのが価値評価 | 時価(期末の価値) |
減損処理の手順 | 概要 | 補足 |
1:資産のグルーピング | 関連ある固定資産をグループ化する。 | 独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位を一つの資産グループとする。 |
2:減損兆候の把握 | 減損が生じている可能性を判断する。 | ・営業活動から生ずる損益又はキャッシュ・フローが継続してマイナス。 ・当該資産または資産グループが属する事業の経営環境が著しく悪化。 ・資産または資産グループの市場価格が著しく下落。 |
3:減損損失の認識の判定 | 収益性の低下の有無を判断する。 | ・減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識。 ・割引前将来CFの総額が帳簿価格を下回る場合に、減損損失を認識。 |
4:減損損失の測定 | 減損損失の発生額を算定する。 | ・帳簿価額を回収可能価額(正味売却価額と使用価値のいずれか高い方)まで減額し、減損損失として当期の損失とする(原則、直接控除) ・正味売却価額=時価ー処分費用見込額 ・時価:公正な評価額をいう。通常、それは観察可能な市場価格をいい、市場価額が観察できない場合には合理的に算定された価格をいう。 ・使用価値:継続的使用と使用後の処分による将来CFの割引現在価値 |
5:減損損失の配分 | 減損損失をグループ内の各固定資産へ配分する。 | 各構成資産へ帳簿価額の割合で配分。または、各資産の帳簿価額と正味売却価額の差額の比率で配分。 |
- 減損処理後の会計処理:減損損失控除後の要償却額(減損後、残存価額控除後)で償却。減損損失も戻入はれ、行わない。
- 減損損失の戻入れを行わない理由:制度会計上、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしているため。
- 見積期間の制限:固定資産の経済耐用年数が20年を超える場合は、見積の最長年数は20年。20年を超える場合、20年を超える期間のC/Fを20年時点における回収可能価額(20年時点の正味売却価額と20点時点の使用価値(残存価額含む、現在価値計算)の高い方)を算定した上で、割引前将来CFに含める。
共用資産の取扱い
- 共用資産:複数の資産グループに用役を提供している資産。典型的な共通資産は、本社ビルや工場建物。共用資産がある場合には、原則として共用資産を含めた「より大きな単位」での減損処理を行う。
- 減損処理の手順:まず、資産グループ個々の減損処理を行い、資産グループ個々の減損処理が終わってから、共通資産を含めた「より大きな単位」での減損処理を行う。共通資産を含めた「より大きな単位」で減損処理を行うと、資産グループ個々の減損損失の額よりも大きい額の減損損失が生じることがある。
手順 | 概要 |
個別:各資産グループごとに減損処理を行う | |
手順1:「より大きな単位」で減損の兆候の把握 | 共用資産自体または共用資産を含む「より大きな単位」に減損兆候がないか把握。 |
手順2:「より大きな単位」で減損損失の認識の判定 | 共用資産を含む「より大きな単位」での割引前将来CFの総額と資産グループの帳簿価額と共用資産の帳簿価額を比較 |
手順3:「より大きな単位」で減損損失の測定 | 共用資産を含む「より大きな単位」での回収可価額と資産グループの帳簿価額と共用資産の帳簿価額との差額 |
手順4:減損損失増加額の算定 | 「より大きな単位」での減損損失と各資産グループの減損損失の合計額の差額 |
手順5:減損損失増加額の配分 | 優先的に共有資産へ配分する。共有資産に配分しきれない分があれば、資産グループへ配分する。共用資産への配分は、共用資産の正味売却可能価額までが限度。 |
共用資産あり | グループA | グループB | グループC | 共用資産 | より大きな単位 |
減損の兆候 | なし | なし | あり | ー | あり |
当期末帳簿価額 | 200 | 300 | 400 | 500 | 1,400 |
割引前将来CF | ー | ー | 300 | - | 960 |
回収可能価額 | ー | ー | 240 | 300 | 860 |
正味売却価額 | ー | ー | △160 | ― | △540 |
減損損失増加額 | △160 | ||||
△380 | |||||
増加分の配分 | △72 | △108 | ー | △200 | +380 |
(借方) | (貸方) | 補足 |
減損損失 540 | 資産グループA 72 | 共用資産へ配分しきれない分は資産グループへ配分 |
資産グループB 108 | ||
資産グループC 160 | 既に個別に減損損失を計上している資産グループは帳簿価額が回収可能価額まで切り下げられているので、これ以上配分不可。 | |
共用資産 200 | 共用資産への配分 |
減損処理における「のれん」の取扱い
- 「のれん」を共通資産とほぼ同様に取り扱う(「のれん」には正味売却価額がない点が異なる)
- 「のれん」が、複数の事業を他企業から受け入れた際に、発生したものである場合は、各事業へ「のれん」を配分してから、「のれん」の配分額を含めた「より大きな単位」で減損処理を行う。
- 「のれん」を各事業へ、各事業の時価等を基準に配分し、それから減損処理を行う。「のれん」を配分した後は、共用資産がある場合の減損処理と手順や計算は略同じ。
- 共用資産との違いは、事前に「のれん」を各事業へ配分するという手間がかかることと、「のれん」は単独では売却できず、正味売却価額がない点。→「のれん」は帳簿価額がゼロになるまで、減損損失を配分することが可能。
減損損失の表示(特別損失)
減損損失累計額 | 間接控除方式 | 独立間接控除方式 |
合算間接控除方式 | ||
合算間接控除注記方式 | ||
直接控除方式(原則) |
<注記方式>貸借対照表に関する注記:有形固定資産の減価償却累計額には減損損失累計額XX千円が含まれている。
退職給付
- 退職した従業員に対して退職以降に支給される給付であり、主なものは退職一時金と退職年金(企業年金)である。在職中の労働に対する報酬の後払い。
- 退職給付会計:退職給付の将来支給すべき額(退職給付債務)を退職給付引当金として計上すること。
- 退職給付見込額:従業員が将来退職したときに支給すると見込まれる退職給付の総額をいう。従業員個々に計算する必要あり。
- 退職給付債務:退職給付見込額のうち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算したもの。
- 退職給付引当金の概要:原則法と簡便法がある。簡便法(期末要支給額)は特定の条件を満たす場合にのみ認められる方法であり、主として中小企業等が採用できる方法。
- 間便法:①退職一時金制度:期末自己都合要支給額が退職給付引当金。簡便法による場合の退職給付費用は、退職給付引当金勘定の貸借差額(一時金拠出、掛金の拠出含む)で算定。②企業年金制度:年金財政計算上の数理債務(責任準備金)と年金資産(公正な評価額、時価)との差額が、退職給付引当金。
- 退職給付債務の計算:①退職一時金:退職給付引当金=退職給付債務、②企業年金:退職給付債務ー企業年金=退職給付債務
- 期末の処理:期首時点での見込額の処理を期末においては、退職給付債務の実際額(適正額)と年金資産の実際額(公正な評価額=時価、年金制度のみ)を求め、見込額と実際額の差異を把握。
- 退職一時金制度の明細科目:退職給付債務、未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務費用。数理計算上の差異とは、退職給付債務の見込額と実際額の差額。数理計算上の差異のうちまだ費用処理されていない部分を未認識数理計算上の差異という。未認識数理計算上の差異は、発生時または発生の翌期より、定額法等で費用処理(償却)を行う。借方差異(不利差異)、貸方差異(有利差異)。費用処理の開始を差異発生の翌期からとする問題では、明細科目(退職給付債務)を用いた集計は、必須でない。
- 企業年金制度の明細科目:退職給付債務、年金資産、未認識数理計算上の差異、未認識過去勤務費用。数理計算上の差異は、①退職給付債務の見込額と実際額の差異、②年金資産の見込額と実際額の差異。また、費用処理されたない部分を未認識数理計算上の差異という。未認識数理計算上の差異は、発生時または発生の翌期より、定額法等で費用処理(償却)を行う。費用処理の年数は、「平均残存勤務期間」以内とされる。
- 過去勤務費用:退職給付水準の改定等に起因して発生した退職給付債務の増加または減少部分をいう。過去勤務費用のうちまだ費用処理されていない部分を未認識過去勤務費用という。未認識過去勤務費用は、発生時より定額法等で費用処理(償却)する。費用処理の年数は、「平均残存勤務期間」以内とされている。
退職一時金制度 | 退職年金制度 | |
制度内容 | 従業員の退職時に企業から直接従業員へ一時金を支払う制度 | 従業員の退職後に企業外部の基金等から従業員へ年金を支払う制度 |
資金の積立方法 | 企業内部に資金を積み立てておく | 企業が基金等の第三者に掛金を支払い、それを運用してもらう形で資金を積み立てる。 |
支給方法 | 退職時に一時金として支給 | 退職後に年金として支給 |
確定給付型 | 確定拠出型 | |
制度内容 | 掛金の運用次第で企業が拠出する掛金が変動する | 企業が負担する掛金の拠出額が確定している。 |
支給額 | 従業員への退職給付の支給額が確定している。 | 従業員への退職給付の支給額が掛金の運用次第で変動する。 |
退職一時金制度 | 借方 | 貸方 | 補足 |
勤務費用 | 退職給付費用 | 退職給付引当金 | 見込額。期末において退職給付債務の実際額を求め、見込額と実際額の差異を把握。 |
利息費用 | 退職給付費用 | 退職給付引当金 | 前期末の退職給付債務×割引率(見込額) |
一時金の支給 | 退職給付引当金 | 現金預金 | 期中取引 |
借方差異の償却 | 退職給付費用 | 退職給付引当金 | 未認識数理計算上の差異 |
貸方差異の償却 | 退職給付引当金 | 退職給付費用 | 未認識数理計算上の差異 |
退職年金制度 | 借方 | 貸方 | 補足 |
勤務費用 | 退職給付費用 | 退職給付引当金 | 退職給付債務の増加 (期首時の見込額) |
利息費用 | 退職給付費用 | 退職給付引当金 | 退職給付債務の増加 (期首時の見込額) 前期末の退職給付債務×割引率 |
基金の運用収益 | 退職給付引当金 | 退職給付費用 | 年金資産の増加 (期首時の見込額) 前期末の年金資産×長期期待運用収益率 |
掛金の拠出 | 退職給付引当金 | 現金預金 | 年金資産の増加 |
年金の支給 | 仕訳なし | 退職給付債務・年金債務の減少 | |
借方差異の償却 | 退職給付費用 | 退職給付引当金 | 未認識数理計算上の差異、過去勤務費用(退職給付水準の増減) |
貸方差異の償却 | 退職給付引当金 | 退職給付費用 |
年金資産(明細科目) | 退職給付債務(明細科目) | |||
期首 2000 | 年金支払 400 | 年金支払 400 | 期首 5000 | |
運用収益 150 | 差異 50 | (実際:5500) | 勤務費用 600 | |
掛金拠出 350 | (実際:2050) | 利息費用 200 | ||
差異 100 | ||||
未認識数理計算上の差異 (明細科目) | ||||
差異 100 | ||||
差異 50 | ||||
明細科目の集計 | 退職給付引当金 | |||
年金資産 (実際)2050 | 退職給付債務 (実際)5500 | 掛金拠出 350 | 期首 3000 | |
数理差異 150 | 期末 3300 | 退職給付費用 650 | ||
退職給付引当金 3300 |
退職給付会計基準
- 「退職給付会計基準」は、連結ベースで定められており、ところどころ連結と個別とで異なる取り扱いがなされている。
- 退職給付の意義:退職給付とは、一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以降に支給される給付をいう。
- 退職給付の会計処理の考え方:労働の対価として支払われる賃金の後払いであり、勤務期間を通じた労働の提供に伴って発生するもの。退職給付は、その発生が当期以前の事象に起因する将来の特定の費用的支出であり、当期の負担に属すべき金額は、その支出の事実に基づくことなく、その支出の原因または効果の期間帰属に基づいて費用として認識すべき。将来の退職給付支出を労働が提供された各期間の収益に対応されるため、その発生した各期間に費用として配分すべき。
- 退職給付債務とは、退職による見込まれている退職給付の総額(退職給付見込額)のうち、期末までに発生していると認められる部分を割り引いたもの。
- 退職給付見込額(定額制、最終給与比例制、ポイント制等)の勤務期間への費用配分方法:①期間定額基準(退職給付見込額を全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法)、②給付算定式基準(給付算定式に従って各期に配分)の選択適用。退職給付見込額のうち期末までに発生したと認められる額は、いずれかの方法を選択適用して計算し、一旦採用した方法は、原則として、継続して適用しなければならない。
- 給付算定式基準が採用される根拠:勤続年数の増加に応じた労働サービスの向上を踏まえれば、毎期の費用を定額とする期間定額基準よりも、給付算定式に従って費用が増加するという取り扱いの方が実態をより表すものと考えられる。
- 期間定額基準が採用される根拠:国際的にも合理的で簡便な方法であると考えられており、適用の明確さでより優れていると考えられる(積極的根拠)。我が国の退職給付会計では、退職給付見込額の期間帰属方法を費用配分の方法として捉えており、直接観察できない労働サービスの費用態様に合理的な仮定を置かざるを得ないことを踏まえれば、労働サービスに係る費用配分の方法は一時的には決まらず、勤務期間を基礎とする費用配分の方法についてもこれを否定する根拠は乏しい(消極的論拠)。
- 年金資産の要件:①退職給付以外に使用できない、②事業主及び事業主の債権者から法的に分離されている。③積立超過分を除き、事業主への返還、事業主からの解約・目的外の払出等が禁止されている。④資産を事業主の資産と交換できない。
- 年金資産の額を退職給付債務から控除する理由:年金資産は経済的資源であるが、年金資産は年金基金が保有して運用しており、年金資産を企業が支配してはいない。収益の獲得に貢献できない。
- 年金資産の額を退職給付債務から控除する理由(年金資産を独立して貸借対照表に計上しない理由):年金資産は、退職給付の支払のためにのみ使用されることが制度的に担保されていることから、これを収益獲得のために保有する一般の資産と同様に企業の貸借対照表に計上することは問題があり、かえって、財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれがあると考えられる。
- 数理計算上の差異:年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異をいう。原則として、各期の発生額について、予想される退職時から現在までの平均的な期間(平均残存勤務期間)以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する。
- 数理計算上の差異を遅延認識する理由:数理計算上の差異には、予測と実績の乖離のみならず予測数値の修正も反映されることから各期に生じる差異を直ちに費用として計上することが退職給付に係る債務の状態を忠実に表現するとはいえない面がある。このように、数理計算上の差異の性格を一時の費用とすべきものとして一義的に決定づけることは難しいと考えられる。
- 数理計算上の差異をどの程度まで厳密に把握するかについて、①重要性基準、②回廊アプローチ。
- 割引率等の計算基礎に重要な変動が生じない場合には、これを見直さないことができる(重要性基準を採用)
項目 | 重要性基準 | 回廊アプローチ |
意義 | 基礎率等の計算基礎に重要な変動が生じない場合には、計算基礎を変更しない等、計算基礎の決定にあたって合理的な範囲で重要性による判断を認める方法 | 退職給付債務の数値を毎期末時点において厳密に計算し、その結果生じた計算差異に一定の許容範囲(回廊)を設ける方法 |
取扱 | 計算基礎に重要な変動が生じていない場合には、これを見直さない。 | 数理計算上の差異については一定の範囲内は認識しない。 |
重要性基準が採用された理由:退職給付費用が長期的な見積計算であることから、このような重要性による判断を認めることが適切と考えられるため。
資産除去債務
- 定義:有形固定資産を取得、建設、開発又は通常の使用(有形固定資産を意図した目的のために正常に稼働させること)によって発生した時に負債とし計上。当該有形固定資産の除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるもの。
- 除去が法律上の義務になる場合:退去時の原状回復義務が要求、使用中の有形固定資産に含有されている有害物質(アスベスト、PCBなど)等を法律等の要求による特別の方法で除去するという義務も含まれる。
- 有形固定資産の「除去」とは、有形固定資産を用役提供から除外することをいう(一時的に除外する場合を除く。)。除去の具体的な様態としては、売却、廃棄、リサイクルその他の方法による処分等が含まれるが、転用や用途変更は含まれない。また、当該有形固定資産が遊休状態になる場合は除去に該当しない。
- 資産除去債務:①有形固定資産を除去する義務、②有害物質を除去する義務→将来の除去に要する費用を見積もる→割引現在価値を負債として計上。
- 資産除去債務が発生するのか:通常の場合は、有形固定資産の取得(または、原状回復義務を負う建物の賃貸の開始)と同時に発生を認識する。すなわち、除去義務を負うような有形固定資産を取得したときや、建物を賃借し、入居時に建物内部に改装を行ったときなどに資産除去債務が発生する。
- 除去費用の見積額(割引前の将来CF)の変更:除去費用の見積額に重要な変更が生じた場合には、変更後の処理をどうするかが問題となります。資産除去債務に係る見積の変更は、その変更による調整額を帳簿価額(有形固定資産・資産除去債務)に加減することで、将来の期間(残存年数)にわたって費用配分する。
- 負債計上する理由:資産除去債務は法律上の義務及びそれに準ずるものであり、有形固定資産の除去サービスに係る支払いが不可避的に生じることから、支払い義務を負っているのと同等であるため、負債計上される。
- 資産負債の両建処理の意義:資産負債の両建処理とは、有形固定資産の取得等に付随して不可避的に生じる除去サービスの債務を負債として計上するとともに、対応する除去費用をその取得原価に含める処理をいう。すなわち、有形固定資産の除去時に不可避的に生じる支出額を付随費用と同様に取得原価に加えた上で、費用配分を行うもの。
- 引当金処理の意義:引当金処理とは、有形固定資産の除去サービスの消費を、当該有形固定資産の使用に応じて各期間に費用配分し、それに対応する金額を負債として認識する処理をいう。
- 資産負債の両建処理を採用した理由(負債計上の観点):①引当金処理の場合には、有形固定資産の除去に必要な金額が貸借対照表に計上されていないことから、資産除去債務の負債計上が不十分である。②資産負債の両建処理は、資産除去債務の全額を負債として計上する。
- 資産負債の両建処理を採用した理由(費用計上の観点):有形固定資産に対応する除去費用が、減価償却を通じて、当該有形固定資産の使用に応じて各期に費用配分されるため、資産負債の両建処理は引当金処理を包摂する。
- 除去費用の会計処理:当該負債計上と同額を関連する有形固定資産の帳簿価額に加える。
- 資産計上の論拠:①当該資産への投資について回収すべき額を引き上げることを意味する。②資産除去取引を資産取得取引と一体のものとして捉え、資産除去費用を付随費用と同様に取得原価に加えた上で費用配分を行うことで有用な情報を提供することができる。
- 資産計上の方法:①資産除去債務に対応する除去費用は、法律上の権利ではなく財産的価値もないこと、また、独立して収益獲得に貢献するものではないことから、別の資産として計上する方法は適切ではない。②除去費用は、有形固定資産の稼働にとって不可欠なものであり、有形固定資産の取得に関する付随費用と同様に処理すべき。
- 資産除去債務の算定:資産除去債務はそれが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額(割引価値)で算定する。
- 割引前将来キャッシュ・フローの見積りの変更:重要な見積の変更が生じた場合の当該見積りの変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理する(プロスペクティブ・アプローチ)
- 調整方法:①プロすペクティブ・アプローチ(採用):調整額を将来に向かって処理する方法。残存耐用年数にわたり費用配分。②キャッチアップ・アプローチ:調整額を一時の損益として処理する方法。③レトロスペクティブ・アプローチ:過年度に遡及して修正する方法。
- プロスペクティブ・アプローチの採用理由:会計上の見積の変更については、国際的な会計基準において、将来に向かって修正する方法が採用されていることに加えて、我が国の現行の会計慣行においても耐用年数の変更については、影響額を変更後の残存耐用年数で処理する方法が一般的であるから。
項目 | 借方 | 貸方 | 補足 |
資産除去債務発生時 | 有形固定資産 | 資産除去債務 | 資産負債の両建処理 |
決算時 | 利息費用 | 資産除去債務 | ・資産除去債務の期首残高×割引率 ・販管費 |
減価償却費 | 減価償却累計額 | ・有形固定資産本体と減価償却方法と同一の計算方法 ・資産計上された除去費用の残存価額はゼロ。 ・販管費、利息費用を含める場合もあり | |
見積変更(増加) | 有形固定資産 | 資産除去債務 | ・当初の見積額の部分は、当初の割引率を継続して適用。 ・増加した見積額の部分には、変更時点の割引率を適用 |
見積変更(減少) | 資産除去債務 | 有形固定資産 | ・減少した見積額の部分には当初の割引率を適用。 ・変更による調整額は変更時の現在価値の差額で計算。 |
有形固定資産の除去 | 減価償却累計額 | 有形固定資産 | ・有形固定資産本体 ・貸借差額(残存価額) |
固定資産除却損 | |||
減価償却累計額 | 有形固定資産 | ・資産計上された除去費用 | |
履行時 | 資産除去債務 | 現金預金 | 販管費 貸方の場合は販管費の区分にマイナス表示(△××) |
履行差額 |
資産除去債務に係る貸借対照表の表示
表示科目 | 分類基準 | 除却日まで | 表示区分 |
資産除去債務 | 一年基準 | 1年以内 | 流動負債 |
1年超 | 固定負債 |
資産除去債務に係る損益計算書の表示
内容 | 表示科目 | 表示区分 |
①時の経過による調整額 | 利息費用(減価償却費) | 本体部分の減価償却費と同じ表示区分 |
②資産計上された除去費用の費用配分額 | 減価償却費 | |
③履行時の資産除去債務残高と支払額との差額(異常な原因による場合は特別損益) | 履行差額 | ②と同じ表示区分 |
建設業会計
- 請負工事:建設業の業者が、注文主より請け負って行う工事を請負工事という。請負工事は、工事の完成に対して対価が支払われる契約の工事をいう。請負工事の基となる契約を「請負契約」という。
- 工事契約:受注した工事に関する請負契約を工事契約という。工事契約に係る収益認識であって「工事契約に関する会計基準」は21年3月に廃止。それ以降は「収益認識に関する会計基準」が適用されている。
- 「収益認識に関する会計基準」:①履行義務を充足した時に収益を認識→一時点で履行義務を充足し収益を認識。②履行義務を充足するにつれて収益を認識する→一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する。
- 「工事契約」の特徴:①注文を受けて工事を着手する(受注工事)。②契約上、完成したら確実に工事を引渡しできる。③工事の対価(工事収益の総額)は契約で確定している。④工事(工事の期間)が長期に及ぶことがある。⑤工事代金の受取りは、工期の途中で何回かに分けて行われるのが通常。
- 建設業の主な財務諸表:貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書(完成工事原価明細書)→当期の完成工事原価(売上原価)対応分を記入
- 工事進捗度の測定:アウトプット法とインプット法(原価比例法等)がある。
- 原価比例法:着工から当期末までの工事原価の発生額/工事原価総額の見積額。進捗度は毎期末に見直す。見直しあった期に差額補充法的に修正し、過去に遡及して修正はしない。
- 工事損失引当金:工事契約について、将来に工事損失が見込まれる場合には、工事損失引当金の計上が必要となる場合がある。工事損失の発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、工事損失のうち既に計上された損益の額を控除した残額を、工事損失が見込まれた期の損失として処理し、工事損失引当金を計上する。「収益認識会計基準の適用指針の第90項」に引き継がれている。
- 工事損失引当金を計上すべき状況:①工事損失の発生の可能性が高い。②その金額を合理的に見積ることができる。引当金の残りの2つの要件は充足している(特定の工事契約の履行により発生すると見込まれる損失は「将来の特定の損失」に該当。いずれの原因による場合でも「過去の事象に起因する」ものと考えることができる)
- 工事損失引当金の計上目的:工事契約において損失が見込まれる場合、すなわち投資額を回収できないような事態において、将来に損失を繰り延べないようにすること。(固定資産の減損処理、棚卸資産の簿価切下げ等も同様)
- 工事損失引当金の計上理由:投資額を回収できないような事態が生じた場合には、将来に損失を繰り延べないための会計処理を行うことで、財務諸表利用者に有用な情報を提供することができる。
工事損失引当金 | 借方 | 貸方 |
引当金の設定 | 完成工事原価 (工事損失引当金繰入額) | 工事損失引当金 (流動負債) |
引当金の取崩 | 工事損失引当金 | 完成工事原価 (工事損失引当金取崩額) |
第1期 | 第2期 | 第3期 | 第4期 | 合計 | |
工事原価発生 | 120 | 280 | 320 | 80 | |
工事原価総額 (見積) | 600 | 800 | 800 | ー | |
工事利益総額 | 100 | ‐100 | ‐100 | ||
引当金考慮前 | 第1期 | 第2期 | |||
完成工事高 | 140 | 210 | 280 | 70 | 700 |
完成工事原価 | 120 | 280 | 320 | 80 | 800 |
工事損益 | 20 | △70 | △40 | △10 | -100 |
工事損失引当金 | ー | 50 | 10 | ー | ー |
引当金考慮後 | 第1期 | 第2期 | 第3期 | 第4期 | |
完成工事高 | 140 | 210 | 280 | 70 | |
完成工事原価 | 120 | 280 | 320 | 80 | |
引当金繰入額 | ー | 50 | ー | ー | |
引当金取崩額 | ー | ー | △40 | △10 | |
完成工事原価 | 120 | 330 | 280 | 70 | |
完成工事総利益 | 20 | △120 | 0 | 0 | |
工事損失引当金 | ー | 50 | 10 | ー |
工事収益の認識 | 分類 | 認識方法 | 補足 |
工事進捗度を合理的的に見積ることができる場合 | 原則 | 一定の期間にわたり収益認識 | 旧工事進行基準 |
(容認) 工期がごく短期の場合 | 一時点で収益認識 | 旧工事完成基準 (完成・引渡し) | |
工事進捗度を合理的に見積ることができない場合 | 下記以外 | ||
費用の回収が見込める場合 | 原価回収基準 | 費用=収益 |
建設業の科目 | 一般的な科目 | |
損益計算書関係 | 完成工事高 | 売上高 |
完成工事原価 (工事損失引当金含む) (完成工事原価報告書より移記) | 売上原価 | |
完成工事総利益 | 売上総利益 | |
貸借対照表関係 (すべて正常営業循環基準) | 完成工事未収入金 (貸倒引当金の設定対象) | 売掛金 |
工事未払金 | 買掛金 | |
未成工事受入金 | 前受金 | |
未成工事支出金 | 仕掛金 |
期中処理 | 決算整理 | 決算整理 | |||||
材料費 | 未成工事支出金 | 完成工事原価 | |||||
材料仕入 | 消費額 | 期首残高 | 売上原価相当額 (完成工事原価報告書) | 売上原価相当額 (PL) | |||
材料費 | |||||||
労務費 | 労務費 | ||||||
給与支払 | 消費額 | 経費 | 期末残高 (BS) | ||||
経費 | |||||||
経費支払 | 消費額 |
借方 | 貸方 | |
工事代金の前受け | 現金預金 | 未成工事受入金 |
工事収益の計上 | 未成工事受金 | 完成工事高 |
完成工事未収入金 |
旧工事完成基準 | 科目 | 第1期 | 第2期 | 第3期 |
P/L | 完成工事高 | 0 | 0 | 1000 |
完成工事原価 | 0 | 0 | 600 | |
完成工事総利益 | 0 | 0 | 400 | |
B/S | 未成工事支出金 | 180 | 480 | 0 |
旧工事進行基準 | 科目 | 第1期 | 第2期 | 第3期 |
P/L | 完成工事高 | 300 | 500 | 200 |
完成工事原価 | 180 | 300 | 120 | |
完成工事総利益 | 120 | 200 | 80 | |
B/S | 未成工事支出金 | 0 | 0 | 0 |
- 第1期の工事収益:工事収益総額×第1期末工事進捗度
- 第2期の工事収益:工事収益総額×第2期工事進捗度-第1期工事収益
- 最終期の工事収益:工事収益総額 – 前期までの工事収益の累計額
会計上の変更等
会計上の変更 | 内容 | 正当な理由 | 遡及処理 | 遡及処理の名称 |
会計方針の変更 | ・財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続 ・一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更。 | ・会計基準等の改正 ・上記以外の正当な理由(自発的に行う変更) | する | 遡及適用 |
表示方法の変更 | ・財務諸表の作成にあたって採用した表示の方法(注記による開示も含む) ・財務諸表の科目分類、科目配列及び報告様式が含まれる。 ・一般に公正妥当と認められた表示方法から他の一般に公正妥当と認められた表示方法に変更。 | ・会計基準等の改正に伴う表示の変更。 ・会計事象等を財務諸表により適切に反映するために行う表示方法の変更。 | する | 財務諸表の組替え |
会計上の見積りの変更 | 資産及び負債や収益及び費用等の額に不確実性がある場合において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいてその合理的な金額を算出すること。 | しない | ー | |
過去の誤謬の訂正 | 原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる。 | <内容> ①財務諸表の基礎となるデータの収集または処理上の誤り。 ②事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り。 ③会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤り。 | する | 修正再表示:過去の財務諸表における誤謬の訂正を財務諸表に反映する。 |
- 会計方針を変更する場合:会計方針は、正当な理由により変更を行う場合を除き、毎期継続して適用する。
- 自発的に行う会計方針の変更が認められる正当な理由:①会計方針の変更が、企業の事業内容又は企業内外の経営環境の変化に対して行われるものであること。②会計方針の変更が、会計事象等を財務諸表に、より適切に反映するために行われるものであること。
- 会計方針の変更に該当しない例:①会計事象等の重要性が増したことに伴い、従来採用していた簡便法(×)から原則法(〇)に変更する場合:当然の変更。また、新たな事実の発生に伴い、新たな会計処理方法を採用する場合。そもそも「変更」に該当しない。
- 会計方針の変更に関する原則的な取り扱い:原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及する。遡及適用とは、当初から新しい会計方針を採用していたのと同じ結果となる。
- 遡及適用する場合の処理方法:過去の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、期首の資産、負債及び純資産の額に反映させる。過去の損益への影響は、期首の繰越利益剰余金を増減させる。遡及適用は、結局、前期末の商品だけ遡及の仕訳を行えばよい(以下参照)
- 会計方針の変更は遡及適用を行う理由:①財務証憑の比較可能性:財務諸表本体のすべての項目に関する情報が比較情報として提供されることにより、特定の項目だけではなく、財務諸表全般についての比較可能性が高まるものと考えられる。②情報の有用性:当期の財務諸表との比較可能性を確保するために、過去の財務諸表を変更後の会計方針に基づき比較情報として提供することにより、情報の有用性が高まることが期待される。
遡及適用 | (借方) | (貸方) |
前々気期末 | 繰越商品 4 | 繰越利益剰余金 4 |
前期首振り戻し | 繰越利益剰余金 4 | 繰越商品 4 |
前期末 (累積的影響額) | 繰越商品 10 | 繰越利益剰余金 10 |
- 会計上の見積りの変更に関する原則的な取り扱い:会計上の見積の変更は、当該変更が変更期間のみに影響する場合には、当該変更期間に会計処理を行い、当該変更が将来の期間にも影響する場合には、将来にわたり会計処理を行う。遡及適用は一切行わない。
- 会計上の見積りの変更を遡及処理しない理由:新しい情報によってもたらされるものであるとの認識から、過去に遡って処理せず、その影響は将来に向けて認識する。
- 会計上の見積りの変更が当期のみに影響する場合:貸倒見積高と貸倒れの実績とに差異が生じた場合、前期末において入手可能な情報に基づき、最善の見積りを行ったのであれば、見積りと実績との差異は、実績が確定した時点で処理を完結させる。
- 減価償却方法の変更は会計上の見積りの変更と同じ扱い:減価償却方法の変更は、計画的・規則的な償却方法の中での変更であることから、その変更は会計方針の変更であるが、会計上の見積り(経済的便益の費消パターンに関する見積の変更を伴う)とが密接につながっているため、両社を切り離して考えることが困難。減価償却方法の変更は、会計方針の変更ではあるものの、会計上の見積りの変更を起因として変更が行われると考えられるため減価償却方法の変更の取扱いは、会計上の見積りの変更と同様とされ、遡及適用はしない。
- 修正再表示する場合の処理方法:過去の期間に関する修正再表示による累積的影響額は、期首の資産、負債及び純資産の額に反映させる。過去の損益への影響は、期首の繰越利益剰余金を増減させる。
- 見積りの変更と過去の誤謬の訂正:①過去の見積りは最善→会計上の見積りの変更→遡及しない。②過去の誤謬の訂正→遡及する。
会計上の変更等の注記
会計基準等の改正に伴う会計方針の変更 | 左記以外の正当な理由による会計方針の変更 |
・会計基準等の名称 | ー |
ー | 会計方針の変更を行った正当な理由 |
・会計方針の変更の内容 | |
・表示期間のうち、過去の期間について、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額 | |
・遡及適用の累積的影響額 | |
・その他 | ・その他 |
会計方針の変更に関する記載例
商品の評価方法は、従来、総平均法によっていたが、当事業年度より先入先出法に変更した。この変更は、商品が生鮮食品であり、商品払出の実態をより適切に反映するために行ったものである。当該会計方針の変更は遡及適用され、会計方針の累積的影響額XXX千円は、当該事業年度の期首の繰越利益剰余金の額に反映されている。
会計上の見積りの変更に関する注記:①会計上の見積りの変更の内容、会計上の見積りの変更が、当期に影響を及ぼす場合は、当期への影響額。当期への影響がない場合でも、将来の期間に影響を及ぼす可能性があり、かつ、その影響額が合理的に見積ることができるときには、当該影響額。
会計上の見積りの変更に関する注記(記載例):備品Xの減価償却は、従来、耐用年数を10年として行ってきたが、当該事業年度において、陳腐化が著しいことから、耐用年数を6年に見直し、将来にわたり変更している。この変更により、従来の方法と比べて、当該事業年度の減価償却費がXXX千円増加し、営業利益、経常利益及び税引前純利益がXXX千円減少している。
表示方法の変更に関する注記
- ①財務諸表の組替えの内容、②財務諸表の組替えを行った理由、③組替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額、④その他
- <記載例>前払費用の表示方法:前払費用は、従来、流動資産のその他に含めて表示していたが、当事業年度より独立掲記することとした。この変更は、財務諸表の明瞭表示のために行ったものである。
過去の誤謬に関する注記
- 過去の誤謬の内容
- 表示期間のうち過去の期間について、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額及び1株当たり情報に対する影響額
- 表示されている財務諸表のうち、最も古い期間の期首の純資産の額に反映された、表示期間より前の期間に関する修正再表示の累積的影響額
<記載例> 当社が前事業において販売した商品500千円が、誤って前事業年度の貸借対照表に計上されていた。前事業年度の財務諸表は、この誤謬を訂正するために修正再表示している。修正再表示の結果、修正再表示を行う前と比べて、前年事業年度の貸借対照表は、商品が500千円減少し、前事業年度の損益計算書は、売上原価が500千円増加し、営業利益、経常利益及び税引前当期純利益が同額減少している。
未適用の会計基準等に関する注記:既に公表されているものの、未だ適用されていない新しい会計基準等がある場合には、①新しい会計基準等の名称及び概要、②適用予定日(早期適用する場合には早期適用予定日に関する記述)、③新しい会計基準等の適用による影響に関する記述、を注記する。
税効果会計の目的
- 企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税等の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続きである。
- 法人税等の内容:税効果会計の対象となる税金は、利益に関連する金額を課税標準とする税金。法人税、住民税、事業税。税率は国内で一律ではなく、地域や企業の規模によっても異なる。
- 法人税額:課税所得×法人税率
- 住民税額:法人税額×住民税率
- 事業税額:課税所得×事業税率
- 法定実効税率=法人税率×(1+住民税率)+事業税率/1+事業税率 厳密には「地方法人税率」を加味。
会計と税務の差異 | 分類 | 概要 | 仕訳 |
一時差異:当該一時差異が将来解消するときに、その期の課税所得を減額する効果をもたらす差異。 | ・将来減算一時差異:差異解消時に税金を減額する効果 ・会計上の資産<税務上の資産 ・会計上の負債<税務上の負債 | <損金不算入> 会計上の資産<税務上の資産 ・資産の評価損 ・減価償却限度超過額 ・貸倒引当金限度超過額 ・減損損失 | <発生時> (借)繰延税金資産 (貸)法人税等調整額 <解消時> (借)法人税等調整額 (貸)繰延税金資産 |
<損金不算入> 会計上の負債>税務上の負債 ・賞与引当金繰入額 ・退職給付費用 ・法人税等(事業税、未払法人税等に含まれる) | |||
・将来加算一時差異:差異解消時に税金を増額する効果。 ・会計上の資産>税務上の資産 ・会計上の負債>税務上の負債 | 会計上の資産>税務上の資産 ・圧縮記帳の積立金方式 | <発生時> (借)法人税等調整額 (貸)繰延税金負債 <解消時> (借)繰延税金負債 (貸)法人税等調整額 | |
・その他有価証券の評価差益 ・全部純資産直入法 ・税務上は原価評価 ・洗替処理 | (借)繰延税金資産 (借)その他有価証券評価差額金 (貸)投資有価証券 | ||
・その他有価証券の評価差益 ・部分純資産直入法 ・税務上は原価評価 ・洗替処理 | <評価損> (借)投資有価証券評価損(損金不算入) (借)繰延税金資産 (貸)投資有価証券 (貸)法人税等調整額 | ||
永久差異:当該一時差異が将来解消するときに、その期の課税所得を増額する効果をもたらす差異。 | ・受取配当金の益金不算入額 ・交際費の損金算入限度超額 ・損金不算入の罰科金 | 税効果適用なし |
圧縮記帳
直接減額方式 | 積立金方式 | |
会計上の取扱い | 圧縮損100を費用計上 | 費用計上しない |
固定資産 | 300‐100=200 | 300 |
税引前当期純利益 | 国庫補助金100が利益、圧縮損100が損失、税引前純利益ゼロ | 国庫補助金100が利益、圧縮損ゼロ、税引前当期純利益100 |
税務上の取扱い | いずれの方式でも圧縮損100が損金算入される。 | |
固定資産 | 300-100=200 | |
課税所得 | 国庫補助金100益金算入、圧縮損100損金算入、課税所得ゼロ→課税されない。 | |
一時差異 | 差異は生じない | 将来加算一時差異発生 |
税効果会計 | 不要 | 必要 |
直接減額方式 | (借方) | (貸方) |
国庫補助金受領 | 現金預金 | 国庫補助金収入 |
機械を取得 | 機械 | 現金預金 |
圧縮記帳 | 機械圧縮損 | 機械 |
積立金方式 | ||
国庫補助金受領 | 現金預金 | 国庫補助金収入 |
機械を取得 | 機械 | 現金預金 |
圧縮記帳 | 法人税等調整額 30 繰越利益剰余金 70 | 繰延税金負債 30 機械圧縮積立金 70 |
圧縮記帳(積立金方式)
取得原価 | 償却 | 簿価(x1) | 償却 | 簿価(x2) | 償却 | 簿価(x3) | |
会計上の簿価 | 900 | △300 | 600 | △300 | 300 | △300 | 0 |
税務上の簿価 | 600 | △200 | 400 | △200 | 200 | △200 | 0 |
簿価の差額 | 300 | △100 | 200 | △100 | 100 | △100 | 0 |
繰延税金負債 (30%) | 90 | △30 | 60 | △30 | 30 | △30 | 0 |
圧縮積立金 (70%) | 210 | △70 | 140 | △70 | 70 | △70 | 0 |
税効果に係る項目の表示
- 繰延税金資産と繰延税金負債:相殺して表示(借方:投資その他の資産、貸方:固定負債)
- 総額洗替法的な仕訳のまとめ(その他有価証券を除く):①期首残高を全額消去、②期末残高を全額計上
- 法人税等調整額の表示:貸方残高のときは、金額に△を付して表示
- 税効果会計の必要性:税効果会計を適用しない場合には、課税所得を基礎とした法人税等の額が費用として計上され、法人税等を控除する前の企業会計上の利益と課税所得とに差異があるときは、法人税等を控除する前の当期純利益と期間的に対応せず(PL面)、また、繰延税金資産・負債が計上されることで、将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されない(BS面)。
税効果会計の方法 | 概要 | 差異内容 | 適用すべき税率 | 税効果額の意味 |
繰延法(PL重視) | 差異の生じた期の利益と税金の対応を図ることを目的とする方法(当期の対応) | 期間差異:収益と益金、費用と損金の期間帰属の相違に基づく差異 | 期間差異が発生した年度の課税所得に適用された税率(現行税率)を適用 | 差異発生期間に支払うべき訪印税等の額をどれだけ減少あるいは増加させたのか(確定額) |
資産負債法(BS重視) | 差異が解消する期の税金支払額への影響を示すことを目的とする方法 | 一時差異:貸借対照表及び連結貸借対照表に計上されている資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産・負債の額との差額(評価・換算差額等含む) <種類> ・期間差異 ・評価・換算差額等 | 一時差異が将来解消する年度に適用される税率(予測税率)を適用する | 差異解消期間に支払うべき法人税等の額をどれだけ減少あるいは増加させるのか(見積額) |
繰延法:会計上の収益又は費用の額と税務上の益金又は損金の額との間に差異が生じており、当該差異のうち損益の期間帰属の相違に基づくもの(期間差異)について、当該差異が生じた年度に当該差異による税金の納付額又は軽減額を当該差異が解消する年度まで、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する方法。
資産負債法:会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額との間に差異が生じており、当該差異が解消する時にその期の課税所得を減額又は増額する効果を有する場合に、当該差異(一時差異)が生じた年度にそれに係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上する方法。
資産負債法が採用された理由:資産負債法は、税率の変更に応じて、繰延税金資産又は繰延税金負債の金額を修正するため、繰延税金資産又は繰延税金負債が将来の法人税等の支払額を減額又は増額する効果をより適切に表すといえるから。(繰延税金資産又は繰延税金負債の金額は、回収又は支払が行われると見込まれる期の税率に基づいて計算するものとする)
項目 | 繰延税金資産 | 繰延税金負債 |
計上額の意味 | 将来の会計期間における将来減算一時差異の解消に係る減額税金の見積額 | 将来の会計期間における将来加算一時差異の解消に係る増額税金の見積額 |
効果 | 将来の法人税等の支払額を減額する効果 | 将来の法人税等の支払額を増額する効果 |
性格 | 法人税等の前払額 | 法人税等の未払額 |
繰延税金資産の資産性:繰延税金資産は、将来の法人税等の支払額を減額する効果を有し、一般的には法人税等の前払額に相当するため、資産としての性格を有するものと考えられる。繰延税金資産については、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行わなければならない。
繰延税金資産の回収可能性の判断基準 | 内容 | |
収益力に基づく課税所得の十分性 | 将来減算一時差異の解消見込年度に、課税所得が生じる可能性が高いと見込まれること。 | |
タックス・プランニングの存在 | 将来減算一時差異の解消見込年度に、含み益のある固定資産又は有価証券を売却する等のタックス・プランニングに基づく課税所得が生じる可能性が高いと見込まれること。 | |
将来加算一時差異の十分性 | 将来減算一時差異の解消見込年度に、将来加算一時差異の解消が見込まれること。 |
繰延税金負債の負債性:繰延税金負債は、将来の法人税等の支払額を増額する効果を有し、法人税等の未払額に相当するため、負債としての性格を有するものと考えられる。
外貨建取引
- 外貨建取引とは、売買価額その他取引価額が外国通貨で表示されている取引を言う。①取引価額が外国通貨で表示されている物品の売買又は役務の授受。②決済金額が外国通貨で表示されている資金の借入又は貸付。③券面額が外国通貨による前渡金、仮払金の支払又は前受金、借受金の受入。
- 直物為替相場(Sport Rate):外貨の売買契約と同時に外貨を受渡す場合の為替相場。
- 先物為替相場(Foward Rate):外貨の売買契約の一定期間後に外貨を受渡す場合の為替相場。
- 為替換算:①取引発生時、②決算時、③決済時
- 為替差損益:PL上は、為替差損(営業外費用)あたは為替差益(営業外収益)を純額で表示。
- 貨幣項目:決済が将来行われる項目。
- 非貨幣項目:決済が必要ない項目、決済の終わった項目は換算替が必要なし。例:費用性資産(棚卸資産、有形固定資産、無形固定資産、前渡金、前払費用)、収益性負債(前受金、前受収益)
項目 | (借方) | (貸方) |
前受金受領時 | 現金預金 440 | 前受金 440 |
売上時 | 前受金 440 売掛金 660 | 売上 1,040 |
外貨建資産・負債 | 換算替え | B/S | |
外国通貨 | 換算替する | CR | |
外貨預金 | |||
外貨建金銭債権債務 | 受取手形、売掛金、未収金、貸付金、未収収益(見込計上)、 支払手形、買掛金、未払金、借入金、未払費用(見込計上)、社債 | ||
外貨建有価証券 | 保有目的による | 後述 | |
上記以外 (非貨幣性項目) | ・費用性資産:棚卸資産、有形固定資産、無形固定資産 前渡金・前払費用(繰延計上) ・収益性負債: 前受金・前受収益(繰延計上) | 換算替えしない | HR |
外貨建有価証券の取得価額:外貨による取得原価を取得時の為替相場(HR)で換算して計算。
売買目的有価証券 | (借方) | (貸方) | |
為替相場 | 有価証券 | 有価証券評価損益 | |
CR | |||
①評価損益(PL) | 期末評価価額 | ||
HR | 取得原価 | ②評価損益(PL) | |
外貨取得原価 | 外貨時価 |
その他有価証券 | (借方) | (貸方) | |
為替相場 | 投資有価証券 | 繰延税金負債 その他有価証券評価差額金 | |
CR | |||
①評価損益(純資産直入) | 期末評価価額 | ||
HR | 取得原価 | ②評価損益 (純資産直入) | |
外貨取得原価 | 外貨時価 |
<部分純資産直入法>
(借方)投資有価証券評価損 (貸)投資有価証券
(借方)繰延税金資産 (貸)法人税等調整額
外貨建関係会社株式:子会社株式と関連会社株式は、減損処理を除き時価評価しません。外貨建であっても、同様に評価替なしです。
満期保有目的の債券 (償却原価法適用しない) | (借方) | (貸方) | |
為替相場 | 有価証券 | 有価証券評価損益 | |
CR | |||
①評価損益(PL) | 期末評価価額 | ||
HR | 取得原価 | ||
外貨取得原価 |
満期保有目的の債券(償却原価法適用) | (借方) | (貸方) | ||
為替相場 | 投資有価証券 | 有価証券利息 | 償却額:外貨建償却額×AR | |
CR | 投資有価証券 | 為替差損益 | 期末評価額 -(取得原価+償却額) | |
②±為替差損益 | AR | |||
①±為替差損益 | ±償却原価 | 期末評価価額 | ||
HR | 取得原価 | |||
外貨取得原価 | 外貨償却額 | 外貨償却原価 |
保有目的 | 表示科目 | 期末評価 |
売買目的有価証券 | 有価証券 | 期末外貨時価×CR |
満期保有目的の債券 (1年基準適用) | 投資有価証券又は有価証券 | 外貨償却原価×CR ・償却額:外貨ベース×AR ・最後の差額は「為替差損益」 外貨取得原価×CR |
その他有価証券(株式) | 投資有価証券 | 期末外貨時価×CR |
その他有価証券(債券) (1年基準適用) | 投資有価証券又は有価証券 | 外貨時価×CR |
子会社株式・関連会社株式 | 関係会社株式 | 外貨取得原価×HR |
外貨建有価証券の減損処理
時価または実質価額が著しく下落(または低下)している場合には、評価損(損益計算書の特別損失)の計上が強制されます。著しいかどうかの判定:時価または実質価額が取得原価の50%程度以上下落(低下)しているかどうかの判定は、為替相場を考慮せずに、外貨ベースで行います。
為替予約:将来、外貨と円貨を交換するときの為替相場を現時点で契約すること言う。
- 為替予約の処理:①独立処理(原則):為替予約と外貨建取引を別々に行う。②振当処理(容認):為替予約と外貨建取引を一体として扱う。
- 振当処理:為替予約を外貨建取引と結び付けて、予約相場により固定された円貨額により、外貨建金銭債権債務を換算する方法。為替予約を振り当てた外貨建金銭債権債務については、決算時の換算替が必要ないことになる。
非資金取引(掛仕入、売上) | 資金取引(借入、貸付) | |
取引時(まで)に予約 | 取引全体を予約相場で換算する | 直物相場と予約相場の差額が生じる。 (借)現金 1020 (貸)1000 (貸)前受収益 20 ※直先差額は期間配分必要 |
取引後に予約 | 直物相場と予約相場の差額が生じる。 ・直物差額(取引日から予約日の差額):予約日の為替差損益 ・直先差額(予約日から決済日の差額):予約日から決済日までの期間で按分((長期)前払費用、(長期)前受収益、借入金:1年基準で「長期」「短期」の表示の組替必要) ・予約日には直先差額は為替差損益で繰延、決算仕訳で当期帰属分を為替差損益に計上。 ・為替予約の決済日が、決算日の翌日より1年超の場合は、長期前払費用、長期前受収益を使う。 |
外貨換算に関する注記
(例)外貨資産及び負債の本邦通貨への換算基準:外貨建金銭債権債務は、期末日の直物為替相場により円貨に換算し、換算差額は損益として処理しています。